中村倫也「腐ってクズ人間になりかけたんですけど...」 俳優としての転機

2022年05月15日 19時10分

エンタメ anan

辻村深月さんによる原作小説『ハケンアニメ!』が、anan連載から10年を経て、ついに実写映画化。ここでは、デビュー作『光のヨスガ』が驚異的なヒットとなった伝説のアニメ監督・王子千晴を演じる、中村倫也さんにお話を伺いました。

主人公・斎藤瞳の人生を大きく変えたアニメーション作品『光のヨスガ』の生みの親であるアニメ監督・王子千晴。この作品で鮮烈なデビューを果たし天才と謳われるも、作品への強いこだわりと突拍子もない言動で周りを振り回す。吉野耕平監督が、このキャラクターにぴったりと白羽の矢を立てたのが中村倫也さん。


「僕はあんなに面倒くさくないですけどね」。そう言って、少し含みを持たせたような笑顔を向けた。


「王子は、もともとの性格として人を振り回す天然な一面がありつつも、どこかで世間が自分に期待していることへのアンテナも持っている気がするんですよね。どこまで彼が需要を理解して天才然として振る舞っているのか、そのバランスは自分の中で決めずに演じていました。ただ、1作目を経ている王子と、まだ1作目を制作中の瞳とではメディアへの対応の仕方やいろんな面で差はあるだろうから、ふたりの場面では、そこの対比は意識して演じてましたね」


本作自体は、アニメ業界で奮闘する人々が描かれた映画。しかし、明確な正解のないモノづくりの世界において、個々がこだわりとプライドを持ち仕事に臨む姿を、自身の環境と重ねて見たと話す。


「ここに出ている人たちの持っている感覚とか感情っていうのは、僕も通過してきたことだったり、今もリアルタイムで感じたりしているもの。だから、すごく近い自分ごとのように感じて見ていました。クリエイティブの世界にいる人なら、誰しも共感する部分が多い作品だと思います。でも、こういう業界だけじゃなく、たとえば仕事でも部活でも受験でも、何か形のない目指すものがあって、それを達成するために頑張っている人であれば、この作品に励まされる部分がある気がします。僕自身が見ていてウルッときたのは、さまざまな場面で、誰かが自分のこだわりを発動したとき、それを実現させるためにサポートしてくれたり、一緒に組んで走ってくれたりする人がいるところ。チームっていいなって思ったんですよね。その、人の繋がりみたいなものも、見どころだと思います」


そう伺ったら聞いてみたいのは、中村さんの俳優としての矜持。


「僕らは監督からOKを出される側なんで、出されなかったらしんどいですけれど、自分としてはやるだけやるっていうだけですよ」


とはいえ、舞台になれば、演出家という存在がいるとはいえ、あるところでその手を離れて俳優たちに委ねられるもの。


「たしかに、舞台は演出家がいろいろ決めてくれたり整えてくれたりはしますけど、いざ本番が始まれば俳優次第。幕が開いてもなお、それぞれが勝手に芝居を上へ上へと伸ばそうとして、千秋楽が終わってもまだ反省しているくらいの探究心とか向上心みたいなものがある人たちが揃うと、いい作品が作れますよね。自分もわりと、放っておいてもそういうことをしているタイプではあります。モノづくりにおいての正解って、やる人や受け取り手の数だけあると思うんですよ。そういうものだし、そこがいいとも思うし。ただ、確実に不正解っていうのはあって、その不正解を踏まなければOK。そう考えると、OKラインは低い世界なのかもしれないですよね」


それは演じた王子も同じ。


「若く才能があるクリエイターが出てきて、自分の手がけた作品の裏で彼女が監督するサバクが放送されるわけです。視聴率のこともあるし、王子としては瞳は意識せざるを得ない存在ではあったと思います。ただ、サバクをシンプルに褒めていたりもして、すごくスポーツマンシップがあるっていうかフェアな人でもある。つまるところ、王子自身もずっと自分と向き合っているんです。クリエイティブって、誰かと比べてもしょうがない世界だからこそ、どれだけ上を目指してチャレンジしていくかは自分次第ですよね」


同じ作品でも見る人によって、受け取り方が違うのがエンターテインメントの難しく厳しいところ。


「でも、見た人それぞれがいろんなことを想像できた方が楽しい作品も多いじゃないですか。そういう場合は、あえて自分も何も決めずにやるってことありますしね」


そんな中村さんに質問。どうしてこの業界に入ったんですか?


「高1のときに知り合いから誘われて、養成所に入ったのが入り口なんです。当時、やっていたサッカーをやめて暇だったのと、映画が好きだったのもあって、これもご縁かなと思って。あと単純に、ちやほやされるかなと(笑)。ただ、そう思うようにはうまくいかないですよね。どんな仕事もですけれど、最初からやりたいことがやれるわけじゃないし、望むものが手に入るわけじゃないし。そういうのを経て、ちゃんと売れなきゃって思ったのは25歳くらいですかね。腐ってクズ人間になりかけたんですけど、この状況を変えるにはやるしかないなって気持ちを切り替えて今、って感じです」


そして“人生を変えた作品”と出合う。それが’14年の初主演舞台『ヒストリーボーイズ』だ。


「これでうんともすんともいかなかったら役者を辞めようって思ってたんですよね。そしたら観てくれた人たちがよかったって言ってくれた。自分自身も、小川絵梨子という演出家や、あのチームのみんなと舞台を作っていく中で、これまで知らなかった扉に手を触れられたような気がして。もうちょっと続けようかなって思って、今に至っている。そういう意味で、この舞台は自分にとってはとても意味のある作品でしたね」



映画『ハケンアニメ!』 新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、天才監督・王子千晴を中村倫也、王子に振り回されるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が演じる。この2組、覇権を取るのはどっち!? 監督/吉野耕平 脚本/政池洋佑 出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子ほか 5月20日より全国公開。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会


なかむら・ともや 1986年12月24日生まれ、東京都出身。2014年の舞台『ヒストリーボーイズ』で読売演劇大賞優秀男優賞受賞。10月には、主演ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』が控えている。


シャツ¥66,000(ラキネス/アルファ PR TEL:03・5413・3546) 中に着たシャツ¥34,100(アンデコレイテッド/アンデコレイテッド TEL:03・3794・4037) パンツ¥28,600(デザインワークス/デザインワークス 銀座 TEL:03・3573・6210) シューズ¥39,600(フット・ザ・コーチャー/ギャラリー・オブ・オーセンティック TEL:03・5808・7515) ソックスはスタイリスト私物


※『anan』2022年5月18日号より。写真・MELON(TRON) スタイリスト・小林 新(UM) ヘア&メイク・Emiy 文・望月リサ


(by anan編集部)

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