『鳩の撃退法』監督が明かす、藤原竜也と西野七瀬の距離を近づけた方法

2021年08月31日 19時30分

エンタメ anan

この夏も話題作が続々と公開を迎えるなか、残暑の厳しさを忘れさせてくれるような1本と出会いたいと考えている人も多いのでは? そこで今回ご紹介するのは、“裏サイト”が立ち上がるほどの盛り上がりを見せている注目作です。

『鳩の撃退法』


【映画、ときどき私】 vol. 408


とあるバーで編集者の鳥飼なほみに書き途中の新作を読ませていたのは、かつて直木賞を受賞したこともある天才作家・津田伸一。原稿に書かれていたのは、うるう年だった1年前の2月29日の出来事だった。


神隠しにあったとされる一家失踪事件、津田の元に舞い込んだ大量のニセ札、津田の命を狙う裏社会のドン。多くの人の運命を狂わせた雪の夜に一体何が起きたのか。津田の話が嘘か本当かを調べるために、鳥飼は検証を始めるが、待ち受けていたのは衝撃の真実だった……。


原作は2014年に出版され、多くの読者を虜にした佐藤正午の同名小説。かねてより「映像化不可能」とされてきた本作ですが、今回は不可能を可能にしたこちらの方にお話をうかがってきました。

タカハタ秀太監督


映画のみならず、テレビドラマやミュージックビデオなど、幅広いジャンルで才能を発揮しているタカハタ監督。さまざまな憶測を呼んでいる物語の謎から主演を務めた藤原竜也さんの魅力まで、本作の楽しみ方を教えていただきました。


―まずは、この作品との出会いから教えてください。


監督 旧知のプロデューサーさんから原作を勧められて、読み始めたのがきっかけ。ずっと読んでいたくなるほどのおもしろさだったので、すぐに映画化したいと思いました。ただ、原作は非常に長くて複雑ですし、いままで「実写化不可能」と言われてきた作品ですからね。脚本が完成するまでには、いろいろとありました。


―特に苦労されたのは、どのあたりでしょうか?


監督 一番は、佐藤先生の“筆の妙”とも言える原作のおもしろみを生かしつつ、エンターテインメント性のある作品にしなければいけなかったところ。勝手に何かを足してしまったり、わかりやすくしすぎてしまったりしたら原作ファンに怒られますし、かといって映画としても成立させないといけない。そのさじ加減は、難しかったです。


そこで、まずは原作通りに文字を起こして脚本を作るところから始め、脚本家の藤井清美さんと一緒に50稿以上にも上るほど何度も書き直して、ようやくいまの形に。いかに難解な構造を残しながらどうやって観客を最後まで気持ちよく騙し通せるか、ということを念頭に置いて作業していきました。そうやって試行錯誤の末にたどり着いたのが、現在と過去、小説と現実の境をあえて曖昧にすること。結果的に、観る方によって正解や結論が違う作品ができあがったと思います。

観た方が自由に謎解きを楽しんでほしい


―なるほど。実際、観客の間ではさまざまな伏線が話題になっているようですね。


監督 映画の宣伝文句に「謎解き」とか「ウソを見破れるか」という言葉があることもあって、かなりみなさんいろいろと探ってくださっているようです。たとえば、僕のところにも「あの車のナンバーは伏線ですよね?」と聞いてきた方がいたり(笑)。でも、実は意外と意味はなかったりするんですよね……。


―そうなんですか!? たとえばあるカフェのシーンでも「背後に鳩が2羽飛んでいるのは、物語を暗示しているのでは?」と話題になっているようですが、それに関してはいかがですか?


監督 実は、あれもたまたま撮影中に鳩が飛んでいただけなんですよ! 僕も鳩が飛んでるなとは思っていましたが、まさかそういう見方があるとは考えてもいませんでした。


でも、そんなふうに観た方が謎解きとして自由に楽しんでいただけるほうがいいですし、目を凝らして観ていただけることはありがたいです。なので、もしかしたら「本当は伏線だらけですよ」と言っておいたほうがいいかもしれないですね(笑)。


―では、好きに解釈していただくということでいいですか?


監督 そうですね。ちなみに、個人的にオススメしたいポイントを挙げるとすれば音楽。特に、英国少年合唱団「リベラ」の曲と井上陽水さんの「氷の世界」をクライマックスで使えたことは、僕のなかでは大きな意味があるので、この2曲が流れるシーンはぜひ注目していただきたいです。


―目だけでなく、耳もフル稼働ですね。また、『鳩の撃退法』という非常にインパクトのあるタイトルに関して、監督はどのように感じましたか?


監督 最初は「どんな作品かわかりにくいから、タイトルを変えないとダメじゃないか」という話も出ていました。でも、このタイトルのほうがいい意味でわけがわからなくておもしろいとなり、原作のままで行くことに。いま考えると、正解だったなと思います。佐藤先生も「理由はわからないけど、なぜか思いついた」とおっしゃっているそうですが、興味をそそるいいタイトルですよね。

初めて会った瞬間から、好きになってしまった


―確かに、想像力を掻き立てられます。今回、津田を演じた藤原さんは「この作品で新しい表現に挑戦できた」とおっしゃっているようですが、監督から見た藤原さんはどんな方ですか?


監督 俳優としての素晴らしさはみなさんもご存じの通りですが、それ以前に人としても魅力的。媚びたり、偉ぶったりすることなく、すごく自然体で地に足の着いた方なので、初めて会った瞬間から好きになってしまったほどでした。


―現場では、藤原さんにどのような演出をされましたか?


監督 これは演出家としてのつねでもありますが、いままで見たことのない藤原さんを引き出したいという思いで挑みました。今回、衣装合わせのときに津田伸一をどんな感じにしたいかと聞かれたので、「早口の男というのはどうですか?」「それはおもしろいかもしれないですね」というやりとりをしたんですが、撮影前に藤原さんと津田について話したのはそれだけ。にもかかわらず、本番までに藤原さんが自分なりにプランを立てて津田を作り上げてきてくれたので、さすがだなと思いました。


―それだけで監督の意図をくみ取ってしまうとは……。


監督 そのほかにも印象に残っているのは、長いセリフをろうろうと早口でしゃべらなければいけないシーンを撮ったときのこと。噛むこともなくすんなりこなしていたので、「気持ちよくお芝居できてますか?」と聞いてみたんです。


そしたら、「これでいいのかな?」ともうひとりの自分が演じている自分の姿を見ているんだと。役を演じながら、同時にそれが作品のためになっているかどうかを俯瞰で見ることもできると知り、感心してしまいました。あと、モニター越しに見たときに、やっぱりスターの顔立ちだなと改めて感じたのが忘れられません。

「お芝居は生もの」というのが僕の現場の考え方


―今回、藤原さんとのシーンが多かったのは、行きつけのコーヒーショップ店員を演じた西野七瀬さんですが、初めは緊張していて藤原さんと仲の良さを出し切れないことがあったとか。そこで、監督が藤原さんからハグとお姫さま抱っこをしてもらうことを提案したそうですね。どういう状況だったのでしょうか?


監督 西野さんはお芝居をすること自体が久しぶりだったのと、いきなり藤原さんと対面でお芝居をしなければいけないということもあり、すごく緊張されていたんです。でも、2人は軽妙なやりとりをしている間柄だったので、もっと距離感を縮めたいねと。そうやってみんなで相談しているなかで、「ちょっとハグとかお姫さま抱っこしてもらったら?」と提案してみたんです。


―西野さんの反応はいかがでしたか?


監督 一瞬、恥ずかしそうにしてましたが、そこでスッと自然に対応してくださったのが藤原さん。「おかげで距離を縮めることができました」と、おふたりから言っていただきました。でも、これで逆に距離ができてしまったら問題でしたね(笑)。


―(笑)。藤原さんのさりげない優しさが、西野さんの心を開いたんだと思います。そのほかにも現場で意識されたことがあれば、教えてください。


監督 僕は「お芝居は生もの」と考えているので、僕の現場では最初に段取りを確認したら、テストをせずにいきなり本番に行くことが多いんです。役者さんには瞬発力を持ってお芝居していただくことになりますが、そうすることでスタッフも含めた現場の集中力が高まるので、あえてそのような方法を取っています。


―ということは、本番で監督が予想しないことも起きたりするのでは?


監督 今回の現場で言うと、車のなかで津田がメモリーカードのなかに入っている映像を確認するシーンがまさにそれですね。脚本には「映像を見てニヤッと笑う」と書かれていたんですが、本番で藤原さんがいきなり高笑いしたんです。


そのときに、そうきたかと。でも、藤原さんは笑い方だけで、津田の上から目線の性格や小説家らしさを表現していることがわかったので、驚かされました。

俳優陣の役作りを目の当たりにしてしびれた


―そのあたりも注目ですね。本作は、かなり豪華な顔ぶれが並んでいますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?


監督 まずは、“裏社会のドン”倉田を演じていただいた豊川悦司さん。カメラが回っていないところでも、周りから離れて役のままの空気感を維持していらっしゃっていたので、すごみのある近寄りがたい感じにはしびれました。でも、撮影が全部終わったあとは、急に大阪の気にいいお兄さんみたいになっていましたけどね(笑)。そういった豊川さんの役作りの様子を見て、なるほどなと思いました。


そのほかには、古本屋の店主役のミッキー・カーチスさんが下ネタのアメリカンジョークばかりを飛ばしていたのがおもしろかったです。藤原さんはときどき呆れていましたが、おかげで現場は和みました。ただ、ミッキーさんもふざけているばかりではなくて、実は本作に重要なひと言を提供してくださっているんです。


―どのシーンでしょうか?


監督 津田が古本屋で「今年はうるう年かぁ」というセリフのあとにもう1行あったんですが、どこかしっくりこないとずっと感じていたんです。そこで、「何かないですか?」と藤原さんとミッキーさんに聞いてみたところ、ミッキーさんが間髪入れずに「余計な1日があると、余計なことが起こるんだよ」と。その言葉がすごくよくて、そのまま使わせていただきました。


―耳に残るセリフのひとつだと思いましたが、人生経験が豊富だからこその言葉ですね。それでは最後に、これから観る方へのメッセージをお願いします!


監督 先ほども少し言ったように、この作品は観る方なりの結末があっていいと思っているので、みなさんがそれぞれの方法で謎解きをして答えを出し、広げていただけたらと。お互いの感想を話し合ってもらったり、何度も観ていただいたりしたらうれしいです。


あとは、僕の出身地でもある富山を舞台に撮影しているので、そのあたりも注目していただきたいですね。特に、市の中心部にある神通川やこれから起きることの不気味さを表現している壁のような立山連峰など、ほかの場所ではなかなか撮れない映像もあるのでぜひ見ていただきたいです。

ひとつではない“正解”にたどり着くことができるか!?


時空を超えてさまざまな“ウソ”と“ホント”が交錯するなか、観るたびに謎が深まる本作。ワケありな登場人物たちに翻弄されながらも、自分なりの“真実”を見つけだす楽しさを味わってみては?

取材、文・志村昌美

深読みが止まらない予告編はこちら!


作品情報

『鳩の撃退法』

全国公開中

配給:松竹


©2021「鳩の撃退法」製作委員会  ©佐藤正午/小学館

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