下ネタが止まらない!?　大人の恋愛バラエティ「あいの里」をアラサー世代に観てほしいワケ【あいの里考察】

2023年05月18日 17時00分

※このコラムはNetflixで配信中の「あいの里」エピソード1〜4までのネタバレを含んでいます。

あなたはもう観ましたか？　話題沸騰の新感覚恋愛リアリティ番組「あいの里」。「観るとクセになる」と話題の本作を、配信日ごとのエピソードに分けて考察していきたいと思います。

■あいの里（さと）こと、あいのり

「あいの里」は恋を求める男女が人里離れた古民家で共同生活を行い、意中の人ができたら家の裏手の鐘を鳴らして告白、成立すればキスをしてカップルで退去、フラれたら一人で退去、というルールです。これを読んで若めの方は「同じ屋根の下で共同生活なんてテラスハウスみたい！」と思うのでしょう。しかし、アラサー以降の方は「あの恋愛リアリティ番組のルールじゃん！」とピンとくるのでは？　そう、このルールはまさに「あいのり」！

舞台がバスから古民家に変わっただけで、スタジオにはベッキー、ナレーションや特徴的な編集の仕方、シェフは「アンチョビ」、俳優は「ハリウッド」など、ちょっとださめでキャッチーなあだ名の付け方もそのまんま。極め付けはこのタイトル。里を音読みすると「あいの里（り）」になるのです。なるほどすぎるダブルミーニング。

■最年長60歳！　飛び出す話題も新感覚すぎる

しかしこの番組、今までの恋愛バラエティと違うのが、出演者全員が「いいお歳の大人」ということ。最年少は35歳から最年長は60歳と、それはもう今までにない絵面。それなりの人生経験を経ているので、バツありなんてザラ、出てくる話題も「腰の調子どう？」「差し歯取れそう」「興奮したら血圧上がった」など、今までの恋リアでは一切出てこないフレーズの数々でものすごいギャップ。あまりの新鮮さに爆笑が止まりません。

この人と恋ができるか、という判断基準も一般的な恋リアでは「キスができるか？」とかだと思うのですが、「この人の介護おむつを変えられるか？」だったりと、私たちより先の人生のステージを走っているからこその価値観が非常に興味深い。

■アルコールなしで交わされる貪欲な性の話題

初対面の質問タイムでも「今までで一番エキサイティングしたセックスは？」と、従来の常識じゃ考えられないほどの直球な質問。恥じらいや遠慮など微塵も感じさせず、「え、ここ深夜1時回った港区の飲み会じゃないですよね？」と困惑するほど、ナチュラルかつ貪欲に性の話題が交わされる。しかも酒なしで。さすが酸いも甘いも経験してきた人生の先輩方は違う……と、真のリアリティを見せつけられます。

「相性が合わないとお互い不幸！」と、心だけじゃなく、開始早々から性の面でもしっかりマッチングを図ろうというその姿は、今まで海外の恋リアでは当たり前のように見られましたが、国内では初なのではないでしょうか？　これは日本の恋リアがやっと海外基準に追いついたということなのかもしれません。（ちょっと違う）

■視聴者側の人間性すら試される、恐ろしい番組

そんな下ネタ満載の彼ら、もうこれ一人で見てるのが勿体無いくらい、誰かとツッコミたくなる場面がわんさか！　例えば、俳優・ハリウッドが、意中の女性・ユキえもんに「浴衣はその昔、女性の胸を触るためのデザインだったんだ。男は前をぱっとやったらすぐ……（以下自粛）」と自らの浴衣の前を開けてパンツを見せる露出狂ムーブをかましだします。

普通だったらここで女性が絶句したり、「キャー！」と叫んだりするところ。しかし彼らは人生経験豊富。ユキえもんも「気持ちわる」という言葉で即ぶん殴り、「おいおいと思いながら見ちゃった。デカかったよね」と、とにかく動じない。大人の深みを感じます。

そしてこの出来事を忘れた頃、エピソード4でハリウッドがパンツ一枚で登場するシーンがあったのですが、あれはユキえもんの言葉の真実を自らの目で確認しろという、制作側のメッセージですか？　つい目が行ってしまった自分をぶん殴りたいです。そんな自分自身の人間性すら試される、恐ろしいバラエティ番組ですよ、これは……（震）

■人生の先輩達の抱えるドラマを通すことでさらに感動深まる

ここまで聞くとかなりゲスな感じに聞こえてしまうかもしれませんが、彼らは皆人生の大先輩。私たちよりもそれは多くの人生経験を積んでいます。ですので、このあいの里に来るまでにもさまざまな背景を抱えているのです。

つらい結婚生活に耐えていたけれど、自分の忍耐が不要な努力だったと気づかされてシングルマザーになった人や、大嫌いだったはずの父の姿から本当の愛を見つけ、自分も真実の愛を探しに来た人など……。

それぞれが持つバックグラウンドを知ることで、彼らの取る行動の1つひとつにより一層思いを馳せてしまい、共感したり、うるっときたり……感動がより深まるのです。人って表向きは明るく元気に見えても、皆いろんなものを抱えて生きているんだよな、と再認識させられ、明日は今日よりもっと人に優しく生きていきたい、と思わせてくれます。

とにかく情、人間味にあふれた個性豊かなキャラクターたちで、ツッコミつつもなんだか応援したくなる面々なのです。

■共通点ポジティブ、ナルシスト、なんだけど真逆の2人

特筆すべき2人の男性キャラとして、シェフのアンチョビと、俳優のハリウッドがあげられます。2人の共通点はナルシスト、なんですけど全くの真逆。

ハリウッドはバツ1の51歳。とにかく自分の思うままに気になる女性にアプローチ。フラれるなんて微塵も考えておらず、前述の通りパンツ見せたり、他の男性が誘った意中の女性を強奪したり、喧嘩をすれば「俺はもう今日ここを去る！」（しかも去らない）と周囲を振り回したり、オラオラ系の典型的なナルシスト。

一方のアンチョビは未婚の46歳、女性と交際した経験は一人だけ。とにかく奥手で、自ら女性にアプローチするでもなければ、特段誰かをすごく気に入っている様子でもありません。なのに少し話しかけてきただけの女性2人を、「2人とも自分のことが好きに違いない。困ったな。断って彼女のトラウマになったら……」と、全ての発言を自分に向けたものだと勘違いしてポジティブ解釈。そしてそれを表に出すことなく、ひっそりと心の中で女性達が自分を取り合っている三角関係を作って悩んでいる……。もちろんその女性達の意中の相手はアンチョビではありません。まじで世界一無駄な苦悩です。

■まさに陽のナルシストと隠のナルシスト

2人とも女性の気持ちを異常にポジティブ解釈するのですが、行動は全くの真逆。まさに陽のナルシストと、陰のナルシスト。

学生の頃は、経験がなさすぎてちょっと話しただけで勘違いして気になっちゃう、みたいなことありますけど、アンチョビはそのマインドのまま46歳まで生きている心が中学生のままなピュアおじさん。行動せず、妄想の中で生きています。この勘違いを表に出した時、面白いことが起こりそうなんですが、殻を破ることはあるのでしょうか。

一方、ハリウッドは「絶対いける！」と勘違いして、早々に告白し撃沈のち退去。さすが陽のナルシストは行動が伴っている。前向きで一本筋の通った男でした。たくさんの見せ場とパンイチ姿をありがとう。