バツイチ&シングルマザーを襲う閉塞感と孤独 「自分に欠陥があるのでは...」漫画作者の想い
モラハラ夫から逃げ出して3歳の娘を育てる主人公の希美は、シングルマザー専用のシェアハウスで、互いに助け合いながら生活している。そんな中、イケメンに成長した同級生が小児科医として現れたことで、“永久就職先”を探しているルームメイトが暴走。さまざまなトラブルが巻き起こっていく…。シングルマザーの抱える問題をリアルに描く話題の本作について、作者の中島まおさんに執筆への想いを聞いた。
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■夫のモラハラを“我慢”してしまう女性たち
――物語の冒頭によると、主人公・希美は、夫のひどいモラハラに耐えられなくてシングルマザーになったんですね。
【中島まおさん】シングルマザー専用のシェアハウスを舞台にした物語を描くにあたって、夫婦仲がうまくいかなかった女性を描きたいと思っていました。希美は、自分が我慢をして周りと同調していくタイプです。きっとモラハラ気質の男性と一緒にいる女性は、良い悪いは別にして、こういう性格になるのかなと思って描きました。
――シェアハウスでも、2人のママ友の間でうまく立ち回ろうと、常に気を遣っているようです。
【中島さん】自分の意見を言ったほうがいい時も、グッと我慢してしまうような感じですよね。こういう方は、実は結構いるんだろうなと思います。作中でも描きましたが、希美は元夫から養育費を全然もらえていなくて、それをはっきり言えないんです。何かを我慢すること自体は悪いことではない気もしますが…、いじらしいタイプの女性ですよね。
――主人公はパート勤めでした。モラハラに言い返せないのは、稼ぎが(夫より)少ないという負い目のようなものもあったのでしょうか。
【中島さん】それもありますね。自分が主に稼いでいない場合、夫に強く言いづらい方が多いのかなと思うんです。妻の収入がなかったり、少なかったりするのは、小さい子どもがいれば当然なんですけどね。働いていたとしても、時短制度を取る多くは女性ですので、男性より収入が上回ることは少ないでしょう。それで余計、自分の意見を言わずに我慢してしまうことが多いのかもしれません。
■「自分に非があったんじゃないか…」シングルマザーが感じる“欠陥”
――シングルマザー専用のシェアルームが舞台というのは新鮮でした。
【中島さん】シングルマザーの中には、社会との接点が希薄だったり、友だちとじっくり時間が取りにくかったりして、閉塞感や孤独を感じる人もいると思うんです。そこで、シェアルームで一緒に暮らせたら最高だよね、という流れです。でも、お互い人間なので、マウントを取ったり相手をやり込めたりしたいという気持ちが芽生えてしまい、いろんな問題が起こるというのが、この作品のポイントです。
――3人のシングルマザーの性格やエピソードがとてもリアルです。設定やストーリーを考えるにあたり、参考にしたものはありますか?
【中島さん】以前アルバイトをしていた時に、職場にシングルマザーの方がいて、「こういう環境だとこうなるのか」と感じたことを思い出したり、ネットやSNSを調べたりしました。あとは、私も離婚した経験があって、その時の気持ちを思い出したりもしました。作中で、希美がみじめな気持ちになってしまうシーンがあるんですが、それは自分が感じたことを描いています。
――なぜ、みじめな気持ちを感じていたんですか?
【中島さん】今は全然そんなことは思わないんですが、当時はバツイチになったことで、「自分に非があったんじゃないか…」とか、「自分の我慢が足りなかったのでは…」などと思っていました。自分にどこか“欠陥”があるというか、男性と一生添い遂げられない人間なんだくらいまで思ったことも。その時の気持ちがすごくリアルに残っていたので、作品にも反映させたんです。
──シングルマザーの方々からの反響も多いようですね。
【中島さん】「私もシングルマザーです」というコメントが結構あって、意外と多いんだなと改めて思いました。あとは、希美の恋を邪魔する花音のことを「嫌い」という方もいれば、「はっきりしていていい」という方もいて、いろんな感想をいただけています。電子書籍の漫画なので、コメントがすぐに届くのがいいですよね。
――まだ連載が始まったばかりですが、今後の展開も楽しみです。
【中島さん】これから3人がいろいろと経験して、それぞれ成長していきます。たとえば20代で子どもを産んでも、母親自身まだまだ子どもの部分もありますよね。産んだからといって、すぐ親になれるわけじゃないし…。小さな子どもを持つ3人は、同じ立場でありながらも価値観は異なります。共同生活をしながらトラブルを乗り越えて大人になっていく…みたいなところも描けたらいいなと思っています。