大河好演中の藤原季節が主演「少し前まで窒息しそうだった」心境の変化を告白

2021年05月28日 19時30分

エンタメ anan

先行き不安な日々を送るなか、改めて自分の生き方を見直している人も多いと思いますが、そんなときだからこそオススメしたい1本は、人と人とのつながりを描いた注目作『のさりの島』です。今回は、主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。

藤原季節さん


【映画、ときどき私】 vol. 383


映画『佐々木、イン、マイマイン』や『くれなずめ』、大河ドラマ『青天を衝け』など、話題作への出演が続き、大きな注目を集めている藤原さん。本作ではオレオレ詐欺の男がある老女と出会うことで、徐々に変化していく姿を繊細に演じています。そこで、舞台となった熊本・天草での思い出や自身が抱える葛藤について、語っていただきました。


―まずは、この作品に出演したいと思った理由から教えてください。


藤原さん 撮影したのは2年ほど前ですが、実はその当時の僕は直接的な言葉があふれている世の中でいろいろな状況に圧迫されてしまい、窒息しそうな状態に陥っていたときでした。そんなときに、目に見えないものを映そうとしているこの作品に出たいと思ったんです。


劇中で「人にはまやかしが必要なときあるんだよ」というセリフがあって、僕がすごく好きな言葉なんですが、事実だけでなく、まやかしや嘘のなかにも救いがある場合もありますからね。なので、この作品に助けられました。天草で撮影をするなかで少しずつ回復していきましたが、そんな僕のありのままの姿も映画には映っていると思います。


―当時は、何が藤原さんをそこまで追い込んでいたのですか?


藤原さん これはきっとみなさんにもあることだと思いますし、僕もいまでもありますが、普通に生きているだけでも何かに追われて息が詰まりそうになることはありますよね。そういう苦しさは、物心ついたときからある気がしています。


―今回、藤原さんが演じた男は居場所もなく孤独を感じさせる人物でしたが、ご自身と重なるような部分もありましたか?


藤原さん 最初に脚本を読んだときにいいなと思ったのは、主人公に名前がないところでした。そんなふうに、名前のなさというのは、僕自身もずっと感じていたことだったからです。代わりのきかない存在になりたくて東京に来たのに、誰にも影響を与えられず、居場所をずっと探し続けている感覚はずっとありました。実際、居場所を見つけるために、日本中を歩いて旅してみたことも。でも、それが今年に入ったころから変わってきたような気がしています。

大事なのは、変わっていくことをどう見つめていくか


―何か解放されるきっかけがあったということですか?


藤原さん 自分を必要としてくれる人が増えてきていることが、僕に居場所を与えてくれているのだと感じています。もしかしたら、それもまやかしかもしれないですけど、「感動しました」と言ってくれる瞬間の言葉は本物ですからね。


―本作の撮影を終えてから2年ほどが経っているそうですが、この2年で環境も大きく変わったと思います。現在のブレイクを肌で感じることもあるのでは?


藤原さん どこに行っても、誰と接していても、すべてが変わったような気がしています。でも、僕自身が自分を強く信じて、自分を保っていれば、どんなに周りが変化していても、魂が迷うことはないのかなと。


ただ、自分が変わっていくことを否定するとおそらくそこに強烈な違和感が生まれて、また窒息状態に陥ってしまうこともあるので、大事なのは変わっていくことをどう見つめていくか、だと思います。と偉そうなことを言ってしまいましたけど、ブレイクしているなんて自分ではまったく思っていませんからね(笑)。


―そんななかで、支えになっているものといえば何ですか?


藤原さん それは、映画ですね。映画を観ている瞬間はすごく解放的で、世界の核心や真実に近づけているような高揚感がありますから。この感覚だけは昔から変わっていない部分ですね。


―影響を受けている作品があれば、教えてください。


藤原さん 子どものころから好きなものでいうと『スタンド・バイ・ミー』が大好きです。最近観たものだと、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』も素晴らしかったですね。


人は誰しもこの世で何かを表現したり、何かを残したりする役割があると思いますが、僕はいい作品を観ると、そういう気持ちを取り戻すことができるんです。そんなふうに自分の原点に立ち返ることができるような作品や俳優に出会うと、「自分もいつかこういう作品を必ずやるんだ」と強く思います。

原さんと自分との時間はまだ終わっていない


―本作では、名女優・原知佐子さんとのやりとりが非常に素敵でした。残念ながら原さんにとっては遺作となりましたが、原さんの印象について教えてください。


藤原さん 原さんは本当に美しい方でした。この映画を観ると元気な原さんと会うことができるので、僕のなかではまだ生き続けている感覚です。僕と原さんの時間はまだ全然終わっていないといいますか。


―忘れられない原さんとのやりとりはありますか?


藤原さん いま思うと、最後のお別れをしたときにただならぬ緊張感があったので、ひょっとしたら原さんにはこれが最後になるかもしれないという思いがあったのかもしれません。そのときはきちんと挨拶をして、ハグをしてお別れをしたんですが、実は東京に帰る前にもう一度会えるかもしれないというチャンスがあったんです。


なので、会いに行こうとしたら、原さんから「あの挨拶をしたんだから、会わなくていいの」と。そこで、あの挨拶には大切な意味があったんだなということを知りました。ただ、僕はまた会えるだろうと簡単に考えていたので、それを思うと胸が苦しくなるところはあります。いまでも、天草に行ったら原さんと会えるような気がしています。


―劇中のおふたりが食卓を囲む様子が本当にリアルで、好きなシーンのひとつです。何か意識されたこともありましたか?


藤原さん 印象的だったのは、リハーサルで玉子焼きを食べたとき。すごくおいしかったので、「誰が作ったんですか?」とスタッフさんに聞いたら、原さんが「違うわよ、これは私が作ったの」といたずらっぽい微笑みを浮かべておっしゃったんです。そのときに、原さんが物語を信じる力強さは圧倒的だなと。おかげで「これはばあちゃんが作ったご飯なんだ」と心から信じることができました。

天草の魅力にとりつかれている


―天草での撮影を振り返ってみて、いま思い出すことといえばどんなことですか?


藤原さん 本当にたくさんあるんですけど、とにかく食事がおいしかったです。お昼は地元の方が作ってくださった豪華な料理が現場に並んでいましたね。


天草の味が忘れられなくて、いまでも僕の家では九州から送ってもらっている白みそ、白だし、しょうゆ、柚子胡椒などを使っていて、すべて九州の調味料でそろえています。あとは、天草酒造で作られている米焼酎がお気に入りで、現場で会う大好きな人たちに「飲んでください!」と言って配っているほど。勝手に天草観光大使をしているところです(笑)。


―相当影響を受けていらっしゃるんですね。


藤原さん 天草の魅力にとりつかれています(笑)。ただ、撮影の後半は「このまま食べ続けると太ってしまう」と思って、断食したんですけど、本当に耐えるのが苦しかったです。いまでも、役作りで痩せないといけないときに、天草の料理が並んでいる夢を見ることがあります。おそらく、あのときに食べられなかったトラウマがいまでもずっと残っているんでしょうね。だから、早く天草に行って、あのときのリベンジをしたいです!


―天草の料理、食べてみたいです。あと、天草の街の雰囲気も心が浄化されるような素敵なところだと感じました。


藤原さん 確かに、そういうところはありましたね。僕は商店街にある旅館に泊まっていたのですが、静かで不思議な場所でした。撮影がお休みの日は、15時間くらい寝て、おいしいご飯を食べて過ごしていましたが、そのおかげで自分が生き返っていくような感覚があったので、天草が僕を蘇生させてくれたんだと思います。

すべて天からの授かりものだと考えるようになった


―ただご出身は北海道なので、北と南でまったく違うのではないでしょうか?


藤原さん 天草に気持ちが傾いているところですが、北海道にもがんばってほしいです(笑)。


―(笑)。とはいえ、北海道でも今回のようにがっつりと撮影したいのでは?


藤原さん それができたら最高ですね。僕の夢でもあります。ちなみに、僕は自分の夢のなかで札幌が舞台の『探偵はBARにいる』の4のシナリオを書いて、勝手に続編を作ってしまったことも。


―ぜひ、観たいです。タイトルにある「のさり」とは、いいこともそうでないことも、自分のいまあるすべての境遇は、天からの授かりものとして否定せずに受け入れるというという意味だそうですが、藤原さんがこの言葉から学んだことはありましたか?


藤原さん 「のさり」という言葉を意識するようになると、いいことも悪いこともすべてが「のさり」につながっていることに気がつきました。自分に待ち受けている苦難や立ちはだかる壁も天からの授かりものなんだと捉えて受け入れるというのは、僕にとっては強い考え方になっているかもしれません。


ある意味、コロナ禍のこの状況も「のさり」なのかなと思うこともあります。実際、僕自身はコロナがあったことによってこの作品に対する見方が変わりました。というのも、自宅で時間を過ごすなかで、生きている人たちや亡くなった人たちの目に見えない思いがいかに大事なのかということに気がついたからです。


この映画では、そういった人々の思いや目に見えない大切なものをなんとか映し出そうとしている作品なので、こういう時期を経験したことで、作品をより深く感じられるようになったんだと思います。


―確かに、この1年を経験したからこそ、劇中の「まやかし」というセリフも違う響きを持っているように思いました。


藤原さん そうですね。言ってしまえば、映画自体も嘘ではありますが、僕はその嘘に助けられてきたんだなと。劇中で「魂がおろついた」という言葉が出てきますが、2年前の僕は魂がおろおろしていたので、本当にこの作品に出演できてよかったです。僕にとっては、旅のような時間だったと思います。

いろいろな感情と向き合いながら続けていきたい


―28歳になって、30代やその先のことも考えるようになりましたか?


藤原さん さすがに考えるようになりましたね。たとえば、これまで感じていた精神的な苦しさが30代になって楽になるのかなとか、逆に楽になっていいのかといった疑問を抱くようになりました。


ただ、俳優という職業を続けるうえで、失ってはいけない苦しみや悲しみがあるんだろうなとも思うので、そう考えると少し不安な気持ちにもなりますが、いい映画を観て憧れを取り戻すことで突き進むことができたらいいなと。30代になっても、40代になっても、そういう気持ちを失わずに、さまざまな感情と向き合ってきたいですね。


―そういう意味では、藤原さんにとって映画自体が「のさり」なのかもしれないですね。


藤原さん 本当にそうかもしれないです。映画と出会ったことで、いいことも悪いことも味わうことになりましたから。ただ、僕はどの職業を選んだとしても、きっと同じようなことを考えていたと思うので、たまたま出会ったのが映画だったというだけかもしれません。


―藤原さんはキアヌ・リーブスに憧れていると聞いていますが、海外に挑戦してみたいお気持ちもありますか? 今後、どのようなことをしていきたいのかを教えてください。


藤原さん キアヌ・リーブスは大好きですね。実はアクションをやりたいんですが、残念ながら僕は運動の才能は授からなかったので、なかなか難しいんですが(笑)。『るろうに剣心』の佐藤健さんに憧れて部屋にポスターを貼っていたこともあるくらいです(笑)。ジャッキー・チェンにも憧れているので、諦めずにアクションにも挑戦していきたいと思っています。

インタビューを終えてみて……。

人柄が表れるような言葉の選び方とユーモアを交えつつ、興味深いお話をたくさん聞かせてくださった藤原さん。映画や役と真摯に向き合う姿に、俳優としての覚悟を垣間見た気がしました。今後もさまざまな作品で、どんな顔を見せてくれるのか楽しみです。

“のさりの精神”に救われる


人との絆が希薄になりがちな現代に生きる私たちに、忘れていた大切なものをそっと届けてくれる珠玉のストーリー。優しい嘘が生み出す優しい時間に包まれながら、心がじんわりと温かくなるのを感じられるはずです。

写真・山本嵩(藤原季節) 取材、文・志村昌美 

ストーリー


オレオレ詐欺の旅を続ける若い男がたどり着いたのは、熊本・天草にある寂れた商店街。老女の艶子は、若い男をオレオレ詐欺の男とわかっているのかいないのか、なぜか孫の“将太”として男を招き入れる。


男も優しい嘘に居場所を見つけ、いつの間にか“将太”として艶子との奇妙な共同生活を送ることに。そんななか、地元FM局のパーソナリティを務める女性・清らと一緒に商店街で行われる上映会の企画をすることになる。そこで、“将太”は艶子の持っていた古い家族アルバムにある写真を見つけるのだった……。

心に染みる予告編はこちら!


作品情報

『のさりの島』

5月29日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開

製作/配給:北白川派


©北白川派

写真・山本嵩(藤原季節)

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2021年05月28日 19時30分

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