「自由な結婚」が生んだ「不自由さ」とは

2019年10月16日 17時10分

結婚 恋愛 マイナビウーマン

結婚したいのに、いい相手と出会えない。

そんな不満を抱えている婚活女子は多いのではないでしょうか。

厚労省「第15回出生動向基本調査」によれば、結婚意思のある25~34歳未婚女性が「いまだ独身にとどまっている理由」の1位が、まさにこの「適当な相手にまだめぐり会わない」で、過半数の51.2%を占めます。同様に25~34歳未婚男性も同じ理由が45.3%でトップです。

男女ともに、結婚したいのにできないのは「相手がいない」という理由を挙げているのです。

現在の結婚の9割は「恋愛結婚」によるものです。恋愛に関する社会的な制限や縛りなどない自由恋愛が可能なはずです。それにも関わらず、結婚どころか恋愛すら不自由を感じる人が多いのではないでしょうか?

■「お見合い結婚」が日本の皆婚時代を作ってきた

かつての日本の皆婚時代を支えていたのは、そういう意味では“不自由”な「お見合い結婚」でした。

統計資料が残っている範囲でいえば、戦前の1935年には結婚の7割が「お見合い結婚」で、「恋愛結婚」はわずか13%程度です。それ以前の大正、明治時代はもっと「お見合い結婚」比率は高かったのではないかと想像できます。

お見合い結婚と恋愛結婚の推移

そうした皆婚を支えた「お見合い結婚」は、戦後からどんどん減少し、1965年頃には、遂に、「恋愛結婚」に比率で逆転されました。

そして、最新調査の2015年時点では、「お見合い結婚」は5%台に激減、結婚全体の9割が「恋愛結婚」となっています。

5%といっても、この中には、結婚相談所きっかけによる結婚も含みますので、伝統的なお見合い形式での結婚は、もはや4%程度しかありません。

■結婚した夫婦の知り合ったきっかけ推移

結婚した夫婦の知りあったきっかけを細かく分類すると以下の通りです。

結婚した夫婦の知りあったきっかけ推移

◇お見合い

上述したとおり、かつて一番の主流であった「お見合い」は減少の一途をたどりました。

◇職場や仕事で知り合った

お見合いに代わって1980年以降に「知り合ったきっかけ」の1位に輝いたのは、「職場や仕事で知り合った」というものです。1990年にはその比率は4割を超えていますが、最近は下降気味です。

◇友人・兄弟などの紹介

「職場や仕事」の代わりに、大きく上昇しているのは「友人・兄弟などの紹介」によるもので、2015年には3割に達しました。合コンなどもここに含まれるでしょう。

◇婚活系アプリ

最近、婚活系のアプリなどを活用した出会いも増えており、それによる成婚も珍しくはないようですが、統計自体が2015年までの実績ですので、それはまだ数字として表れていません。とはいえ、まだ全体に占める割合は10%に満たないと推計されます。

■「お見合い」に続いて「職場結婚」が台頭

かつて結婚の王道だったお見合い結婚を押しのけて、1980年代以降婚姻数でトップを維持し続けているのは、職場の出会いによる結婚です。

アラサー婚活女子の両親世代にあたる、今の50代半ば以上の既婚者は体験していることと思いますが、当時職場というものは、ある種お見合いに代わる「社会的な結婚お膳立てシステム」のひとつでした。

◇結婚したら専業主婦になるのが一般的だった

企業側は、自社の男性社員に自社の女性社員とのマッチングを促進し、女性社員に対しては「寿退社」という花道を用意して送り出すという慣習的なものがありました。つまり、結婚して専業主婦になるということです。

もちろん、これは、決して会社の強制ではなく、社会の風潮として、当時のサラリーマン世帯の妻は専業主婦となることが当たり前だとされていたからです。

◇企業側にとっても好都合な「職場結婚→寿退社」

企業側にも思惑がありました。若いうちに社員同士の結婚を促進させることは、夫には仕事へのモチベーションを喚起させる意味合いもあったでしょうし、妻に対しては、退職してもなお会社の一員として夫をプライベートでサポートしてほしいという目論見もあったでしょう。

「寿退社」という形で、結婚した女性社員の人員が順次入れ替わることは、企業にとっても、結婚したい女性にとっても好都合で、当時、結婚する将来の旦那を見つけるためだけに就職する女性を「腰掛けOL」と呼んでいたくらいです。いい悪いは別として、それが当時の“普通”でもありました。

◇当時の環境や福利厚生も「職場結婚」を後押し

支援体制も整っていました。まだ給料の低かった若年社員夫婦向けには、安い家賃で入れる借り上げ社宅制度もあり、退職した妻も、社宅という共同体の中では元社員の妻たちと付き合っていくわけです。

企業の福利厚生として、当時は、社員総出の運動会や泊りがけの社員慰安旅行は当たり前に用意されていて、そうしたイベントによってマッチングが促進されたことは言うまでもありません。

当時の職場というのは、公私含めて面倒を見る「擬似家族的コミュニティ」だったともいえます。

職場結婚は、厳密には、お見合い結婚とは違うと分類されますが、社会的なお膳立てがあったという意味では同じです。恋愛に受け身な男たちをけしかけたのは、「早く結婚しろ」という上司の圧力であり、勝手に誰かと結び付けたがるお節介おばさんの存在も大きかったでしょう。

付き合いはじめたら、周囲が「もうすぐ結婚だよね」という逃げられない空気を作り出していたこともあります。

■職場結婚の減少理由は「セクハラ問題の顕在化」

ところが、その結婚を促進していた職場結婚は、今や大きく減少しています。

比率では最大値40%から32%へと8ポイントしか落ちていないように見えますが、忘れてはいけないのは、そもそも婚姻数自体が激減しているという事実です。

実数ベースで見てみると、かつて年間30万組もあった職場結婚は、2015年には21万組と10万組も減少しています。

職場結婚が減りはじめたひとつの要因として、セクハラ問題の顕在化があります。日本における最初のセクハラ訴訟の判決が出たのが1992年のことです。

企業側としても「セクハラ防止」を唱える必要があり、今までのようなあからさまなお膳立てはできなくなりました。

この連載でも以前にも書きましたが(「結婚願望がない男性が増えている」がウソな理由)、男性の7割はもともと告白できない受け身な人間です。そうした男性たちはリスクも嫌いなもの。

そんな男性たちが、セクハラを気にしてますます職場での行動が抑制されます。女性を食事に誘うことすら避けはじめたともいえるでしょう。

■結婚が減ったのは「社会的お膳立て」が消失したから

職場結婚の減少とは逆にその頃一時的に増えたのが「友人の紹介」というきっかけです。1980年代から10%ほど増えました。

しかし、それも全体を押し上げるほどのパワーはありませんでした。今ではこれも減少基調にあります。

「友人の紹介」自体は増えているかもしれませんが、それがなかなか結婚まで到達しないというのが本当のところでしょう。

日本の歴史上、もっとも婚姻数が多かったのは、1972年の年間約110万組です。この婚姻数が、その直後の第二次ベビーブームを牽引しました。

しかし、それが、2015年には63万5千組まで激減します(最新の2018年の婚姻件数実績は 59万組にまで減少していますが、本記事においては出生動向基本調査と合わせるため2015年実績を使用します)。

その差分は、46万組です。実は、お見合い結婚と職場結婚を足した数の婚姻数も、1970年代前半の68万組から2015年には22万組へと減少しました。そのマイナス分は46万組です。

お見合いと職場結婚を合算した婚姻数のマイナス分と総婚姻数のマイナス分は46万組で完全に一致します。

つまり、結婚が減ったのは、これら2つのきっかけの減少分だったのです。

■自由な結婚が不自由を生む現在

社会的なお膳立てがなくても、能動的に相手を見つけ、アプローチできる恋愛強者はいます。しかし、それは所詮全体の3割に過ぎません。そもそも受け身の男性が7割もいる中、職場での出会いには期待できない、友人の紹介だけではその先に進まない。

不自由なお見合いから、自由恋愛による結婚の入り口が開かれたことは、「結婚をする」というマッチングだけに関していうと、むしろヤブヘビだったのかもしれません。

夏目漱石の有名な言葉があります。

吾人は自由を欲して自由を得た。自由を得た結果、不自由を感じて困っている。

婚活女子たちも同じ気持ちを味わってはいないでしょうか。

(荒川和久)

※写真はイメージです

マイナビウーマン

2019年10月16日 17時10分

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