上白石萌音が’70~’90年代の名曲を歌う 待望のカバーアルバム発売
「みんなが知っている曲や、聴いたことがあるけどタイトルは知らない曲とか“あの時代の名曲”って共通言語があるじゃないですか。親御さんや先輩、世代の違う人たちとの会話の糸口になるようなアルバムになったらいいな。ものすごい数のリクエストをいただいたので本当に悩んだんですが、選曲は楽しかったです」
アルバム『あの歌‐1‐』には「グッド・バイ・マイ・ラブ」(アン・ルイス/’74年)や「勝手にしやがれ」(沢田研二/’77年)など昭和の名曲たちがズラリ。全て鳥山雄司さんのアレンジで統一感を持たせ、萌音さんのピュアな声と豊かな表現力でフレッシュに仕上げた。
「’70年代の日本の歌謡曲の魅力は古き良き空気感があるところ。当時は作詞家さんと作曲家さんにより数々の名曲が生まれて、それを歌手の方が歌いこなす個性と表現力の塩梅の妙に魅せられました。この時代を私は知らないですけど、憧れますね」
そして、アルバム『あの歌‐2‐』は「世界中の誰よりきっと」(中山美穂&WANDS/’92年)をandropの内澤崇仁さんがアレンジしたり、「Diamonds〈ダイアモンド〉」(プリンセス プリンセス/’89年)をヨルシカのn-bunaさんがアレンジしたり。こちらも聴きどころ満載。
「カラオケに行った時に『これさえ歌えば盛り上がる!』という曲が、’80~’90年代にはたくさんあって。それが今の時代にも全く色褪せることなく残ってますよね。例えば『Diamonds〈ダイアモンド〉』の、プレゼントの山に埋もれてもまだ死ねない! っていうような、底抜けに明るい時代性。今だからこそ、あの時代の勢いを思い起こして、懐かしくも羨ましくもありながら、元気になってくださる方がひとりでもいたらいいな」
心がけたのは「純粋に曲を愛してリスペクトして、そのまんま歌う」こと。役者としても歌手としても経験を重ねてきたからこそ、音楽における表現にも変化があった。
「私は歌う時にも芝居心を求められがちで『もっと芝居して!』ってよく言われてきたんですけど。でも、パッションだけじゃダメだなと思うようになって。特にミュージカルでは、どんなに涙が出ても、どれだけ舞い上がっても、しっかり息を吸って、正しい音で歌うことが大事。歌手活動を始めた頃にパッションだけで歌えていたのは、多分何も知らなかったから。戻りたいなと思うこともあるけれど、音楽をやる以上は、ちゃんと歌えるようになりたい。そういう意味では『客観視することが大事』ってよくいわれるお芝居にも似ているかもしれないですね」
ピュアな声質と豊かな声量で、時代の名曲を今にフレッシュに届けるカバーアルバム。『あの歌‐1‐』(’70年代カバー 全11曲)¥2,800 『あの歌‐2‐』(’80~’90年代カバー 全10曲)¥2,800 『あの歌 特別盤‐1と2‐』(2CD+DVD+写真集)¥6,100(ユニバーサルミュージック)
かみしらいし・もね 1998年1月27日生まれ。鹿児島県出身。’11年に第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞を受賞し、デビュー。’14年、『舞妓はレディ』にて映画初主演、その後も話題作に多数出演。シンガーとしても豊かな表現力と歌唱力を発揮している。7月に全国ツアー『上白石萌音「yattokosa」Tour 2021』を開催。9月下旬には初の全編書き下ろしエッセイ『いろいろ』(NHK出版)も発売される。
※『anan』2021年6月30日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・上野三樹
(by anan編集部)