越野弘之さんに聞く、秋に訪れたい昭和レトロなドライブインの魅力

2019年09月12日 13時00分

おでかけ 旅色プラス



7月に発売された書籍『懐かしの昭和ドライブイン』(グラフィック社)。ページをめくるたびに出会うのは、昭和の雰囲気が存分に残る全国の“ドライバーの憩いの場”の数々です。レトロ? それとも一周まわって新しい? そんな昭和なドライブインの魅力を、著者であるミュージシャン・YouTuberの越野弘之さんに語っていただきました。

Text:緒方麻希子、Photo:川上博司(インタビュー)、越野弘之(ドライブイン写真)




基本的には、食堂とかレストランを想像すればいいと思います




――まずは、ドライブインの定義を教えてください。

ドライブインは、一般道の国道や幹線道路を中心に、どちらかというと繁華街から離れた道路沿いにある飲食店です。実際には遊園地みたいだったり、売店みたいな所も含まれるんですけど、基本的にドライブインって言ったら、食堂とかレストランみたいなものを想像していいと思います。

昭和40年代ぐらいからトラックや乗用車が増えて、都市と都市の移動が鉄道から車に変わったことで、休憩や食事をする場所が必要になって生まれたという背景があります。






▲北海道にある「ドライブイン路傍」(北海道旭川市東山2821-3)
バイパス開通のため道の先のトンネルは廃道となっているが、この店のために旧道は残されているそう



子どもの頃からなくなっていくものや古いものに敏感でした






▲『懐かしの昭和ドライブイン』著者の越野弘之さん



――越野さんは昭和レトロ自販機の本も出していますが、ドライブインに興味を持ったきっかけは?

基本的に古いものが好きなんです。子どもの頃から鉄道が好きで。鉄道の趣味って、なくなっていくもの、古いものを追いかけているんですね。写真を撮ったり、乗りに行ったりがスタイルのひとつにあるんですけど、子どもの頃からなくなっていくものや古いものに敏感だったんです。旅も好きで、そのなかでレトロ自販機があるお店に行くようになりました。そうしたら、ドライブインにレトロ自販機を置いてあることが結構多かったのが、興味を持ったきっかけです。






▲ドライブイン内に並ぶレトロ自販機。うどん、ハンバーガー、トーストの自販機は“御三家”と呼ばれる


調べてみると、古くて魅力的なお店がいっぱいあったんですよね。僕個人が定義する「昭和ドライブイン」は、建物が昭和の時代につくられていたり、店内が全く改装されてないような、昭和っぽい雰囲気を感じる所。残っているのはせいぜい200店程度なので、それくらいなら全部回れるんじゃないかと、全国を回ってきました。日本は4、5周しています。

――本を読むと、「昭和ドライブイン」といっても個性がさまざまだと感じました。

その時代ごとの流行りがお店に残っているんですよね。例えば昭和40年代でも前半と後半で流行は違いますし、50年代も前半と後半とで流行が変わる。だから、「あ、ここは40年代前半の雰囲気だな」という、その年代ごとの雰囲気がそこにある。それが時間の流れとともに、お店の個性として残っているんです。

そういうお店に行くとその時代に行ったかのような、タイムスリップしたような感覚になる。それが「昭和ドライブイン」巡りの楽しみかなと思います。






▲ゴジラ松井のグッズ、アンモナイト、まねき猫などが並ぶ「ドライブイン路傍」の店内


――面白いですね! ほかにはどんな魅力がありますか。

僕がドライブインを探す材料のひとつに、外観を見て入ってみたいかどうか、というのがあります。看板が昭和当時のままとか。そういうデザインをかわいいと思う人やレトロなものが好きな人は、昭和の看板や建物からも雰囲気を感じられて楽しいと思います。






▲懐かしいフォントと色使いの「長沢ガーデン」(山口県山口市)の看板


そういう興味から行ってみたいドライブインを見つけたら、そこから旅が始まるんじゃないかな。観光ついでにドライブインに立ち寄るのも面白いですけど、「このドライブインに行ってみたい」と思う所を見つけて、その周りを観光する。ドライブインを旅の目的地にするのも、旅の方法として面白いと思います。

――ドライブインを訪れることで昭和の時代へと旅ができるんですね。

そうですね。お店自体が改装されてなくて古いこともありますが、例えばもともと赤いイスだったものが、長年日焼けしてピンク色になっているとか、今の時代には絶対ないような懐かしいデザインのテーブルがあるとか。狙ってレトロ風に作ったものと、本当に時代が流れてレトロになっていったものでは、味わいが全然違います。






▲ワンカップ酒の瓶を再利用した「ドライブイン路傍」のコップ




――旅といえば、やっぱり食も気になります。

ドライブインを巡ってきて、料理がはずれたことがほとんどないんですね。お店の大半は個人店で、ご飯はほぼ手づくり。味噌汁の味噌が自家製とか、こだわりを持つお店が多いですね。それに、北海道ならジンギスカン定食が出てくるなど、地域毎の名物料理もあります。チェーン店とは違い、そこに行かないとその味は食べられないというお店が多いと思います。






▲「ドライブイン路傍」のジンギスカン定食。お盆も味わい深い



勇気を持って店主や女将さんに話しかけてほしいです




――ドライブイン巡りから感じたことはありますか。

僕が「こういうお店が好きで東京から来たんです」って話しかけると、話を聞かせてほしいとお願いする前に、向こうから色々話してくれるんですね。チェーン店に食べに行くのに比べると、人の人情とかやさしさに触れる機会がドライブインは本当に多いです。

例えば、常連の大型トラックの運転手さんは、「家には帰りたくないけど、ここには来たくなるよね」って話していました。何日も長距離を運転して、もうひとつの我が家のようにドライブインで女将さんと会話する。帰り際は女将さんが運転手さんにお土産を持たせている。そういうのを見ると、ドライブインはやさしさがあるなって、すごく感じます。






――ドライブインをもっと楽しむためのポイントを教えてください。

ドライブインは海岸線近くにあるような観光地型もありますが、やっぱり行くなら、本に書いたような観光地型ではない所をおすすめします。そして、勇気を持って店主や女将さんに話しかけてほしいです。そうしたら、忙しい時は難しいでしょうけど、時間があれば何十年分もの思いが込められた素晴らしい話が聞けるんじゃないかと。そういう出会いは、すごく素敵だなと思います。



【越野さん厳選、この秋に行きたい昭和ドライブイン3選】






①仙岩峠の茶屋/秋田県仙北市




50余年続く老舗。切り立った崖の上にあるので、景色がきれいです。店内の展望席から紅葉と、眼下に走る秋田新幹線を眺めながら、名物のおでんをいただくのは最高だと思います。おすすめは「おでん定食」で、甘い出汁の染みた大根やちくわ、さつま揚げなどのたくさんの具がゴロッと入っています。秋田名物・いぶりがっこも自家製のもの。田沢湖からも近いです。






▲展望席からは秋田新幹線が通過する様子を見られ、鉄道マニアにもおすすめ






▲大根、ちくわ、昆布など50年分の味が染みた「おでん定食」

◆仙岩峠の茶屋
住所:秋田県仙北市田沢湖生保内近藤沢13-1
営業時間:8:45~17:30
定休日:水曜日



②茂木ドライブイン/群馬県下仁田町






長屋風の木造の渋い建物が特徴で、その後ろには崖が切り立っています。ここのウリは、まさかの200円で食べ放題になる「みそおでん」。自家製こんにゃくを、自家製味噌につけていただきます。行く途中も山道なので、紅葉シーズンが楽しみです。






▲自家栽培のこんにゃく粉でつくられた、大きな自家製こんにゃく


◆茂木ドライブイン
住所:群馬県甘楽郡下仁田町南野牧6901
営業時間:10:00~16:30
定休日:木曜日



③長沢ガーデン/山口県山口市






長沢池の畔にある、日本最大級のドライブイン。レストラン、レトロ自販機、温泉、旅館が揃っています。おすすめは、レトロ自販機で買える「うどん」。昭和感満載の食品サンプルが並ぶレストランのメニューも豊富です。角ばった建物や看板のフォントも昭和のトレンドだったデザインそのままで、その時代がそのままそこにある「昭和のテーマパーク」のようです。






▲食品サンプルがずらりと並ぶ






▲レトロ自販機のうどんは、関西風のダシが人気


◆長沢ガーデン
住所:山口県山口市鋳銭司2296 長沢ガーデン内
営業時間:9:00~23:00
定休日:無休
※自販機コーナーは24時間






◆越野弘之(こしの・ひろゆき)
ミュージシャン、YouTuber(昭和スポット研究所kossy)。幼少の頃から好きなものは、鉄道と昭和の街並み。2011年からは、レトロ自販機とドライブインを巡る全国の旅を始める。著書に『昭和レトロ自販機大百科』『レトロ自販機マニアック』(共に洋泉社)がある。



『懐かしの昭和ドライブイン』






越野弘之/著
1,728円/グラフィック社



ただ食べるだけでは終わらない、言葉と心を交わせるのが昭和ドライブインの魅力。旅の途中に寄る場所だと思い込みがちですが、それでは勿体ないですね。ドライブインを目的地にする旅には、思いがけない出会いがたくさん待っていそうです!

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