エッチは最高だけど...男がどうしても許せなかった「女の癖」 レスなひとびと
文:三松真由美 イラスト:犬養ヒロ
【レスなひとびと】vol. 32
奈緒美(31歳)”金銭感覚レス”で結婚したい相手にあいそつかされた
表参道、昼下がり。日差しが心地よい季節。奈緒美は、会計を済ませてブランドショップを出た。
「また10万使っちゃったよ。このワンピが私を買ってーって手招きするんだもん。仕方ないよね。先月仕事がんばったご褒美」
流行りの洋服、6500円以上のコスメ。キレイでいるにはお金がかかる。
彼氏、直道との待ち合わせに向かう。カフェのテラス席で直道がヒラヒラ手を振っている。
「おつかれ! って、また何か買ったの?」
「うん、ドットのワンピース! 水色でかわいいの。 今度着てくるね。金欠だから、ゴハンはあんまり高くない店にしよ」
コスパが良い焼き鳥店に入って、ハッピーアワーで190円になっているハイボールを頼む。直道は手頃な店をむっちゃ知っている。
「奈緒美、今度休みとれるから旅行いこうよ。沖縄どう? 新しいリゾートホテルができたんだよ」
「いきたい! でもいくら位かかるの? あんまり高いとキツイな」
「いつもお金ないない言うけど、何に使ってるんだ? 貯金とかしてないわけ?」
「何って服とか化粧品とか。 飲み会も多いし。女の子はいろいろお金がかかるのよ。自炊したいけど、忙しいんですっ」
そんなに言うならおごってくれたらいいのに、とイライラしながら答えた。
必ずお金のことで口論になるが、セックスの相性はいい。たいていセックスで仲直りできる。
直道の部屋。彼の腰に足を巻き付けて奈緒美は言う。
「直道、大好き」
「俺も」
私たちは喧嘩もするが、愛しあっている。きっと来年くらいに結婚だ。直道はいいパパになりそうだ。
三か月後、奈緒美は悩んでいた。来週は直道の誕生日。
だが、今月の生活費が足りない。 直道にLINEする。
「直道ごめん! 今月金欠だから、来月お祝いしてもいい? そのぶん奮発してお祝いする」
返事が来た。3日後に。
「お祝いは大丈夫。いらない。奈緒美とは金銭感覚が違いすぎる。将来が考えられないから、お互いのために別れたい」
「金銭感覚。結婚したら……」
「結婚してもなおらないよ。うちの親がそうなんだ。母親が靴とバッグをしこたま買うんだ。浪費癖。親父に怒鳴られているのを何度も聞いた。いまは口も聞かない夫婦になっている」
奈緒美は何も言えなかった。
別れの理由によく挙げられる「価値観の違い」。
なかでも、お互いの譲歩が難しいのがお金の価値観では。付き合っているだけならまだしも、結婚や出産を考えたときに、パートナーの浪費癖がひどいと不安になってしまう人がほとんどです。「好きだから」と、結婚しても、夫婦生活が始まってから意思疎通がスムーズに回らず、深刻に悩む人を見かけます。
400円のカフェラテを高いと思うか、安いと思うか。
おうちで珈琲の粉とミルク混ぜて飲めばいいじゃない。400円を毎日使うと月12000円。光熱費ぶんだよね。という思考回路のひとと「ラテは一日のホッとひと息タイム♡」のひとが結婚すると口論になります。
結婚の概念に縛られず、フリー派同士同じ価値観で、好きなだけお金を使って付き合っていくのもひとつの形でしょう。
ただ大事なのはシニア期を含めた将来、自分がどうなっていたいか。どんな人と一生を過ごしていたいか長期予想をすること。
貯金がなくて明日の生活しか見えないキリギリス生活、病気しても安心な蟻さん生活。ケチケチ暮らすより今やりたいことを満喫派は前者を選ぶのも価値観のひとつです。
将来プランと金銭感覚にギャップがある人は、一度お金の使い方を見直してみること。恋人をつくるまえにまずオノレの金銭感覚チェック!
「セックスもお金で買える時代。お金は万能の神。いや、待て。ばあちゃんになってもずっと守ってくれるやさしい彼氏はお金では買えない。それに気づいたら金銭感覚を研ぎ直せ」
三松 真由美
恋人・夫婦仲相談所所長・コラムニスト。バブル期直後にhanakoママと呼ばれる主婦の大規模ネットワークを構築。その後主婦マーケティング会社を経営。主婦モニター4万名を抱え、マーケティング・商品開発・主婦向けサイト運営に携わる。現在は夫婦仲、恋仲に悩む未婚既婚女性会員1万3千名を集め、「ニッポンの夫婦仲・結婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。「セックスレス」「理想の結婚」「ED」のテーマを幅広く考察し、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。講演・テレビ出演多数。日本性科学会会員。ED診療ガイドライン作成委員。20代若者サークルも運営し、若い世代の恋とセックス観にも造詣が深い。