普通のOLが“スケボー男子”にガチ泣きしたワケ
例えば、部活で自分だけ周りより楽器が下手な気がする、とか。例えば、自分より後に習い事を始めた友達の方が早く上達していく、とか。人生の中で1度も劣等感を抱いたことが無いなんて人はほとんどいないと思う。
過去の苦しい気持ちが蘇る。でもあまりの魅力に目が離せない。そんなとんでもないアニメ、『SK∞ エスケーエイト』をご存じだろうか。
■スケボーでレースってどういうこと? 『Free!』の監督が送る青春アニメ
『SK∞ エスケーエイト』は大ヒット作品『Free!』の内海紘子監督と、『交響詩篇エウレカセブン』『僕のヒーローアカデミア』などで有名なアニメ制作会社ボンズがタッグを組んだオリジナルアニメ。
2021年1月からテレビ朝日系列にて放送中で、スケートボードのレース「S」にハマる高校生“暦(レキ)”と、カナダからの転校生“ランガ”の青春模様が描かれる。
▼あらすじ
暦はスケートボードが大好きな沖縄の高校生。暦が今ハマっているものは、閉鎖された鉱山で行われる極秘レース「S(エス)」での決闘「ビーフ」。ある時、カナダからの転校生ランガと仲良くなった暦はランガをスケボー、そして「S」に誘い……。
「スケートボードでレース? っていうか、そもそもスケボーなんてよく分からないんですけど……」そんな声が聞こえてきそうだけど、私も最初はそう思っていました。
そう、ハマるまでは……。
■最初の認識は「推しアニメの後番組」「スケボークルクル」
今では毎日のように配信サイトで過去の放送を見返す私ですが、『SK∞』にハマったのは第3話目が放送された後でした。
最初は好きなアニメ(『ワールドトリガー』2期)の後番組として、そのままTVで流れているのを流し見していた程度の認識。なんなら「スケボークルクル(※)」と、一部のワールドトリガーファンの間での通称で呼んでいたくらいでした。初回からのファンの皆さん、ごめんなさい。
※アニメ『ワールドトリガー』第1期の後番組が『トライブクルクル』だったことから。
ところが第3話放送終了後、TLで目にした『SK∞』公式のツイートに目が奪われたんです。
🛹TVアニメ「SK∞ エスケーエイト」🛹
#03 PART『望まない勇者』の放送まであと4️⃣時間!
いよいよMIYA本格始動!皆さまお見逃しなく🐈⬛
『スライムには用ないから』#sk_8#エスケーエイト pic.twitter.com/eM9jtSgEo8
— TVアニメ「SK∞ エスケーエイト」 (@sk8_project) January 23, 2021
この男の子。お名前は知念実也(ちねんみや)、スケボーレースバトル「S」での通り名は“MIYA”といいます。
可愛い。可愛いでしょう。
「黒髪つり目の可愛い男の子」が大好きな私はその瞬間MIYAの虜になり、公式サイトを調べ、Twitterでパブサ(※)し、動画配信サイトで過去の放送を視聴したのでした……。これ、深夜2時半以降の出来事です。寝なよ。
※パブリックサーチ。検索エンジンなどで特定他者を調べること。
■「最強タッグ」なんてもんじゃない、アベンジャーズ級のスタッフ陣
そんなわけで『SK∞』のことを調べたら、先述の「内海監督×ボンズ」はもちろんのこと、シリーズ構成は『コードギアス 反逆のルルーシュ』の大河内一楼さん、キャラクターデザインは『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の千葉道徳さんという面々。
声優陣も、主人公のアドバイザー的立ち位置のキャラクターに緑川光さんと松本保典さん、ラスボス側には子安武人さんと小野賢章さんなど超豪華です。
そんなのオタクが好きじゃないわけないじゃないか!! 設定盛り過ぎか⁉
「内海監督が好きなものをつくる」というところから出発したらしいこのアニメ。内海監督は元々スケボーが好きだったそうで、作品内でのスケボーの動きなども専門家が監修しているんだとか。
『アベンジャーズ』級のスタッフが揃っているだけあり、ストーリー・キャラクター・作画・演出・音楽の全てがハイクオリティ。まずはOP映像を見てほしいものです……。(YouTubeにて期間限定公開中)
誰ですか「今期の覇権アニメは『モルカー』。シロモしか勝たん」とか言っていた人は。私です。(もちろん、『モルカー』も面白いよ!)
■男子高校生の爽やか青春物語から一転、“クソデカ感情”で号泣
そしてとにかくストーリーがすごい! 何なら、「すごい」を超えてもはやえぐい‼
第3話あたりまでは、暦とランガの出会い、そしてスケボーを純粋な気持ちで楽しむ2人の様子がメインで描かれます。スポーツに打ち込む男子高校生、可愛いですよね。癒されますよね。MIYAも可愛いよ。
しかし、物語のラスボス“愛抱夢(アダム、と読みます)”とのバトルを経て、徐々に不穏な空気が……。危険な滑り方をする愛抱夢にはもう近づかないようランガに言う暦と、上級者との滑りへ興味が抑えられないランガの間で少しずつ擦れ違いが生まれてきます。
以前、けがでスケボー仲間を失った経験から、ランガに危険なことをしてほしくない暦。もっと上手になりたい気持ちと、暦との友情で揺れるランガ。さらに、才能あふれるランガがスケボーの腕を上げるにつれて、暦の中には劣等感も生まれてきて……。
もう苦しくないですか⁉ 私は幼い頃の習い事や、部活での記憶が当時の感情と一緒に蘇ってきてめちゃくちゃ苦しい‼
「ただスケボーが楽しかったはずなのに……」という暦の気持ちは、視聴者の過去にも刺さるはずです。なんでこう、オタクというものは自ら苦しいコンテンツにハマっていくんでしょうね。暦、頼むから笑ってくれ。
物語は暦とランガの関係を中心に展開されますが、周辺の人物たちの人間関係やストーリーもそれぞれしっかり描かれていて、毎話目が離せません。
■今の時代だからこそより響く、「ひとりにならない」ということ
「スケートって無限なんだ!」が『SK∞』の大きなテーマのようですが、その他に私は物語の随所で語られる「ひとりにならない」「ひとりにしない」というメッセージが気になります。
スケボー友達をけがで失った暦。せっかく新たな仲間と出会えたのに、劣等感を理由にまた自らひとりになってしまいます。そんな暦に、「S」の先輩であるジョーが「ひとりになるなよ」と声をかけるシーンが印象的です。
一方、父に先立たれ、父と楽しんでいたスノボを離れていたランガは沖縄で新たにスケボーと出会いますが、有り余る才能ゆえにまたひとりに。
その他、2人の主人公だけではなく、彼らを取り巻くキャラクターたちにも孤独を抱えた人物が多くいます。
コロナ禍の今、ひとり暮らしで自粛生活を過ごし、家族や友達になかなか会えず「ひとり」を感じる人も多いでしょう。私もその中の1人です。
孤独からか、つい鬱々としてしまったり、自分を見失ってしまったり。時には好きだったものの何が好きだったのかさえ忘れてしまうことだってあるかもしれません。
そんな、「誰かと何かを楽しむ」ことが難しい今だからこそ、「ひとりにならない」こと、そして誰かを「ひとりにしない」ことを意識したいもの。そのためのツールはたくさんある時代ですから。
まず、暦とランガは仲良くスケート滑ってくれ! 話はそこからだ!!
(文:おてる/マイナビウーマン編集部、イラスト:谷口菜津子)