良い未来に転がる!...実はピンとくるだけじゃない「直感力の磨き方」 #31

2020年04月02日 20時20分

ライフスタイル anan

右へ進んだらいいのか、左なのか。自粛すべきか、前に踏み出すべきか。元サヤなのか、破局か。チーズケーキか、リンゴか。人生とは選択にあふれています。でも、これまで通りの感覚では判断しにくく、ますます先も見えないという今。いまこそ野生の勘の直感力を磨くチャンスです。「もうダメだ」というときほど直感の女神は微笑んでくれるもの。ピンチは直感力を味方にする絶好のタイミングです。では直感とは何か? どう役立つのか? そしてどうやって磨くことができるのか。成功者たちの実話や心理学研究をもとにズバリ検証していきます。

文・土居彩


【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 31



直感で一歩先を見抜く成功者たち。


「直感はとてもパワフルなものだよ。思うに、知性よりもずっと。私の仕事に大きなインパクトを与えてくれた」と語ったのは、アップル創業者のスティーブ・ジョブズです(1)。


実はプログラミングもろくにできなかったジョブズでしたが、石油会社大手のエリクソン・モービルを抜いてアップルの時価総額を一位にして世界をアッと言わせました。そんな彼は、直感の力で一歩先の未来を見抜く天才だともてはやされました。



今では誰もが知る大企業のアップルですが、巨大コンピューターが一部の機械マニアだけに愛されていたころ、「ノートみたいに薄くて軽くて、家電みたいに洗練されたデザインで。家計簿をつけたり絵を描いたり、誰でも使えるコンピューターを販売して世界を変える」とひらめいたジョブズが、天才エンジニアの親友を口説き落として、物語は父親のガレージから始まりました(2)。


ジョブズ自身、自分で作った会社を追放されるなど、さまざまな局面を迎えるのがビジネス世界です。それを生き抜いた彼の直感スタイルは、大学を中退してインドを放浪したことがきっかけ。インドの田舎で暮らす人たちが理性的な考えよりも直感に従う姿に衝撃を受けて、大きな決断の際にも直感の力を信頼するようになりました(1)。



また世界的成功者として有名な、お騒がせパリスのおじいちゃん、ヒルトンホテルチェーンの創業者のコンラッド・ヒルトンも直感力で成功した人物と知られています。


その逸話のひとつから、競売中のシカゴのホテルを16万5,000ドルで入札したコンラッド。彼の直感が「金額が低すぎる」と言って、ベッドの中で胸騒ぎがしました。そこで思い切って直感に従って、翌朝新たに18万ドルとして入札します。その結果コンラッドは入札に勝つことができ、世界でもっとも大きなホテルのひとつを所有することになりました。蓋を開けてみれば、その入札額はなんと次点の入札者よりたった200ドル高いだけのギリギリでした。この取引で、彼は最終的に200万ドル以上の純利益をあげたそうです(3)。


直感とは、あれこれ考えや分析を挟まずに答えを出す直接のカンのことです。意識と無意識のギャップを埋める架け橋で、英語ではガット・フィーリング(gut feeling)と言われますが、日本語で言う肚の感覚、つまり理由なく腹の底からわき起こる「ソレ!」みたいな感覚のことです。



直感力は誰にでも備わるもので、なにもジョブズやヒルトンに特別与えられたものではありません。とはいえ直感だけで決めるのは不安だし、誤ちを犯すリスクもあります。でも過去のデータと照らし合わせてもうまくいく保証が見えづらい。そんな混沌とした今は膿出し、そして生み出しのタイミングだと思います。不要なものは削ぎ落とされて、本当に必要なものが見えてくるとき。そこで今こそ直感の持つ力も信頼してみませんか。社会的な引きこもりが推奨されるときだからこそ、一旦無作為に流れてくる情報を削ぎ落として野生の勘を磨きませんか。成功者たちの行動を分析すると、正しい直感に従うためには、3つのステップがありました。


正しい直感力とつながる3つのステップ。



直感力を磨く方法その1


まずはやれるだけやってみる

ホテル王のコンラッド・ヒルトンは、「直感というのは、祈りの答えのようなもの。できる限り考え、確かめ、計画もやって、もう祈るしか他はない、となったときに与えられるものさ」と言っています。また、ワクチンの開発など細菌学の基礎を築いたパスツールも「幸運は用意された心のみに宿る」という言葉を残しています。成功者たちの行動から、直感の女神は「もう四方八方やり尽くした」「これ以上は無理だ」とやるだけやって、コントロールを手放したときに微笑んでくれるようです。


その1の具体的なやり方

例えば英語が話したかったら毎日ドラマのセリフを1つ覚えてみるなど、今の自分ができる小さなゴールを着実にこなしましょう。目標が大きいほど、ゴールに向かうプロセスが思い通りに運ばない場合がありますが、そのときどきで自分が最善だと考える行動をとりましょう。また自分とは違って、もうそのゴールを達成している人の話を聞いてみることも、正しい直感とつながるために有効です。


直感力を磨く方法その2


いったん思考を止める



ステップ1でとった自分らしい思考に基づいた行動を、ここではいったん一休みさせます。ジョブズの永遠のライバルとされるビル・ゲイツがのちに明かしたところによると、ジョブズはこみいった大事な話をするときには必ず歩きながら話したそうです(2)。


その2の具体的なやり方

ちなみに脳には情報を処理するための容量があります。歩くことで全身を使いながら肉体感覚を感じると、思考のためのキャパシティが減って思い込みによるハイジャックが避けられます。またジョブズは禅仏教に傾倒し、瞑想を日課としていました。瞑想には心の中のダメ出しを鎮める効果もあり、坐禅によって知識や実験で割り出されるデータよりも、肚の感覚とつながるための実体験を重んじるトレーニングを積んでいたのではと思います。


瞑想がオススメですが、苦手な場合は、散歩、良い花の香りをかぐ、ランニング、ゆったりとお風呂につかるなど、思考よりも感覚に意識を向けられることをするのも効果的です。


直感力を磨く方法その3


「◯◯なはず」を疑ってみる

Think Different(違った考えをしよう)とは、アップルの有名な広告スローガン。頭にいっぱいの考えをウォーキングや瞑想で引き算したら、次に行いたいのは「これが正しい」「それは当たり前」という個人的な判断を一度疑ってみることです。


ジョブズは39歳の頃、アメリカの公共放送PBSのインタビューで「あなたの生活のすべては、あなたより頭の悪い人が作ったものなんだ」と断言し、(だから考え方をちょっと変えてみることで)「周りの状況は(自分で)変えられるし、自分が周りに影響を与えることも可能になる。自分のものを自分で作ることも、他の人にそれを使ってもらうこともできる。それを一度学んだら、もう同じことをしなくなりますよ」と語っています(4)。


ジョブズが警鐘を鳴らす、自分以外の複数の人の意見に影響を受けて、それに合わせてしまう心理を「同調」と言います。その判断は、直感の腹の底からやってきたものなのか、みんなが言うからなのか。これを実験したのが心理学者のソロモン・アッシュです。さて以下の線で、左と同じ長さなのはA、B、Cどれだと思いますか?



明らかにCですよね。でも実験で他の全員(サクラ)が一貫して「A」と間違った答えを言うと、治験者たちは「Cと言っていいのか!?」と自信を無くし、「A」と答えてしまう人が約4割にも達したそうです。人間は無意識のうちに大多数の考えに染まる生き物です。それは一種のサバイバルスキルで、空気を読むことだって社会生活では大切だからです。でもさまざまな情報があふれる今、自分的にピンとこないものは鵜呑みにしない。そういうトレーニングも正しい直感力を磨き、これからの時代を生き抜くために大切です。



その3の具体的なやり方

日記をつけてみましょう。起こった出来事に対して、自分がどう考えるのかというパターンが見えてくるからです。話題がホットなときは、「こうなはず」と譲れませんが、数日、1か月、1年ほど経って日記を見返してみると「別にそんなふうにしなくてもよかったな」と違った視点で見返すこともできます。日記をつけるときは、自分を批評したり、あえて第三者になろうと文章を検閲したりせず、コントロールを失って自由に思いを綴ることが大切です。この手法は心理療法でも用いられ、ジャーナリングと言われています。「自由に書いて思いを発散し、後から見返す」を繰り返すうちに、違ったものの見方に自然とオープンになっていきます。


不確かさのなかでもやるだけやって、いったん一呼吸つき、ちょっと違ったオプションにもオープンになってみる。過去に直感に従ったために間違えた選択をしたと思っていても(私は直感で会社を辞めてアメリカに行ったとき、何度も後悔した張本人です)、時間の経過とともにそれが最高の経験だったとわかることがよくあります。だから直感を信頼することを止めないで。


そして直感力を味方につけつつ、成功者たちが成功したのはまた、成功するまでやり続けたから。彼らは七転び八起きどころの騒ぎではありません。「ダメだ」と諦めてしまうまでそれは失敗にはならず、祝福すべき成功へのプロセスのひとつです。周りからは「終わってる」と思われ、自分自身も自分のことを信じられないなら、まずは頭は低く今あることに感謝しながら、肚の底の炎は着火して、3つのステップを踏む時間としましょう。そして直感がチャンスの到来を察知したら、迷わずヒュンと飛び乗って!



土居彩


編集者。東京の薪割り暮らしを綴るブログ『東京マキワリ日記、ときどき山伏つき。』。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にてダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)、芸術家で社会活動家の小田まゆみ氏の『Sarasvati’s Gift』(シャンバラ社)を翻訳中。


1. https://www.nytimes.com/2011/10/30/opinion/sunday/steve-jobss-genius.html


2. ウォルター・アイザックソン著、井口耕二訳『スティーブ・ジョブズ』(講談社)

3. J. Randy Taraborrelli著 『The Hiltons: The True Story of an American Dynasty』(Grand Central Publishing)

4. Ash, S.E.(1955). Opinions and Social Pressure. Scientific American. Vol.193. 5.P.31-35. 、無藤隆, 森敏昭, 遠藤由美,&玉瀬耕治著『心理学 新版』(有斐閣)

5. https://www.youtube.com/watch?v=s5KmCGmkI1k




©David_Ahn/Gettyimages

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