神戸の「いりえのほとり」でひとめぼれしたロシアの民芸雑貨

国内にいながら、外国旅行気分が味わえる、神戸随一の観光地・北野異人館街。明治時代に外国人が住んでいた邸宅16 棟を保存・公開しているエキゾチックなこの街へ取材でよく行くのですが、そこで見つけたわたしのとっておき異国雑貨を紹介します!
私は普段、キャラクターなどいわゆる“かわいいもの”ってそんなに好きじゃないのですが、取材後にお店に舞い戻ってまで買ってしまったもの…今も仕事の机上で私を見守ってくれる「かわいい子たち」について語らせてください…!
いりえのほとりはロシア雑貨が勢揃いする、北野の有名店
「いりえのほとり」は2003年の開業以来、北野の雑貨店巡りでは外せないロシア雑貨の専門店。JR三宮駅から北の山側へ徒歩13分、異人館街からすぐの異人館通りにあります。店先の大きなマトリョーシカ(木彫りの入れ子人形 )が目印で、こぢんまりとした店内には、マトリョーシカを中心に、華やかな柄の食器や白樺の小箱など、店主の牛塚いづみさんがロシアに通って直接仕入れた雑貨が数多く並びます。
マトリョーシカってこんなに種類があるの⁉
まず何といっても、店内で一番目を引くのがマトリョーシカ。こんなにいろんな種類があるとは、今まで知りませんでした。同じデザインの女の子の人形がだんだん小さくなるタイプと、人と動物などまったく違うものが入れ子になるタイプがあるようです。女の子の人形は、おめめぱっちりの白人風だったり、どこか和風だったり、顔つきもさまざま。
棚の引き出しにもこんなにいっぱい!ぜひ開けて見せてもらって下さい。
目が青い白人風はこちら。まつげもばっちりです。雪深い景色は、ロシアの厳しくも美しい冬を
表しているのでしょうか…
※価格は同じピースでもサイズ、色付けで違います。2018年6月現在の最低価格は、3ピース1500円~、5ピース1350円~、10ピース1万円~
洋と和の丁度中間ぐらいの顔つきの子たちもいます。どこか日本のこけしを感じさせて、ホッと落ち着く顔ですね。
ちなみに頭に巻くプラトークと、柄物の服の組み合わせは、ソビエト時代まで女性たちの間でよく着られたもので、現在も郊外に行けばタイムスリップしたようなおばあちゃんに会えるそうです。そう聞くと、マトリョーシカをきっかけに、ロシアに行きたくなっちゃいます。
入れ子の中身がまったく違うタイプもおもしろい!お母さん、お父さんと、飼い猫でしょうか。みんな「ミルクポット」を持っています。お父さんが一番大きい、「ハニーポット」バージョンもあります。ミルクとハチミツは、ロシアの生活では欠かせないものなのだそう。
元は日本のこけし⁉知られざるロシア雑貨の歴史
実はマトリョーシカの元祖は、19世紀末に箱根からロシアへ、ロシア人によって持ち込まれた入れ子式の七福神のこけし「福禄寿」だといわれています。それがロシアのろくろ職人と農民画家によって、よりロシアらしい民芸品へと生まれ変わりました。農家の愛らしい女の子をモチーフにし、「マトリョーシカ」の名も当時最もポピュラーだった女の子の名前「マトリョーナ」の愛称形だといわれています。1900年のパリ万博で注目を集め、一気に知名度が高まったそうです。
写真のマトリョーシカは、1890年代当初のマトリョーシカをモデルにした復刻版。柄物のプラトークとエプロンをつけ、鶏やカゴ、小さな家族を抱いてて、何だかその素朴さがたまりません…
「いりえのほとり」店主の牛塚さんは、ロシア文化の伝道者!
ロシアの詩人であるプーシキンの物語詩を、タチャーナ・マーヴリナが幻想的な絵で表した絵本『いりえのほとり』。店主の牛塚いづみさんは、幼少期、この絵本に魅了されたことがきっかけでロシアを訪れました。
最初は、おとぎの国に現れそうな赤い鳥が描かれた陶磁器のロモノーソフにハマり、そこからマトリョーシカやへベレスタとよばれる白樺のアイテムなど、手作りされた多彩な民芸品のとりこになっていきます。
牛塚さんは年に5回以上、約20年かけてロシアを訪れていますが、1回につき約2~3週間、一つの村にじっくり滞在するスタイル。「私はかなり辺鄙な地域まで行くので、モスクアについてからが遠いんですよー」と牛塚さん。滞在中は、ほぼ工房で実際の作業を習っていることが多いのだとか。
ロシアは約185の民族がそれぞれ固有の文化を持ち、生活のなかから生み出された民芸品は、村ごとにまったく違います。その土地ならではの名産品や植物が絵付けされることも多いそうです。
牛塚さんはお店に置きたいものを作ってもらうのではなく、あくまでも村の伝統や個性を大切にする方針。現地で自らが体験した「その村固有の文化」を、神戸のお店に持ち帰っているのです。
写真はマトリョーシカの絵付けが手作業で行われているところ。顔は制作者に似ることが多いそう…!
こちらは牛塚さん(左)が現地の方に絵付けを習っているところ。
いりえのほとりで、日本にいながらロシア旅行気分♪に浸りましょう
ロシアの絵本『いりえのほとり』は、「ウルカモーリヤ…(いりえのほとりに…)」で始まるおとぎ話。そんなおとぎ話の世界への入口となるように、と名付けられた「いりえのほとり」は、観光地のおみやげ店を超えて、ロシアの民芸文化をちょっと深く伝えてくれるお店。
「『ロシアってマトリョーシカとウォッカのほかに何があるの?』という方ほど、訪れて欲しい」と牛塚さん。
初めて見るロシア雑貨にワクワクし、お店の人の話で現地を想像し、気が付くと連れて帰りたい「お気に入り」の子が…。そして、いつしかその人形が作られた村を訪ねることができたら…。思わずそんな想いを巡らせてしまう、豊かなひとときが過ごせるお店です。
ロシア雑貨 いりえのほとり
【ろしあざっか いりえのほとり】
営業時間:11:00~17:00(土・日曜、祝日は10時30分~18時)
定休日:月曜(祝日の場合は営業)
住所:兵庫県神戸市中央区山本通2-9-15
Web:http://irie-hotori.com/index.html
おまけPHOTO
私が連れ帰った子たちがこちら(3ピース1500円)。「カラバイ」という丸く焼いたパンと塩を持っています。ロシアでは玄関先で客人をお迎えする古くからの習慣があり、客人は玄関に入る前にカラバイを一つまみちぎって、塩を付けて食べます。おもてなしと身を清める意味があるそう。下に「MOCKBA(モスクワ)」とありますが、これは…
裏には、モスクワのスパスカヤ塔とウスペキンスキー大聖堂が描かれています。このマトリョーシカは「モスクワ」をテーマに作られていたんですね。
ロシアの人気絵本でアニメにもなった、チェブラーシカのグッズも揃います
ベレスタとよばれる白樺細工は、このお店で初めて知りました。殺菌作用があり、ロシアでは「白樺の森は手術室より清潔だ」といわれるそう。写真はブローチ1200円。バングルやバレッタ、ミラーなどもあります
植物や鳥を刺繍したキッチン雑貨は、家族や友達へのおみやげにしても喜ばれそうです
関連記事 こんな記事も読まれています
あなたへのおすすめ