豊田利晃監督も絶賛! 松田龍平が腹をくくって挑んだシーンとは?

2018年09月04日 19時00分

エンタメ anan

年齢を重ねるほど、失敗や挫折を経験することも多くなるものですが、そんなときこそ実際に起きたサクセスストーリーから活力をもらうのがオススメ。そこでご紹介するのは、感動の実話をもとにした注目作『泣き虫しょったんの奇跡』です。今回は、こちらの方々に本作の魅力についてお話いただきました。それは……。

写真・角戸菜摘(松田龍平・豊田利晃)


主演の松田龍平さん&豊田利晃監督!


【映画、ときどき私】 vol. 184


これまでも数々の話題作を生み出している松田さんと監督ですが、本格的なタッグを組むのは実に16年ぶりとなります。今回はプロ棋士養成機関である「奨励会」を退会後、アマチュアからプロ編入という偉業を成し遂げた男の半生を描いた作品。


「将棋界が舞台」と聞くと、将棋のことはわからないという女子も多いと思いますが、そこはご心配なく。本作の見どころとなるのは、夢に破れた主人公がいかにして成功をつかんだのかという奇跡の道のりと、周囲の人たちとの心温まるやりとり。そこで、本作を通しておふたりが感じた思いや現場でのエピソードなどを語ってもらいました。


―豊田監督は9歳から17歳までプロ棋士の登竜門である「奨励会」に在籍されていたということもあり、将棋に対して強い思い入れがあったと思いますが、そのなかで松田さんを主演に迎えたきっかけを教えてください。


監督 龍平とは17歳のときの『青い春』にはじまり、19歳で『ナイン・ソウルズ』、29歳で『I'M FLASH!』ときていたので、「次はどんな映画で松田龍平と組むことができるんだろう」と思っていましたが、そんなときに今回の作品に出会ったんです。


映画の主人公も35歳になるまでの話ということで、ちょうど35歳の龍平ともぴったり。それに、僕が将棋の映画を撮るなら、主役は同じ年月を積み重ねてきている龍平しかいないというのは、自然な流れだったと思います。ほかの候補を考えることもありませんでしたね。

豊田さんとならなんでもやりたいと思った


―松田さんはオファーを受けて、どのように感じましたか?


松田さん まずは「豊田さんが将棋の映画を撮る」と聞いて、ぜひやりたいと思ったのが最初ですね。豊田さんとならなんでもやりたいと思って受けました。


―今回、松田さんが演じたのはしょったんこと瀬川晶司五段ですが、演じるうえで意識したことはありましたか? 


松田さん 今回のようにご本人が現場に来てくれるというのは、これまでに経験がないこと。こんなにありがたいことはないなと思う反面、すごく気になってしまうところもありました。ただ、将棋の練習をしていたときから瀬川さんはずっと一緒にいてくださったので、瀬川さんに感情移入したところは多かったと思います。


―実際の瀬川さんはどのような方でしたか?


松田さん 台本や原作を読んでいたので、なんとなくイメージはありましたが、僕は現場では陰でこっそり盗み見している感じでした(笑)というのも、瀬川さんは、観察したくなるような人なんですよ。


―撮影のあとには一緒に出掛けられたりもしたそうですが、瀬川さんと過ごした時間で思い出に残っていることはありますか?


松田さん いろいろ誘ってもらって、お花見をしたり、フットサルをしたりしました。あとは、瀬川さんの恋の悩みを聞いたり(笑)。なので、あまり将棋の話はしていないかもしれませんね。

ひとりの人間を描く作品にしたかった

―監督は映画化するにあたって、瀬川さんとはどのようなやりとりをされたのですか?


監督 原作の文体からも人の良さが出ていますが、瀬川さんは僕にとって「いい人グランプリ」でベスト3に入るいい人。映画を作るにあたっては、原作通りにはできないことも多く、セリフや人物も変えていかないといけないのですが、「すべてお任せします」と言ってくれて、それはありがたかったですね。


―では、現場で瀬川さんから何か要望があったということもなかったのですか?


監督 まったくなかったです。瀬川さんには将棋の棋譜を頼んでいたので、そのことや対局室のお茶の場所とかそういうことは確認しましたが、映画の内容に関しては特にありませんでした。


―この映画を制作するにあたって、参考にしたことはありましたか?


監督 映画を撮る前は、ジョージ・ロイ・ヒル監督の『ガープの世界』(82)みたいに人間の一生を描くような映画にしたいと思っていました。今回は半生ではありますが、ひとりの人間がたまたま将棋と出会って、たまたまこういう世界に入ってこうなったみたいな人間ドラマにしたかったんです。

棋士役を演じるうえで監督がリクエストしたことは?


―将棋という独特な世界が舞台ではありながらも、テーマとしては普遍的で誰もが感情移入できる作品になっていると思いますが、なかでもこだわった部分はありますか?


監督 ワンカットごとにいろいろなことがありましたが、龍平やほかのキャストに早い段階からリクエストしていたのは、将棋の指し方を完璧にして欲しいということでした。というのも、駒を持つ手つきや将棋盤のパシーンという音には美しさがあるんですよ。


将棋を指す者なら誰もがそういう美学を持っているものなので、それを体得することが将棋を理解する近道かなと思ったんです。まずはそこが一番重要なところでしたし、将棋の経験がある僕だからこそ、徹底したいところでもありました。


―そういった要望に応える松田さんの演技に、監督がうなるような瞬間もありましたか?


監督 奨励会での最初のシーンで、カメラが龍平のところまで寄って行ってピタッと止まるというのがあったんですが、そのときに「ピシッと決まった。ありがとう!」と思ったことはありました。


松田さん そんなことありましたか(笑)?


監督 というのも、実はクレーンで人の頭の上を越えていかないといけなかったり、意外と大変なシーンだったんですよ。だから、龍平のおかげでまずはその関門は切り抜けられたなと思いました。

カメラを真正面に置かれてプレッシャーもあった

―では、松田さんが思い入れのあるシーンはどこですか?


松田さん 奨励会のシーンはおもしろかったですね。ライバルと戦いながら一緒に生活をともにするところとか。特に、「やってやったな」という感じのシーンはないですね。


―タイトルに泣き虫とあるように、劇中でも松田さんが泣くシーンは何か所かあり、それぞれまったく違う泣き顔が印象的でしたが、監督はどのように演出されたのですか?


監督 僕がいると気になると思ったので、カメラを置いて、現場を離れるようにしたんです。「あとはよろしく。がんばって!」みたいな感じで、別の部屋でモニターを見ていました(笑)。


―完全に任された状況のなか、松田さんはどのようなことを意識していましたか?


松田さん 「泣き虫しょったん」というだけあって、僕の真正面にカメラを据えられたんですよ。そういう意味ではプレッシャーはあったかなと思います。


監督 でも、「さすが松田龍平!」と思ったのは、泣くシーンでも毎回パターンを変えてきたんです。先生からの手紙を読んだあとのサラッとした涙もけっこう難しかったんじゃないかな。

人生はいろいろあるから泣きっぱなしです(笑)


―毎回変えて欲しいとか、こう泣いて欲しいとかお願いしたわけではないんですね。


監督 そうなんですよ。


松田さん でも、正直言って涙を流すシーンは苦手。「勘弁してよ」と思うんですけど、今回はまっすぐカメラを向けられていたので、逃げ場はないなと腹をくくった感じはありました。


―ちなみに、実生活でおふたりは涙もろいほうですか?


監督 人生はいろいろあるし、悲しいことだらけじゃないですかね。僕なんか泣きっぱなしですよ(笑)。しかも、年を取ると本当に涙もろくなるので、イスラエルの空爆とか見ているだけでも、何もできなくて涙が出ることもあります。


松田さん 僕はそんなに泣かないですね。でも、漫画を読んでいて、ふいに泣いたりとかはあります(笑)。ただ、年を取って涙もろくなったと思うようなことはまだないですね。


監督 まだ30代は大丈夫だよ。これが40代後半になってくると、なんでも泣いちゃうようになるんだから(笑)。

30代の代表作を生み出すことができた


―過去に将棋の世界に身を置いていた監督が、時を経てこの作品と出会ったのも奇跡のようですが、公開を迎えるお気持ちを教えてください。


監督 いま49歳なので、40年前に将棋の世界にいたことになりますが、それを自分の手で一本の映画にできるというのは、ひとりの映画監督としてもこんなに喜ばしいことはないと思っています。奇跡というか、本当にありがたい話ですね。


―松田さんにとって豊田監督とはどういう存在ですか?


松田さん やっぱり僕にとっても特別な監督ですし、期待に応えたいという気持ちは強いですね。今回それに応えられたかはわかりませんが、自分のなかでやれることは全部やったと思います。


監督 いや、すばらしかったですよ。僕は松田龍平の30代の代表作ができたんじゃないかなと思っています。

インタビューを終えてみて……。

長年タッグを組んできている豊田監督と松田さんだからこそ、リラックスした雰囲気に包まれた今回の取材。言葉の端々にお互いへの信頼感も垣間見ることができました。そんなおふたりが心血を注いで生み出した意欲作だけに、スクリーンから伝わってくる熱い思いをぜひ感じてください。

誰にでもふたたびチャンスは訪れる!


人生には思い通りにいかないこともあるけれど、その失敗からどう立ち上がるかに、人としての真価が問われるもの。どれだけ崖っぷちに立たされたとしても、自分の信じた道をあきらめずに歩き続けていれば、逆転王手への道を切り開くこともできるはず。次の奇跡を生み出すのはあなたかも!?

ストーリー


小学校の頃から将棋一筋で生きてきたしょったんこと瀬川晶司。その後、奨励会に入り、プロ棋士になる夢を追いかけていた。26歳までに四段になれなければ、退会しなければいけないという “鉄の掟” が存在していたが、しょったんは年齢制限の壁にぶつかってしまう。


一度は将棋と縁を切り、サラリーマンとして新たな人生を歩み始めるものの、ふたたび将棋のおもしろさに魅了されるしょったん。「やっぱりプロになりたい」という思いを貫くため、35歳で前例のない挑戦へと立ち向かうことに……。

目頭が熱くなる予告編はこちら!

作品情報

『泣き虫しょったんの奇跡』

9月7日(金)より全国ロードショー

監督・脚本:豊田利晃(『青い春』『クローズEXPLODE』) 

原作:瀬川晶司「泣き虫しょったんの奇跡」(講談社文庫刊)

音楽:照井利幸

出演:松田龍平、野田洋次郎、永山絢斗、染谷将太、渋川清彦、駒木根隆介、新井浩文、早乙女太一、妻夫木聡、松たか子、美保純、イッセー尾形、小林薫、國村隼

製作:『泣き虫しょったんの奇跡』製作委員会 制作プロダクション:ホリプロ/エフ・プロジェクト

特別協力:公益社団法人日本将棋連盟

配給:東京テアトル

©2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 ©瀬川晶司/講談社

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