W不倫の夫婦が迎える結末...フランス流から学ぶ大人の恋愛関係

2019年12月19日 20時20分

エンタメ anan

女子の間でも人気が高く、思わず憧れてしまうのはフランスのライフスタイル。そこで、自由気ままでオシャレなパリジェンヌたちの日常を垣間見ることができる話題作をご紹介します。それは……。

大人のラブストーリー『冬時間のパリ』


【映画、ときどき私】 vol. 282


押し寄せる電子書籍ブームと時代に順応しようと努力している敏腕編集者のアラン。そんななか、作家で友人のレオナールから自身の不倫をテーマにした新作の相談を受けるものの、内心はその作風を古臭いと感じていた。


私生活にも悩みを抱えるアランは、女優の妻・セレナとうまくいかず、年下のデジタル担当と不倫中。いっぽうのセレナも、裏ではレオナールの妻に内緒でレオナールと秘密の関係を続けていたのだった。はたして、2組の夫婦が迎える結末とは……。


ジュリエット・ビノシュやギョーム・カネといったフランスを代表する実力派が顔をそろえていることでも話題となっている本作。そこで、試行錯誤を長年繰り返した末に、珠玉の1作を完成させたこちらの方にお話をうかがってきました。


フランスの名匠オリヴィエ・アサイヤス監督!


前作『パーソナル・ショッパー』でのインタビュー以来、ananwebでは約2年半ぶりの登場となるアサイヤス監督。今回は現代のデジタル化が抱える問題や男女間の愛について、語っていただきました。


―今回は出版業界を舞台に2組の夫婦を描いていますが、それを監督としては珍しいコメディという手法で描いたのはなぜですか?


監督 この作品は、デジタル化や現代社会に関する抽象的な概念について問題提起をするために作りました。ただ、こういった社会的な問題を描くときに、ものすごくまじめな語り口にしたり、技術的な用語を駆使したりすると、なかなか観客はアクセスしにくいものなんですよね。


それよりも、コミカルなトーンで描いたほうが、「これは自分たちの問題なんだ」と考えてくれると感じたので、コメディにすることにしました。


―劇中ではジュリエット・ビノシュ本人に関するジョークがあったりと、キャラクターたちの繰り広げるやりとりが見どころでもありますが、セリフにはアドリブもありましたか?


監督 本当はもっとアドリブもあるかなと思っていましたが、今回はすべて脚本に書かれていることです。それは、この作品がコメディだったからというのも大きな理由だったと思います。


というのも、コメディは言葉のリズムやチョイスによって、コミカルなものになるかどうかが決まるので、その場で変えてしまうと、そういった要素が消えてしまうこともありますから。なので、今回はわりときちんと計算して書いたセリフを言ってもらうことにしました。

愛とは年齢によって変容するもの


―本作に登場するのは、真実を打ち明けることで信頼を回復する夫婦と、見て見ぬ振りをすることで関係を維持する夫婦という対照的な夫婦。描くうえでモデルにしたカップルがいたのか、それともいまのフランスではこういった夫婦が多いということなのでしょうか?


監督 特にフランスの代表的な夫婦というわけではありませんが、こういうカップルはどの時代にもいますよね。それに、男女関係においては、すべてが可能ですし、何でも起こりうるものですから(笑)。なので、決して夫婦の模範を提示したつもりもありません。


これまでに多くの作品で同様のことが描かれていますが、男女間の愛というものは、年齢を重ねたり、それぞれの時期によって変容していくものなんです。そういったなかでも関係を存続したいなら、「愛というのは、少しずつ変わっていくものなんだ」というのを双方が受け入れなければ、難しいと思います。だからこそ、人生哲学のように「絶対こうなんだ!」という思い込みよりも、柔軟性や許容することが必要なんです。


―まさにその通りだと思います。ちなみに、前作『パーソナル・ショッパー』とはかなりテイストの違う作品だと感じましたが、意識された部分もありますか?


監督 実は、私のなかでは『パーソナル・ショッパー』と『冬時間のパリ』はそこまで遠い作品だとは思っていません。なぜなら、アプローチやアングルは違うものの、『パーソナル・ショッパー』がひとりの孤独な女性が新しいインターネットの世界と対峙している作品だとしたら、今回の作品は新たにデジタル化が進むなかで、「本当にここに価値があるんだろうか」と疑問を提示している作品だからです。


―なるほど。ただ、デジタル化に疑問を感じている人がいるいっぽうで、現代は大半の人がSNSやインターネットなしでは生活できないような状況にあります。デジタル化の波は映画業界にもあったと思いますが、そのことに関してはどう感じていますか?


監督 もちろん、映画業界におけるデジタル化も昔から言われていることですが、90年代に起きた音のデジタル化が一番初めでした。そうやってさまざまなプロセスがデジタル化され、再編成されていく変化は、私が映画を撮る過程ですべて経験しています。


なので、私からすると、映画業界のデジタル化はすでになされてしまった過去のものなんですよ。それに対して、電子書籍が本に代わって席巻しているわけではないので、出版業界のデジタル化はまだ途上と言えると思います。

本のデジタル化はほかよりも根深い問題


―確かに、映画業界に比べると、出版業界のデジタル化は完全に普及しているとは言いにくい段階ですね。


監督 いま「映画業界はすでにデジタル化された」と言いましたが、それは技術的な面においての進化であって、結局のところシナリオは書かないといけないですし、役者もカメラのレンズも必要不可欠。そして、観客にとってはデジタル上映であろうがフィルムであろうが、「映画館で見る」という状態は同じなので、すべては変わったけれども、映画業界でも大まかなものは残っているというふうには感じています。


ただ、映画をどういうふうに鑑賞するかという消費の仕方については、大きく変わりましたよね。昔は映画館のスクリーンかテレビで見るかのどちらかでしたが、デジタル化されたことによって、ストリーミングならどこでも見られるようになりましたから。


古典の作品もデジタルリマスター化されたことによって、クオリティもよくなり、見ることができる作品の数も膨大に増えたので、私が映画監督を目指す前と比べると、格段に進化していると思います。


―映画監督のなかでは映画のインターネット配信に対していろんな意見がありますが、監督ご自身はいかがですか?


監督 私はいいことだと思っていますよ。というのも、映画監督になりたいと思っている人たちが、過去の映画の歴史やいろいろな作品にたくさん触れられる環境になったからです。住んでいる国や場所によって制限があった昔に比べるとプラスのことだと感じています。


―監督は元編集者でもありますが、出版業界のデジタル化については賛成派? それとも反対派?


監督 私としては「本で読むのと、電子書籍で読むのとどのくらいの違いがあるんですか?」と聞かれても、正直そんなに違いはないと思っています。実際、私自身はタブレットで読むことを楽しんでいますしね(笑)。


ただ、本のデジタル化に関しては、ほかよりも根深い問題だなとは感じています。なぜなら、ほかの分野では新しいテクノロジーやデジタル化が受け入れられているにも関わらず、電子書籍はあまり好きではないという人もいまだに多くいますから。


世界的な傾向を見ても、電子書籍が市場を独占するどころか、むしろ関心が薄れているような印象さえあるので、私と同じような違和感を覚えている人がたくさんいるという証拠でもありますよね。

この10年で自分が変わったことに気がついた


―この脚本を最初に書いたのは10年ほど前だったそうですが、この10年という時間が作品に与えた影響もありましたか?


監督 確かに、この作品のルーツはかなり昔ですが、結果として映画にはならなかったので、日の目を見ることはありませんでした。ただ、これまでにその脚本は何度も読み返していたので、ずっと心のなかでキープしていたところはありますが、いま思うと最初の内容はもっとドラマチックだったと思います。


でも、実はそれに対してどこか違和感があったり、感情移入できないところがあったんです。そのときに、「この10年で僕自身が変わったんだ」ということに気がつきました。そこで、脚本に書かれている言動や時代についてもう一度考え、新たに作り直したのが今回の作品です。


(以下、一部ネタバレを含みます)

―ラストはパリではなく、マヨルカ島でそれぞれが落ち着くところに落ち着きますが、このシーンに込めた思いを教えてください。


監督 まず、僕としては4人が勢ぞろいするラストにしたかったというのがありました。しかも、想像していたのは、屋外の光にあふれている明るい場所で、人間の自然な感情に影響を及ぼしているシーン。


そのため、それまでのシーンではスーパー16という少し粒子の粗いフィルムで撮影していましたが、マヨルカ島では35mmのフィルムを使っています。そうすることによって、フィルムが持っている色彩の鮮やかさや豊かさ、そして太陽の光をきちんと撮ることができるからです。


脚本家としてのプロセスを自分で振り返ってみると、つねに私の関心事となっていたのは、ラストシーンをどうするかということ。作者には登場人物を不幸にするか、あるいは救うかという2つの選択肢が託されているからです。今回でいうと、私自身は彼らを罰するのはあまりにも残酷だろうと思い、どちらかというと希望を与えて終わりたいという境地に達して、ああいうラストにすることにしたんですよ。


―興味深いお話をありがとうございました。

大人もみんな悩んで迷っている!


フランス人らしいウィットに富んだ会話を浴びるように楽しめる本作。大人ならではのさまざまな恋愛の形だけでなく、洗練されたファッションやインテリアなど、女性にとっては見どころ満載の1本です。彼らと一緒に、冬のパリを味わってみては?

小粋な予告編はこちら!

作品情報

『冬時間のパリ』

12月20日(金) Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

配給:トランスフォーマー

©CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

anan

2019年12月19日 20時20分

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