“推し”と巡る「ゴールデンカムイ」聖地!ファンに人気の建物はどれ?スタッフさんに聞いてみた|北海道開拓の村(札幌)
提供:Sitakke
北海道出身の漫画家・野田サトル先生の大人気漫画「ゴールデンカムイ(集英社)」。
舞台は、明治末期・日露戦争終結直後の北海道。
一癖も二癖もある魅力的なキャラクターたちが、莫大なアイヌの埋蔵金を巡り、繰り広げるアッツアツな物語(ストーリー)。
2022年に連載が終了した現在も、全国の多くのファンから愛されている作品です。
そして……2024年1月、満を持して実写映画が公開予定!!(地元・北海道の放送局である私たち「HBC」も制作に協力!)
※「ゴールデンカムイ沼」特集はこちら
これを記念し、今回は「ゴールデンカムイと北海道」というテーマで、あらためて原作の魅力について注目していきます。
今回訪れた“聖地”は……「北海道開拓の村(札幌市厚別区)」
こんにちは、編集部・ナベ子です。お面(※)越しに失礼します。
「ゴールデンカムイ」の“聖地”のひとつとされる、「北海道開拓の村(札幌市厚別区)」にやってきました。
北海道開拓村内にある食堂にて「屯田兵定食」1,170円
※お面は、2023年7~9月に開催されていた「ゴールデンカムイ展(函館)」で無料配布されていた「鶴見中尉」モデルのもの。
北海道開拓の村(以下「開拓の村」)は、明治から昭和初期にかけて建設された、道内各地の建造物を復元再現した、野外博物館。
2023年4月に、40周年を迎えました。
道内には「ゴールデンカムイ」の“聖地”がたくさんありますが、なかでも、北海道開拓の村は、ちょっとトクベツ。
原作者である野田サトル先生が「登場人物達が生きた時代を、最も濃厚に感じられる場所」として挙げている“聖地オブ・ザ聖地”なのですから!(2017年5月26日投稿の公式Twitterより)
というわけで今回は「ゴールデンカムイ」ファンの知人2名と、開拓の村に行ってきました。
その様子をレポートしたいと思います。
■写真左=知人Pちゃん。開拓の村に来るのは初めて。
■写真中央=知人Nちゃん。作品の様々なことに詳しい。開拓の村は過去に数回訪れたことがある。
■写真右=私。連載完結後に作品を読み、現在もどハマり中。開拓の村は何度もリピートしている。「月島軍曹」推し。
それぞれの 「推し」のグッズで、記念撮影をパシャリ 。さあ、入村じゃ~~~!
「村」の入り口となる管理棟、明治41(1908)年~昭和27(1952)年まで使われた札幌駅がモデル。
“入村”した私たちを出迎えてくれたのは……
\ドンッ/
「ぎゃあああ色紙がいっぱいある!」と、開拓の村に初めて訪れたPちゃんは大興奮。
そう、管理棟の入り口には野田カムイ(※一部のファンの中での通称。原作者を神=カムイと崇めてこう呼ぶ)の色紙が。
さらには、元陸軍兵の主人公・杉元佐一と、アイヌの娘・アシリパ(正しくは「リ」は小文字)のアニメ版声優を務めた2人の色紙も飾ってあるのです。
「直筆サインってのはさぁ、何度見てもイイよね……」と、写真を撮りまくるNちゃんと私。
さらに注目すべきは、色紙の近くにある壁!
作品内に登場した建築物の一覧が、マップとして貼ってあるんです!まさに “聖地マップ”!
う~ん、たまりません。
「ふむふむ。杉元が蕎麦を食べていたのはこのお店で、この教会は鶴見中尉がアシリパさんと会話していた建物なのね」と、
無料配布されているマップを見ながら歩きはじめると……
???:「そのマップ、私が作ったんですよ」
今回の“聖地”案内人が登場!
声をかけてくれたのは、北海道歴史文化財団の職員・松井則彰(まつい・のりあき)さん。
開拓の村の運営や、広報を担当している松井さんに、村の見どころについて、いろいろ教えていただきます!
「ゴールデンカムイ」全31巻のほとんどに、「開拓の村」の建物が出てくる!?
「私、この村には初めて来たんですけど……こんなに広い敷地だとは思いませんでした!」と、Pちゃん。
「そうそう、結構広いのよ。ウチ(開拓の村)の敷地は、札幌ドーム10個分くらいの広さでね。52棟の建物があって、そのうちの多くが『ゴールデンカムイ』の漫画にモチーフとして登場するんです」と、松井さん。
松井さんが作ったという“聖地マップ”を見てみると、52棟中、34棟がモチーフとして作品内に登場。
なんと 半分以上が“聖地” ということになる。それゆえに、マップ作りは「気の遠くなるような作業」だったらしい。
「単行本を読みながら、ウチの建物がモチーフになってるところに付箋(ふせん)を付けながら作業してたんだけど……
結果的に、何百枚も付箋がなくなったよ(笑)」
31巻中28巻に、施設内の建物が出てきたことにビックリしたという松井さん。
さらに驚いたのは、作品内では、一つの建物が異なる様々なモチーフとして描かれていたことなんだとか。
旧松橋家住宅
たとえば、こちらの「旧松橋家住宅」。史実では、明治初期に秋田県から札幌に移住し、農業と土地会社経営に従事した「松橋家」という一家が、居住していた住宅を復元していたもの。
内部を見てみると……
旧松橋家住宅の内部
「あれ?ここ作中で、鶴見中尉が杉元の頬に、小樽・新倉屋のお団子の串をぶっ刺したところじゃない!?」と、興奮気味のNちゃん。
ご名答!建物の内部は作中で、鶴見中尉が率いる「(旧陸軍)第七師団」の兵舎のモチーフとして描かれているようだ(2巻#16話、3巻#18話ほか、十話以上に登場)。
かと思いきや、外観は、元・網走監獄の囚人「都丹庵士(とに・あんじ)が屈斜路湖に構えるアジトのモチーフとして描かれていたり(13巻 #123話、#124話)、樺太編(21巻 #202話、#203話)で登場した建物の内部のモチーフとしても描かれていたりもするらしい。
あくまで、松井さん手作りの“聖地マップ”調べによるものだが、たしかにこれだけでも、相当な巻数に登場する。
マップを作るにあたり、付箋を何百枚も使うことになったというのもわかる!
「北海道という土地で、明治時代の建物がここまで残っているのは、そう数は多くない。
だから、一つの建物をいろんな角度から描くことで、作品内の多くのモチーフとしてフル活用したんじゃないかな」と、話す松井さん。
ほかにも、複数のモチーフとして描かれている建物はいっぱいあるんだとか。
訪れた際には、ぜひチェックしてみてほしい。
ファンの“聖地”として
最終巻近くに出てくる “例の教会”のモチーフと思わしき建物内にて。感極まって完全にキマってしまっている私(ナベ子)。
取材中、「ゴールデンカムイ」のグッズを手にした人をチラホラ見かけた。やはり作品の影響力は大きいのだろうか。
「ファンの方々が、いつ頃から訪れてくれるようになったかは、定かではないけども……
印象に残ってるのは、2018年に起きた胆振東部地震の直後かな。地震があったことで、道外からの観光客の数はどっと減ってしまってね。
キャンセルが続いたんだけど、作品のファンの人たちは、変わらず来てくれたよ。ありがたかったね」と、松井さん。
今も、国内・国外から訪れるファンは絶えないという。
こちらは、ファンの間で、特に人気だという「山本理髪店」。
山本理髪店
山本理髪店・外観
作品内では店名もそのままに、第七師団の“狙撃手”・尾形上等兵が髭剃りをしていた理髪店として描かれている。
洋風建築が特徴的なこの建物。大正期につくられ、昭和期まで札幌円山エリアで「地元の床屋さん」として親しまれてきたんだとか。
ちなみに私の父親(円山出身)も、「俺も昔通っていたよ~。当時のまんまだ!」と、この写真を見てとても懐かしんでいた。
山本理髪店・内観。あれ?尾形が“いる”ぞ……?作品内の構図も似ていて興奮!
松井さんによると、開拓の村の特徴は、建物の7~8割が“移築復元”されたものであるということ。
“再現”ではなく、“復元”。つまり、レプリカではなく、明治・大正期につくられた建物をそのまま移築し、組み立て、当時の様子を復元しているということらしい。SUGEEE! だから「リアル」なんだ。
「建物だけでなく、雑貨や医学書なんかも、(建物を寄贈してくれた人が)そのまんま寄贈してくれたからね。
展示されている小物も、当時のものが多いの。そういう部分にも注目して見学すると面白いと思いますよ」と、松井さん。
北海道の“歩み”を伝え継ぐ場所として
さらに村内を周ってみる。
旧近藤医院
こちらは、留萌郡・古平町の開業医・近藤清吉が建てたとされる「旧近藤医院」。
昭和33年(1958)まで使われていた病院。
窓から差し込む光の加減や、静謐(せいひつ)な部屋の雰囲気、病院特有の乾いた匂いに、“当時の病院感”をすごく感じた。
(もちろん私がこの時代を生きていたわけではないのだが……)
明治四十年代の資料。さりげなく展示されていたが、これもきっと歴史的に貴重なものなのだろう。
旧武井商店酒造部
こちらは、道東の茅沼(かやぬま)で、明治19年(1886)頃に建てられたという「旧武井商店酒造部」。
戦時下の統制で酒造中止命令が出される、昭和19年(1944)頃まで酒造りが行われていたお店とのこと。
茶の間には、お椀や徳利(とっくり)などが、木製のちゃぶ台にこじんまりと並んでいる。
この感じ、なんだか懐かしい。幼い頃、祖母の家に訪れたときのような“リアル”な感覚だ……。
「あの登場人物がここにいたのかな、この門戸を何度通ったのだろうかな、
囲炉裏に火をともしてる時の、室内の香りはどうだったのかな……って、想いを馳せてしまって時間が足りない!」
開拓の村の“リアルさ”に惹かれているのは、
何度も「村」を訪れているNちゃんも同じよう。
初めて訪れたというPちゃんは、こんな風に思ったんだそう。
「ゴールデンカムイの“聖地”としての良さはもちろん、
『開拓の村』そのもののスケールの大きさと面白さに圧倒されちゃった。街並みごと“五感”で堪能できるっていうか……」。
縁側で想いを馳せる、PちゃんとNちゃん
年3回は「村」を訪れている私も、2人と同じような感想をもった。
「ゴールデンカムイ」の作品描写と見比べながら、どっぷりと世界観に浸れることができること。もちろんこれは、開拓の村の大きな魅力だ。
そして今回、もうひとつ気づいたことがある。
村内を自分の足で歩いていると、美しくも厳しい北海道の自然の中で暮らした、先人たちの“気配”をとてもリアルに感じることができる。
これも、ついついリピートしたくなる魅力のひとつだと感じた。
なんていうか、展示が嘘っぽくなく、いい意味で生々しさが残っているのだ。
今年4月に40周年を迎えた「北海道開拓の村」のこれから
「『ゴールデンカムイ』をきっかけに、ウチを訪れた人が、少しでも北海道の歴史に興味を持ってくれると嬉しいなと思いますね。村の中には、札幌だけじゃなくて、小樽、帯広、旭川、滝川…ほほかにも、道内各地の様々な建物があります。『じゃあ、実際にあの町に行ってみよう!』と、各地を巡るきっかけになるような“拠点”になればいいなと思います」と、松井さん。
「四季によって、ウチの風景もすごく違うからね。今みたいな時期は、紅葉が美しいし、冬は銀世界一色で、暖房がなかった時代の寒さや景色を体感できる。それぞれのシーズンごとに足を運んでも、楽しめると思います。一度来たことがある人も、ぜひリピートで来てほしいな」
そう話す松井さんの左手には、なにやら分厚い資料が。
実はいま、「ゴールデンカムイ」の“聖地マップ”のさらなる進化バージョンを、鋭意作成中なんだとか。
「これまでのマップよりも、もっと細かい情報をたくさん載せようかなって。俺ひとりで、単行本と“にらめっこ”しながら作ってるから、時間はまだかかりそうだけどね。ま~た付箋が足りなくなるわ。まあ、気長に待っててや」と、笑顔の松井さん。
ああ、リピートしたくなる理由が、また増えてしまったではないか!
~完~
<取材協力>
北海道開拓の村
札幌市厚別区厚別町小野幌50-1
<文・取材>
Sitakke編集部:ナベ子
あとがき+取材中のフォトスナップ
Pちゃんと、一昔前のギャルポーズ。
夏は竹馬、冬はそりなど、昔の遊びを体験することができる。
作品とは関係はないが、私のおすすめは「北海道大学 恵迪寮」の展示。当時の学生が書いた文書や絵がおもしろすぎる。
最推し・月島軍曹のフィギュア(私物)と記念撮影。実はこのあと紛失し、半べそをかくことになる。後日、ワケあって、まさかの道東で見つかる。長旅だったねぇ、軍曹。
以上、「ゴールデンカムイ聖地巡礼レポート~北海道開拓の村編~」でした。
何度も足を運ぶことで、新たな発見に出会うことができる場所だなあ、としみじみ感じました。
行ったことがある人もない人も、これを機にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか!
※取材の内容は2023年10月28日の情報に基づきます。
※この記事は、2023年11月3日にHBC北海道放送のWEBマガジン「Sitakke」で公開された記事を転載したものです。