「観光」と「学習」ができる大人の修学旅行の行き先は「神戸」が正解
修学旅行を覚えていますか? ほぼ初めての「友達だけで行動する・泊まる」旅というのを差し引いても、修学旅行は多くの方にとって印象に残る旅だと思うんです。その理由は、「初めてのことに触れる」=「学ぶ機会が多い」、その結果「印象に残る」のではないでしょうか。ならば、学ぶ機会が多い旅は充足感が得られるのでは……? 旅の充足感を増すべく、“学び”をキーワードにした大人の修学旅行に出かけました。行き先は神戸です(写真は神戸ポートタワー)。
旅程1:名所巡り ~眺望・美食からミュージアムまで~
修学旅行といえば、観光名所は抑えたいところ。神戸のシンボルともいえる「神戸ポートタワー」には眺望だけではない魅力があります。
楽しみ1 展望デッキ
神戸港のランドマークとして1963年に誕生した神戸ポートタワーは、約2半年の大規模改修工事を経て、2024年4月にリニューアルオープンしました。その際に新設されたのが、360度ガラス張りの屋上デッキ。神戸港から六甲山まで神戸をぐるりと足元まで見渡せます。
ちなみに屋上デッキに行くためには、まずはチケットの購入を。日時指定があり、1階のチケット売り場では時間枠に空きがある場合のみ当日券が販売されます。週末ともなると混雑しているので、せっかく行ったのにチケットが売り切れで入れない! なんてことを避けるために早めにチケットを抑えましょう。チケットを入手したら、低層フロア2階からエレベーターで展望フロア5階へ。そこからさらに階段を上るとたどり着きます。わりと急な階段のみです。
夜も素晴らしく、そしてスリリングさが増します。
楽しみ2 食事
入場チケットがなくても入れる低層フロアの1~4階には、兵庫や神戸の名物や地場産業から生まれたプロダクツが並ぶショップや飲食店などがあります。なかでもおすすめは、3階のレストランカフェ。店内が“ポートタワーレッド”ともいえる赤で統一されていて、全席窓を向いたつくり。ゆっくりとランチが楽しめます。私が選んだのは、神戸ポークのお料理。しっとりやわらかで、ハーブバターのコクで満足感があります。淡路玉ねぎを使ったスープも食べ応えがあり、兵庫にまつわる食材に触れて旅気分が盛り上がります。
楽しみ3 ミュージアム
展望タワーとは、眺望を楽しみ、お土産を買って帰るものだと思っていました。神戸ポートタワーはそこにミュージアムという楽しみが加わります。展望4階にある“光のミュージアム”「Brilliance Museum[ブリリアンス ミュージアム]」は、写真や動画撮影OKの体験型ミュージアム。触ったり、動いたりすることでアートが反応するインタラクティブアートや鮮やかなネオンアートが展示されていて、展望フロアのチケットを購入すると入場できます(展望フロアから下ってくる途中にあります)。フォトスポットのようなネオンアートや、モノクロのイラストを触ると色がつく作品、壁に触れるとそこから映像(花火)が広がる作品など時間を忘れて楽しめます。
旅程2:学習 ~「経験と言葉の贈り物」がコンセプトの神戸学校へ~
神戸学校は、株式会社フェリシモが1995年の阪神淡路大震災をきっかけにスタートしたメッセージライブ(講演会)です。「崩壊した建造物の修復はできないわたしたちにも、人々の心の復興につながるようなことならできるかもしれない」との考えから、「経験と言葉の贈り物」をコンセプトに、1997年4月にスタート。毎月1回の開催を続け、登壇したゲストは現在までに320名以上にものぼるそう。ジャンルを問わない多彩なゲストの話は人々の興味を引き、参加者はいまや5万5,000人以上。今では会場のほか、オンラインでも参加できるのが人気を集めています。
私は、元競泳五輪代表選手の千葉すずさんが登壇する会に参加しました。千葉さんといえば、オリンピックを終えたあとのインタビューで「日本はメダルにこだわり過ぎ」「メダルが欲しいなら自分でやればいい」と発言して世間を賑わせた印象だったのですが、その理由は、過酷な練習を乗り越えて参加したオリンピックの結果に満足していたにも関わらず、メダルに届かなかったことですべて「残念」と言われたことだったそう。「私は残念と思っていないのに、まるで思っているみたいに決めつけられたから、思っていたことを言ったまで」とあっけらかんと話される様は、少女のよう。そう言い切れるほど実際に結果を残していましたし、努力を重ねたご自身の力に満足されていたのだなと思いました。
ただ、当時かなりのバッシングを受けて、アメリカへ。そこで、日本では練習は「しなきゃいけなかったもの」だったのに対して、現地では「練習するもしないも自分次第」だったために、自分で泳ぎたい!と思うくらい冷静になり、やがて成績も上がっていったそうです。この行動力と、正しいと思ったことを貫く真面目さと素直さ、才能もさることながら努力をいとわない気力と体力、最後にはすべて笑い飛ばす器の大きさと豪快さはとても真似できるものではありませんが、自分の思いに正直に生きることや、「好き」を出発点にした原動力は強いことを教えてくれました。なにより、千葉さんってまるで太陽みたいな人で、お話を聞くだけで、元気をもらえる人って本当にいるのだな、と驚きました。
修学旅行を終えて
神戸ポートタワーを満喫して、神戸学校で学び、夜の神戸ポートタワーへ、というとても狭いエリアの旅でしたが、だからこそ忙しすぎず充実した時間でした。大人の修学旅行は、「どこに行くか」よりも「そこでなにを得られるか」が重要。すぐ実践で生かせられる技術的なものを学ぶ旅もいいですが、今回の私にとっての神戸学校での千葉すずさんのお話のように、そこでの出会いや気付き、刺激こそが大人の修学旅行、最大のお土産です。