タワマンのママ友に夫の不倫をバラされ、娘にも被害... 唯一の友だちの“裏の顔”「自分より上のフロアに住んでいたから」
憧れだったタワーマンションに、大手企業務めの夫と娘と3人で暮らしていた専業主婦の主人公。誰もがうらやむ幸せな生活を過ごしていたと思っていた最中に、夫の不倫を発見。唯一心を開いていたママ友に相談したら、いつの間にかマンション中の噂になってしまっていた。漫画『タワマンのママ友に夫の不倫をバラされた』(KADOKAWA刊)で描かれるのは、タワマンという独特の空間で巻き起こるこじれたママ友の交友関係。子どもまで巻き込まれた主人公が考える本当の幸せとは何か。原案を手がけた平井仁美さんに話を聞いた。
【漫画】「旦那に不満はない」これって“マウンティング”? タワマン独特の“ママ友”コミュニティ
■夫が不倫、「ママ友にバレたら…」“円満”を演じた専業主婦の悲劇
――同作は、「探偵紹介アドバイザー」の平井さんに寄せられた奈菜さんの実録エピソードです。“誰にもバレないように”夫の不倫を調査したいと相談されたそうですね。
【平井仁美さん】はい。そもそも、不倫問題を大ごとにしないというのは、賢明な判断です。配偶者の悪口付きで「不倫されている」と周囲に吹聴して、二次トラブルに発展することもありますので。それに、自分の弱みを見せたくないという気持ちは当たり前の心理だと思います。だけど奈菜さんの場合は、過度に“ママ友の目”を気にしていたような気がします。傷ついているはずの自分の気持ちはさておきで、「ママ友にバレたら…」という焦りのほうが強い印象でした。
――タワマンのメンバーで構成されたママ友グループがある中で、奈菜さんは幸せに振舞いながらも、一方で夫の不倫の悩みをママ友の舞さんにだけ相談します。なぜ奈菜さんは、ママ友に心を開けなかったと思いますか。
【平井さん】やはり「見栄」ではないでしょうか。理想の家庭を築いている自分を演じていた手前、悲惨な実情を打ち明けるのは、相当な勇気がいることだと思います。“ママ友”の人間関係は、「政治」に近い要素もあると感じています。本当に心を許せる友人と出会えることもあるのかもしれませんが、基本的には生活圏内で心地よく暮らすための“外交手段”ではないでしょうか。ほかの相談者からも、「自分にママ友がいないと子どもが仲間外れになってしまう」と、嫌々ランチ会に参加しているというようなお話を聞いたりします。
――「ママ友」の価値観はそれぞれなので、ほどよい距離感が難しそうです。
【平井さん】同じマンションに住んでいるから、同じ幼稚園に通っているから、というだけで、自分の弱みを見せたり、腹を割って話したりする友人になるのも難しいですよね。また、「子どもを守るため、ある程度うまく付き合っていく」と割り切れれば楽なのかもしれませんが、やはり人間である限り、嫉妬や見栄、または友情のようなものに翻弄されてしまうのも致し方無いもの。ママ友に限らず、狭いコミュニティでの人間関係って本当に難しいです。
■娘にも嫌がらせの被害が…他人の目ばかりを気にしていた妻の変化
――舞さんは奈菜さんにとって、夫の不倫についての不安や愚痴を聞いてくれる唯一の“友人”のようでした。けれど不倫の情報はすべて「ママ友グループ」に筒抜けで、幸せだと嘘をついていたことで無視されたり陰口を叩かれたりもします。さらにその影響は、娘にまで及んでしまいました。
【平井さん】他人の目ばかりを気にしていた奈菜さんでしたが、娘さんに影響が出たことをきっかけに、スイッチが切り替わったように感じました。娘さんや奈菜さんにとって、何がいい選択かを”母として”考えはじめ、日に日に強くなっていく奈菜さんに、私まで勇気づけられていました。まさに「母は強し」です。
――舞さんが奈菜さんを嫌う理由は、自分より上のフロアに住んでいて「家庭円満アピール」していたからとのことでした。タワマンという独特な場所で起きたトラブルです。
【平井さん】ある相談者が「自分より上の階に住んでいる住民と一緒にエレベーターに乗りたくない」と言っていたのが印象的です。本人は当たり前のようにさらりと話していたのですが、「タワマン」の経験がない私は少し驚いたことを覚えています。マウンティング合戦のように、少しピリついた空気が漂う瞬間が実際にあるみたいですね…。このような少しのことが火種となって、引っ越さない限り解決しないようなご近所トラブルにまで発展してしまうと、非常に厄介な問題です。
――探偵紹介アドバイザーの元には、いろんな相談が寄せられるんですね。
【平井さん】不倫調査が8割を占めます。過去には、「自宅の隣に住む女性が旦那の不倫相手だった」なんて調査もありました。この場合、当事者同士の関係が切れたとしても、元不倫相手が隣に住んでいるなんて、気持ちのいいものではないですよね。探偵紹介アドバイザーといっても、実際は探偵を紹介することよりも、相談者の真意を一緒に導き出すことが仕事だと思っています。専門的なアドバイスももちろんありますが、それはある意味当たり前のこと。一番重要なのは、相談者自身が何を考え、何を望んでいるのか、一緒に整理していくことだと思っています。