叶恭子「身も心もずたずたになってしまうくらいの愛を経験してみたい」
深く甘い、だけではない“焦がれる”。
わたくしは焦がれるという経験をしたことがありません。
調べたところによりますと、“一途に激しく恋い慕う、心を焼くように激しく恋い慕う…”とあり、わたくしの感情からはそのような経験が生まれたことはありません。おそらく世の中でいうところの“焦がれる”という感情の機能がわたくしには、組み込まれていないと思っております。
わたくし自身は“焦がれられる”ということを、長年日常的に、ごく身近なこととして経験しておりますので、もちろんその方その方の熱量は全て同じではないにしろ、お相手の焦がれる状況は、わかっていると思うのですが。
例えば、映画やドラマなどでも焦がれるシーンはよくありますが、やはりそこにもそれぞれ熱量があり、それぞれ違うと思います。ちなみに、わたくしは、人生観で情熱ということをとても重要だと考えておりまして、わたくし自身とても情熱的でそれは凄い熱量なので、時々わたくし自身もコワイくらいなのですが、その熱量は決してラバーたちに対してのものではなく、わたくし自身がしたいことや何かに取り組んだり、といったことに対してのものです。
わたくしをとりまく環境は愛に満ちあふれており、とても幸せです。しかし、わたくしは、なぜ、どなたかを深く愛したことがないのでしょう。わたくしは、狂おしいくらい心を奪われて身も心もずたずたになってしまうくらいの愛を経験してみたい。それが夢でもあるのです。たぶん叶わないことかもしれませんが。
SpotifyのPodcast「叶姉妹のファビュラスワールド」でのご質問では、『趣味はなんですか?』「わたくし自身です」『特技はなんですか?』「わたくし自身です」と、お答えしておりますように、わたくし自身を作品として丁寧に慈しみ大切にしております。わたくし自身をないがしろにしてまでエネルギーと情熱を注ぎたい、もしくは、わたくし自身も知らない間に情熱を注いでしまっている、ということがありえなかったということなのでしょう。
わたくしの経験いたしました数多くの焦がれられることは、世界中の超一流モデルのグッドルッキング・ガイたちや誰もが名を知る著名人の方々がわたくしに深く焦がれている時に自分自身が食事ができなくなったり、心身ともに不健康になって自分たちのお仕事に支障をきたすことになってしまったり、つい先ほど会って帰ったらすぐに電話を何度もかけてくるので、もう会うのを止めましょう、とわたくしが告げて電話を切ると、泣きじゃくり過呼吸になってしまい、わたくしがハラハラした時もありました。なぜ、そんなにまで…そんなことになってしまうのか、わたくしの望むライトな関係性は、相手の望む“焦がれる”ほどの情熱とはかけ離れたもののようです。
冷静にわたくし自身も分析しておりますが、yearn, be deeply in loveと英語で表現いたしますと、なぜか“焦がれる”とはなんとなく違ったニュアンスに感じますが、“焦がれる”には英語の意味する深く甘い愛だけでなく、知らないうちに“執着”や抑えがたい愛憎のように理性の抑制がきかなくなってしまうこともあるようです。わたくしもできるかぎり気をつけながら、相手の“焦がれる”を楽しみながらのお付き合いを心がけております。
かのう・きょうこ 唯一無二の存在感とセンスで、多くの女性たちの支持を集める。Podcast「叶姉妹のファビュラスワールド」も大きな話題に。昨年11月には自身がプロデュースをした「D.ifstory ハンドクリーム」(40g¥2,200/サカイトレーディング TEL:0800・2002・888)を発売。叶姉妹デジタル写真集8作品もポニーキャニオンより配信中。
※『anan』2022年3月9日号より。写真・SASU TEI(W) 文・叶 恭子
(by anan編集部)