実はバッチリ...クズ男が意識系高い女子と「相性がいい」理由
文:三松真由美 イラスト:犬養ヒロ
【レスなひとびと】vol. 36
芽依(29歳)向上心レス彼氏とは別れたほうがいいかどうか問題
小さい頃から絵が得意な芽依は、中堅の建築事務所で働いている。いつかユニバーサルデザインの建物を作りたい、いやまだ建築はおそれおおい、洗面所のシンクでもいい、物置のドアでもいい、自分が手がけた製品が世の人のためになれば、とハイレベルの目標を掲げて生きている!
建築の資格のみならずDTPエキスパートだの、照明コンサルタントだの資格も取り、やる気マンマンの日々。
西麻布のバーに行ったのがまずかった。職場の先輩がユニークな螺旋階段のあるダイニングがあるから見に行こうと誘ってくれたのだ。先輩たちと3人で軽く飲みながら、建築談義をして帰った。
「あっ! ノート忘れた」
芽依はiPadメモ派だが、夜遊びする日は軽いノートを持ち歩く。気になるデザインがあれば書き留める。先輩の教えもメモメモ。
翌日、ノートを取りに行く。対応してくれた店……これが運命の出会いと言わずしてなんと言う。体育会系しょうゆ顔。短く切りそろえた清潔ヘア。声がいい。男らしい低くて太い声。
「お忘れ物、こちらですね。MEIさん」
「え? なんでわたしの名前」
「表紙にMEI♪って大きく書いてあります。中身は気になるけど見ていませんから(ニッコリ)」
ドンピシャタイプ。ストライク。
落ちた。恋に。仕事ひと筋7年目。逃してなるものか。芽依は全力攻撃で交際に発展させた。
名前はノリ。同じ年で、しゃれた店の、アルバイト店員。飽きっぽいので、半年ごとに店を変える。飲食系8割。ガテン系2割のペース。金欠の時は夜中の工事現場に出かける。
「ノリ、なんか資格取ったら? 調理師とかワインエキスパートとかどう? 飲食の仕事好きよね」
「芽依ちゃん、ぼく、そういうのいい。今のままの自分が好き。いろいろな場所で働いて、広い世界が見れるしね。おしゃれバー、焼鳥屋、展望レストラン、楽しいじゃないか」
「う、うん。でも将来どうする? 保険とか年金とか」
「なんとかなるって。僕、健康だし、年取ってもバイトできるし」
低音ボイスでドヤ顔でのたまうが、ピンとこない。だが、そのままカーペットの上に押し倒されて胸をモギュっと揉まれると、もうどうでもいい。「私が将来食わせる思考」になってしまうのだ。
意識高い系芽依と、今の僕が好き男。はたして結婚できるのか。
芽依さんカップル、うまくいく可能性は大きいです。まったく違うタイプの男女。想像してみてください。意識高い系二人が一緒にいると、ライバル視しますよ。仕事では負けたくない、先に昇給してやる、知識が少なくて馬鹿にされるのは嫌だの競争脳。テレビの東大クイズ王を観ているときですらガチで戦う。
私はセックスレス相談をメインにしていますが、女性のほうが役職が上になったり、年収が上がったカップルはかなりの割合でセックスレスに突入。男性のプライドは池に張る薄氷のようなものだと肝に銘じてください。
これが、まったく違う世界で生きている二人だと競争よりは補い合いに変わります。自分の欠落を、相手が補完する。芽依さんの仕事が忙しくて家事ができないとノリくんがしてくれる。芽依さんが仕事ストレスで頭の中で火が燃えているとノリくんがキスして沈めてくれるとか。役割分担できて、認め合えば万事丸く収まります。
自分の役割をわかっていないとダメですよ。ノリくんが金は稼がない、家事もしない、セックスもしない、借金してバーを開店するとか言い出したら終わるので、そこはコントロールするのが意識高い系女性の腕の見せ所なのです。
「向上心、やる気、モチベーション、目標設定、夢は叶う!! という言葉が好きなら、違う分野でそれを成し遂げそうな相手を探すとよし。同じステージにいるとセックスレスになるぞ」
三松 真由美
恋人・夫婦仲相談所所長・コラムニスト。バブル期直後にhanakoママと呼ばれる主婦の大規模ネットワークを構築。その後主婦マーケティング会社を経営。主婦モニター4万名を抱え、マーケティング・商品開発・主婦向けサイト運営に携わる。現在は夫婦仲、恋仲に悩む未婚既婚女性会員1万3千名を集め、「ニッポンの夫婦仲・結婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。「セックスレス」「理想の結婚」「ED」のテーマを幅広く考察し、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。講演・テレビ出演多数。日本性科学会会員。ED診療ガイドライン作成委員。20代若者サークルも運営し、若い世代の恋とセックス観にも造詣が深い。