「ひとりが楽~!」は危険...「恋愛願望レスで枯れていく」女性の特徴6つ
文:三松真由美 イラスト:犬養ヒロ
【レスなひとびと】vol. 2
千帆(29歳) モテてはいるが恋愛願望レス
スーパー銭湯のフロントで働いている千帆は、沖縄ルーツの父親の影響で野性味溢れる美女顔。彫りが深く、大きな瞳、意思が強そうな濃い眉。華奢な肩からスラリと伸びた長い腕。メイクやネイルには無関心。ボサボサヘアをしていても友達の舞香に「千帆、エアリーウルフにしたの? 似合ってるよ」と、良いほうにとられてしまうお得な外見だ。
モテ期は小学校以来ずっと継続中。
それなのに、ああ、それなのに。
千帆には本気で好きになった男がいない。
23歳で初めて付き合った相手はいるものの、押し切られた形での男女交際。キスあり、おさわりあり、SEXなし。SEXを拒んだせいで、彼はほかの女のところに行ってしまった。とくに悲しくはなかった。
以来、休みの日は従兄弟のナオトと立呑みしたり、たまに女子友の舞香と会う程度。遊び相手がいないときは部屋に引きこもってゲームざんまい。ナオトも舞香も千帆が彼氏を作らないことを心配している。
仕事中にサラリーマン風成人男子から声をかけられることは毎週のことだ。
「館内着のセット、どこで借りられますか。あのう、何時に仕事あがりますか。よかったら……」とさりげない誘いが頻発。声をかけられるのに慣れてしまってロボット対応しかできなくなっている。
「あちらの販売機でチケット買ってください。夜勤なので朝までここにいます」……。
焼き鳥屋で中ジョッキをグイグイ落とし込む千帆を見つめてナオトがつぶやく。
「なあ、なんでそんなサッパリした生活してんだ?」
千帆はナオトをギョロっとした目で睨んで唇についた泡を吹き飛ばす。
「私の兄ちゃん見てると、ざけんじゃねえよって思うの。とっかえひっかえ自分の部屋に女子連れ込んでさ。3か月単位で彼女チェンジよ。ふられた彼女が私が家に帰るとこ待ち構えててさ、あなたのお兄さんに伝えて、最低ゲス野郎! って言われたことあるんだよ」
ナオトは串を8の字に振り回して大きく頷く。
「つまりハヤト兄ちゃんを見て、まっとうな恋ができないってわけかあ」
「あんなゲス兄貴に次から次に寄ってくる女子たちの気が知れない。まるで親父のクローンだもん」
千帆の父親は兄弟が小さい頃から何度か浮気騒動を起こし、母は乱れまくっていた。千帆は父と兄を見ながらいつも思っている。結局男って、何度も心変わりするもんなんだ。永遠の愛なんてない。
ただ、スーパー銭湯のロビーで仲がよいファミリーを見ると「楽しそうだな。子どももかわいいな」とチラっと思うこともある。だが、子どもが泣きわめいたり、妻が夫をバカにしたような態度を取っているシーンを見ると「やっぱ結婚ってめんどくさそ」と我に返る。
恋愛ですら遠ざけたいのに、その先にある結婚など千帆にとっては暗黒の闇にしか思えない。舞香からも「千帆、こんだけもててるのにもったいないよね」と突っつかれている。
このまま、冷めた目で生きていると、彼氏もできないし結婚もしないだろう。小さい頃から千帆をかわいがっているナオトは、おひとりさまになりそうな千帆に合いそうな男を見つけたいとずっと思っている。
そんな千帆も三十路の足音が聞こえる今、「ずっと実家に住んで、風呂屋で一生働くってのが私の人生か」と疑問をいだき始めた。
毎週レディスデイの水曜に風呂にやってくる80代のおばあちゃんが、「足が立たなくなったらもうここに来れなくなる。ひとり暮らしは辛いねえ」とぼやくのを聞いてから。80歳になってもこのフロントに立っている自分の姿が想像できないのだった。
恋愛願望レスの特徴6つ
6割以上の女性が「彼氏いない」という昨今。恋したいけれど”マッタクモテナイ”という群を除いて、なにゆえ恋愛しようとしないか。
1. 過去の恋愛でこっぴどく傷ついた経験あり
恋するのが怖い。とか、その時の彼氏のこと好きすぎてそれを超えるひとが出てこない。とか。
2. 恋する相手に去っていかれたら悲しいと先読みしすぎ
自己肯定力が低いと言いますか、幸せになるという自信がない。「どうせダメ」と刷り込まれている。傷つくことが怖い不安症。
3. めんどうくさがり
セックスレスの理由で1位は「めんどくさい」です。セックスですらめんどうくさがる現代人。恋愛はさらにめんどうくさいもの。LINEまめにチェックして、メイクやネイルに気を遣い、メルカリで服を大量買い、おしゃれなお店を検索……果てしなくめんどうくさい。
4. 忙しすぎる
仕事に生きがいを感じている!と断言できる女性は、優先順位の1位は仕事。2位は仕事。3位は仕事。4位は恋愛。「そんなことない」と言われても、そうです。そこに気づいていないひと多数。
5. 寂しがらない性格
おひとりさまでも楽しめる体質。雨の日に一人でお部屋にいてもちゃんちゃら平気。牛丼屋のひとり飯もOK。LINEもSNSも好きではない。人とつながらずとも人生楽しめる。
6. ねじれた恋愛観が胸の奥でくすぶっている
親や近い友人のノーマルではない恋愛模様を子どもの頃から見続けた。恋をして幸せになった人が周りに見当たらない。千帆さんはこの要素が濃い。
千帆さんは父さんと兄さんが「女を泣かせる」モテ親族のため、クソっと思っています。男なんかにうつつをぬかすもんか、とストッパーがかかっている。「女封印!」オーラも漂います。神様が千帆さんに美しい容姿を与えたため、男たちがざわつくことも悪影響。
まだアラサーの千帆さんには遠い将来の自分も姿が想像できません。実家暮らしで親も健在。生活に不自由はなく、職場もそこそこ楽しい。不足しているもの、レスなものがない。
今は。
男性客に声をかけられシカトしていますが、まぶたが下がり、ほうれい線が目立つようなるとモテ期は終了します。(いや美熟女のままモテているかもしれないが)。その頃に心に秋風が吹き抜け、「誰かのぬくもりが欲しい」と感じる可能性は否定できません。恋愛感情レスな千帆さんが、恋したいと思える男性の出現を期待します。ナオトさんが鍵を握っている気がします。紹介してもらうとか、一緒に男飲み会に参加するとか、策はあります。いい男出現時に、気づかない場合もありますので、受け入れ体制は作っておくことをすすめました。
「断るな。まずは1回デートしろ!」
三松 真由美
恋人・夫婦仲相談所所長・コラムニスト。バブル期直後にhanakoママと呼ばれる主婦の大規模ネットワークを構築。その後主婦マーケティング会社を経営。主婦モニター4万名を抱え、マーケティング・商品開発・主婦向けサイト運営に携わる。現在は夫婦仲、恋仲に悩む未婚既婚女性会員1万3千名を集め、「ニッポンの夫婦仲・結婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。「セックスレス」「理想の結婚」「ED」のテーマを幅広く考察し、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。講演・テレビ出演多数。日本性科学会会員。ED診療ガイドライン作成委員。20代若者サークルも運営し、若い世代の恋とSEX観にも造詣が深い。
Information
参考
第15回出生動向基本調査