『PUI PUI モルカー』監督、「心が無になった」ことも!? コマ撮りアニメ秘話

2021年06月21日 19時10分

アニメ・漫画 エンタメ anan

もしもモルモットが車だったら…。そんな自由な発想から、誕生したストップモーションアニメ『PUI PUI モルカー』。今年の1~3月、日本のみならず台湾など世界をも魅了しましたが、この素敵な作品を作ったのが、見里朝希監督。編集部からのラブコールに応えていただき、貴重なインタビューが実現しました!

車でもあり生き物でもある。だからモルカーはおもしろい。



幼い頃に「カートゥーンネットワーク」を通じて海外のアニメーションに触れ、美大で2D(作画)のアニメを制作。その後ストップモーションアニメに魅了され、大学院の修了制作のアニメ作品が、さまざまな映画賞で高評価を受けました。それがきっかけで『PUI PUI モルカー』の制作につながったという監督の見里朝希さん。「コマ撮りのアニメは、“感覚的に作れる”から、自分に合っている」と語る監督に、アニメのこと、大好きなモルモットのことなどを、根掘り葉掘り伺いました。


――ストップモーションアニメに興味を持ったのは、いつですか?


もともと絵を描くのが好きで、その勉強をするために美大に行ったんですが、徐々にアニメに関心を持つようになり、在学中に友達と企画したグループ展で、自分のくせ毛の苦労をテーマにした2Dのアニメを制作したんです。そこで、映像を通して思いを伝えるという方法論に感動し、もっとアニメを作りたい、という気持ちになりました。ちょうどその頃、大学の友人にスタジオライカの『コララインとボタンの魔女』というストップモーションアニメ映画を観せてもらい、めちゃくちゃ感銘を受け、本当に何度も何度も観たんです。同時期にティム・バートンの『フランケンウィニー』の公開などもあり、徐々にコマ撮りに興味が出てきて。大学在学中に1作くらい作ってみたいという気になり、3年生のときに初めてコマ撮りアニメを作りました。そのときに使ったのが、自作の羊毛フェルトの人形で。


――その頃から、素材として羊毛フェルトを使っていたんですね。


そうなんです。大学生でお金もなかったので、安い素材で理想のキャラを作るなら、これだな、と。もともとぬいぐるみ好きだったというのもあります(笑)。


――コマ撮りアニメは、静止画を24枚撮影し、やっと1秒間の動画が完成するそうですね。とても大変そうな気がするのですが…。


確かに、人形を作る過程とか、一コマ一コマ撮影する手間とか、大変ではあるんですが、絵を描いて作るアニメも、線からキャラを作り上げ、1枚ずつ絵を描いて色を塗ったりとか、それはそれで手がかかると思うんです。コマ撮りの場合はセットやキャラクターなどを置いて撮影すれば、その時点で色もついていますし、かなり完成に近い画像が出来上がる。なので僕的にはですが、コマ撮りアニメのほうが気楽かな、と。あと、カメラで覗いたときに背景が寂しいとなったら、その場で何かをプラスすることもできるし、動きを変えることもできる。自分の感覚に合わせて映像を撮影しながらコントロールできる感じも、僕に向いている気がします。とはいえ、モルカーはさすがにカットが多くて、撮影に追われているときは、心が無になりましたが(笑)。


――改めてですが、モルカーのモデルはモルモットです。見里監督はモルモット好きとして知られていますが、いつから好きですか?


元は姉がモルモット好きで、僕が大学生のときに家で飼い始めたんです。それから僕も、そのかわいさに夢中になりまして…。「いったいどんな顔なんだ」とツッコみたくなるような“ツン顔”と、動きの先が読めないところが好きです。落ち着いてる…と思うと、突然全速力で走りだしたりするんです。さらに走っているとき横に揺れる感じもかわいい。『PUI PUI モルカー』はそんなモルモットを見ながら、「モルモットが車だったら、渋滞してもイライラしないな…」と思ったのがきっかけで生まれた企画です。


――普段かわいいと思うモルモットの動きは、モルカーにもかなり生かされているのでしょうか?


はい。モルカーは車なのでタイヤがついているのですが、それが回転するだけだとモルモットのかわいさは表現できないと思ったので、タイヤだけど四足歩行の動きにしたのは、かなりのこだわりポイントです。あと、常時鼻をヒクヒクさせたところも。その動きがあることでかなりアニメーターさんを苦労させてしまいました(笑)。


――今回のモルカーも、監督の手作りと聞いていますが、一体何台作ったのでしょうか?


全部で65台です。さすがに一人では無理だったので、美術スタッフの方に入ってもらい、みんなで作りました。というのも、今回は僕を含めて4人のアニメーターがいたので、4人分のセット&モルカーが必要で、主要キャストの5台のモルカーはもちろん、それ以外も…となると、65台という数に。モルカーを作るだけで、半年くらいかかった気がします。


――今、そのモルカーたちはどこにいるのですか?


スタジオに大切に置いてあります。ダイソーで買った330円のボックス、通称モルカーボックスにぎっしり収納されています(笑)。


――学生時代はいわゆるアートとしての映像作品を制作されていたと思うのですが、テレビで放送される作品ということで、特に意識したことはありますか?


映画祭などで上映される作品とテレビで流れる作品では、見る人の数が圧倒的に違います。そこで思い出したのが、大学のときに習った、“映像は、悪く言えば見ている人の時間を奪うものでもある”ということ。だからこそ僕は、エンタメ性はもちろん、“見てよかった、ためになった”というメッセージ性もある作品にしたかった。モルカーは、モルモットなので生き物でもあり、そして車でもある。車も生き物も、人間との関わりによってあり方を大きく左右される存在ですよね。でもモルカーは、ただの車と違ってモルモットとしての意思がある。危険を感じたら逃げ出すこともできるし、例えば強盗に乗っ取られたシロモが強盗団が奪ったお金を排出しながら走ったように、自分で行動を起こすこともできる。人間社会に流されず、やりたいことをやり通す大切さを伝えられたらいいな、と思っていました。あと意識したのは、テンポですね。


――2分40秒という短い尺の中で、どうテンポを考えましたか?


小さい頃「カートゥーンネットワーク」で見ていた海外のアニメは、10分程度の中でちゃんと起承転結があって、さらに素早い展開で全然飽きなかった。聞いた話によると、人間が集中して映像を見られるのは、3秒程度という説もあるそうなんです。なので僕は3秒以上の静止画を作らないようにしていますし、6秒の中に必ず物語が動くような動作や展開を入れることにしています。立ち上がるとか、手が動くとか、さりげないことでいいんですが、それがあることで、見ている人を飽きさせないようにできると思うので。


――確かに言われてみると、モルカーのお話は、たった2分40秒なので、ある意味あっという間に終わりますが、実は意外とお話が展開していますよね。


そうなんです。そこはすごく意識していたところです。


――放送と同時にツイッターなどで大騒ぎになりました。この人気ぶりはどう感じましたか?


こんなに見てくれる人がいるとは…と、とにかくびっくりしました。朝7時半の幼児向けの番組の中の1コーナーでしたから、大人が見てくれるなんて想像もしていなかった。たぶん放送直後にYouTubeなどで配信もしていたのが大きかったのかな、と思っています。あと、ファンアートがたくさん生まれたので、子供でも描きやすいキャラクターデザインにしてよかったなぁと思いました。内容に関しては、嬉しいところに気がついてくれているコメントや、逆に僕らが想像しなかった解釈をしてくれる人もいたりして、そこは驚きました。


――例えばどんなことですか?


僕らとしては、モルカーと運転手の絆といったところは、そんなに深掘りしているつもりはなかったんですが、「人間がやってることって愚かだ」みたいなところを突いてくる方もいて、なるほどな、と思わされたり。


――あとは、名作映画へのオマージュがちりばめられていることも、かなり話題になりましたね。


そうなんです! そこに気がついてもらえたのは、めちゃくちゃ嬉しかったです。『ワイルド・スピード』『インディ・ジョーンズ』、そして『ミッション:インポッシブル』。あとタイムトラベルをする車は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』へのオマージュです。他にもいろいろありますが、特に嬉しかったのは『メガ・シャークVSメカ・シャーク』へのオマージュ部分をサメ映画好きの方々から評価してもらったことです(笑)。


――『午後のロードショー』でおなじみの、サメ映画ですね(笑)。もともと見里監督は、映画がお好きなんですか?


はい。マニアと言えるほどではありませんが、暇なときは映画を観るか、ゲームをするか、という感じの毎日です(笑)。


――さて、やはり気になるのは、モルカーの続編はあるのか、というところなのですが…。


今回作った12話のお話の中では、とてもモルカーの魅力は表現しきれなかったので、続けていけたらいいなと思っています。あと、今回はストップモーションアニメで作りましたが、次は別の手法で撮ってみるのもおもしろいかも、ともちょっと思います。例えば映画『名探偵ピカチュウ』みたいなCGとか。テーマ的にも、もっといろんな種類の役割を持つモルカーも登場させてみたい。モルカーにはいろんな可能性があると思うので、いつか続きを作りたいですね。


みさと・ともき 東京都出身。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を経て東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。大学院修了作品の『マイリトルゴート』で、国内外の映画祭にて複数の賞を受賞。


(1枚目写真)パトモルカーと、体を寄せて、ひっくり返って泣いているアビー。こちらも見里監督による蔵出しカット。ananをご覧のみなさまだけに、今回特別にお披露目です!


NEWS1:3DやMX4Dになって映画館にやってくる!



全12話を一挙上映する『とびだせ! ならせ! PUI PUI モルカー』が、7月22日より2週間限定で劇場公開が決定。モルカーの世界を大きなスクリーンで体感できる、映画館ならではの上映をお楽しみに。3Dってことは、モルカーたちが飛び出したりしちゃうの…?! 気になる~。※一部の劇場では2D上映となります。


NEWS2:またテレビで楽しめる! 全12話、再放送決定。



なんとテレビでもまたまた放送! 7月6日より、朝7時半から放送の『きんだーてれび』(テレビ東京系)内にて、毎週火曜日の再放送も決定。配信で見るのも楽しいけれど、きちんと朝起きて、リアタイ視聴するのも健康的で素敵! SNSで実況しながら見るのもまた楽しい。お寝坊さんは、録画必須です。


NEWS3:Blu‐ray・DVDは7月28日発売。



手元に置いておいて、好きなときに見たい! そんなあなたは“盤”をどうぞ。監督と制作スタッフの対談や、ぬいぐるみマルチスタンド、そしてオーディオコメンタリーなどがついたBlu‐ray(受注限定生産)、DVDには予告編やPV集、ミニチュアポスターカレンダーなどの特典が。7月28日発売。


※『anan』2021年6月23日号より。


(by anan編集部)

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