ディーン・フジオカ 転機はNHK朝ドラ「あさが来た」ではなく…

2017年11月08日 07時00分

エンタメ anan

端正なお顔立ちと抜群のスタイル。麗しいそのお姿のなかに、秘められたバイタリティ。流暢に英語を話す知性、様々な経験を通じて磨かれたグローバルな感覚、そしてタフな心…。挙げたらきりがないディーン・フジオカさんの魅力の数々。とにかくそのすべてが私たちを魅了してやまないのです!


すっと伸びた背筋と長い脚。歩く姿が美しい人――ディーン・フジオカさんが現れた時、まず感じたのはそれだ。均整のとれた体でシンプルなスーツを見事に着こなし、歩いてくる彼からは、大人の男の魅力が全身から放たれているようだ。さっそく撮影がはじまると、静かに淡々と切られるシャッターとはうらはらに、レンズに向ける眼差しは強くて熱い。


「自分が大人の男になったと感じたのは、子供が生まれた時。目の前にある“新たな命”への責任を感じて、はっきりと意識が変わりました。もちろん親としてのプレッシャーはあるけれど、同時に喜びも大きくて、これまでに味わったことのないような感覚でしたね。自分の中に隠れギアがもう一段あったって感じかな」


アメリカでの学生生活を終えると、アジアの国々を旅してまわったというディーンさん。「大人の男の条件とは?」という問いに対する答えにも、いろんな世界を見てきたからこその視点がある。


「自分の目に見える範囲だけじゃなくて、対極にあるものや未来まで、広い視点で捉えられること。それが大人の男の条件という気がします。今この世界で起こっていることに対してきちんと自分の意見を持っていて、すべての出来事が自分と関係しているのだと考えることができるかどうか。そしてそれらに対して責任を持とうとする人たちを見ると、男としてかっこいいな、と思います。大人になるほど責任を持つべきことが増えますから、それだけ器も大きくなっていかなくちゃいけない。そのたびに、人は自分のなかに新しい自分を発見していくんでしょうね。この先、自分にもそういう発見があると思うと、楽しみです」


俳優として多くの人を魅了するディーンさんだが、モデルや映画監督の経験を持っているだけでなく、ミュージシャンとして音楽活動も行っている。バイタリティに溢れ、様々な道にチャレンジする姿はいつ見ても刺激的だが、新しいチャレンジをするにあたり、失敗を恐れたり不安に思うことはないのだろうか。


「もちろんありますよ。というか最悪のことを真っ先に考えてしまうくらいです(笑)。僕の場合、まずは直感でやりたいと感じることがあって、それをやると決断したら、次に危険や最悪の状態を考えます。そのうえでリスクヘッジしておけば、限りある人生と時間のなかでも、具体的なアプローチが見つかると思っているから。これは経験から学んだことでもあります。俳優になる前にバックパッカーとして旅を続けていた時は、物を盗まれるとかいろんなことがしょっちゅう起こったし、そうじゃなくても生きていれば日常生活でいろいろありますよね。災害や事故やテロなんかまで考えると、数秒後にどうなっているかわからない時代。だから最悪の場合を想定するんですが、それで決断がコントロールされたことはないですね。生きるうえで必要なものとして、食事、睡眠、運動などがあって、そこに理由はないじゃないですか。それと同じで、何かをしたいという感情が起こってしまったら、やったほうがいいと思うんです」



転機になった作品として彼が挙げたのは、ご本人が監督・主演をつとめ、2013年に公開された映画『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』。英国人女性殺人、死体遺棄事件を起こした犯人の逃亡生活を描いた作品だ。


「台湾で俳優デビューしたあと日本に来て、最初の仕事でした。その当時僕は、事件のことも知らなかったし日本のこともよくわかっていなかったので、作品を作りながら事件の内容を知っていきました。まだ裁判中だったから映画の宣伝はできないかもしれない、と言われたし、もしかしたら日本では最初で最後の仕事になるかもしれない、なんて助言もあったけど、この時も直感を信じて突き進みました。ただそこでも、ネガティブな結果を意識させてくれる声って大事だなと思ったんです。だって行き詰まってはじめて生まれ新しいアイデアがあったりするから。それに、それまでは『自分はこの役をこう演じたい』とか『こんな俳優になりたい』というこだわりが強かったんだけど、この映画のあとは大きく考え方が変わりました。まず作品は監督やプロデューサーの作りたい世界観からスタートしていて、俳優はそれをお手伝いする一つの駒だということがはっきりわかったんです。自分一人がこだわるのではなく、求められていることに全力で応えて、そこに沿った形でさらに何かを返せれば素敵だな、って」


現在出演中のドラマ『今からあなたを脅迫します』でも、主題歌を書き下ろすという新たなチャレンジをした。


「『Let it snow!』というタイトルで、雪をイメージした曲なんですが、実は夏ごろに、映画の撮影をしていたインド洋で海に浸かって『暑い〜』って言いながら作りました(笑)。ドラマの内容を考慮して、ちょっと懐かしさを感じるような、時空がねじれた感覚の曲にしたかったので、’80年代のサックスの音を入れたり、子供のころに好きだった〝歌謡曲〞の世界観を取り入れてみました。また、毎回エンディングで同じ曲が流れるわけですが、見ている人にとって聴くたびに違う思いが積み上がっていったらいいな、という思いを込めて、設計してあります。ドラマの内容が大きく前半後半に分かれるのですが、ストーリーが進むごとに、フィナーレの印象も違ってくるといいなと。ちなみに、僕が演じる脅迫屋の千川は、〝悪で人を救う〞というだいぶ振り切った役です。そもそも不完全な人間が作っているわけだから、ルールだって不完全なわけで、そういうちょっとした隙間で不具合が起こって苦しんでいる人たちもいる。そんな時にルールを破りながらも人を助けるという〝脅迫屋〞を職業としています。仕事はプロとしてやり遂げるけど、抜けている部分もあったりして、そのギャップが魅力的だし、楽しんでもらえるかな、と思います」


自分よりも若い演者と共演することが増えてきたと思うが、現場ではどのようにコミュニケーションをとっているのだろう。


「日本は、雑誌やテレビでも名前と一緒に年齢が書いてあったりするけど、そういう年齢を重視する文化にはあまり慣れなくていいかな、と思っていて。だって、みんなプロとして現場に集まっているから。だから僕は10歳の子役の子にだって、基本は敬語で話します。もちろん、フレンドシップな意味で崩すことはあっても」


ルールを踏まえながらも、独自のスタイルを貫くところこそ、ディーンさんの魅力であり、まさに大人の男。今後のさらなる成熟を見つめていきたい。


「ネクストレベルを目指して前に進んで、もっと新しいことにチャレンジしていきたい。この世にはまだ知らないこと、経験してないことのほうが多いから、隠れギアをたくさん見つけて、大人の階段を上り続けたいです。もし、ストロークが欲しければ、時にはバックギアを使ってためて伸び代を確保してから突破したり(笑)。臨機応変にギアを入れ替えられる、大人の男になりたいですね」


1980年8月19日生まれ。台湾で活躍後、日本で活動開始。連続テレビ小説『あさが来た』で五代友厚を演じ“五代様ブーム”を巻き起こす。現在、『今からあなたを脅迫します』(日本テレビ系)に出演中。

スーツスタイル/ジャケット¥49,000 パンツ¥20,000 ネクタイ¥10,000(以上Calvin Klein Platinum/オンワード樫山 お客様相談室 TEL:03・5476・5811) シャツ 参考商品 シューズはスタイリスト私物 シャツスタイル/シャツ¥46,000 パンツ¥59,000(共にエトロ/エトロ ジャパン TEL:03・3406・2655) ベルトはスタイリスト私物


※『anan』2017年11月15日号より。写真・みなもと忠之 スタイリスト・カワダ イソン(impannatore) ヘア&メイク・しぶやまさこ(vitamins) インタビュー、文・若山あや *みなもとは本来の字はさんずいに首


(by anan編集部)

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