夫の急死、失意のなか発覚した息子の発達障害 「“お母さんは何もしなくていい”の言葉に救われた」

2022年05月30日 07時00分

ライフスタイル eltha



『旦那が突然死んだので発達障害児を一人で育てることになりました』(電子書籍版)より(C)せせらぎ/竹書房


 5年前の夫の急死後、女手ひとつでADHD&ASDの発達障害を持つ8歳の長男・けーくんと、現在6歳になる次男・しーちゃんを育ててきたせせらぎさん。シングルマザーとして2児の子育ての葛藤や孤独、喜びを描いた『旦那が突然死んだので発達障害児を一人で育てることになりました』(竹書房)は、長男が発達障害と診断された時、安堵するせせらぎさんの率直な想いが描かれたところからスタートする。この想いの真意とは? 話を聞いた。


【漫画】「仲間がいないのではなく、“いなくなった”」ADHD長男の深刻な悩みに親子で号泣、仲を取り持とうと行動するが、ママ友からの返答は?


■夫の死を悲しむ間もなく片親で二児の子育て「自分の大変さが一般的な大変なのか判断できなかった」


――本の反響はいかがですか?


【せせらぎ】レビューは見ないようにしているので、反響はあまり分からないんです(笑)。子育てに関してはそれぞれの思いもあるし、私は正しき母親の素敵な姿とはちょっとズレていると思うので。


 ただ、同じような子を育てている方が、少しでも楽になってくれたなら、それはすごく嬉しいです。発達障害のことって、お医者さんや福祉の方と、プロの方でもいろいろな考え方があるんです。でも、少し知識のある方は「こうした方がいい」とアドバイスをするのですが、深く関わったことのある方は、「お母さんは何もしなくていい。お母さんが楽でいることが何より一番だ」ってことに辿り着くんです。


――本にも、「私は育てなきゃを手放した」という言葉がありました。


【せせらぎ】子どもには幸せになって欲しいし、周りの目もあるから、ずっと私が教えてやらせなきゃと思っていたんです。父親がいないので私しか言う人がいないし、今後のけーくんのために、できないことは直さなければいけないと。でも、けーくんも私の言うことを分かってはいるんだけど、抑えがきかない。注意するたびに、「またできなかった、僕がダメなんだ」と負のスパイラルに。それで、良くない現状を打破するために考え得る全てのことをやろう、療育の塾や病院、区の相談所など色々なところに行ったんです。


――そこで言われたのが、「お母さんは何もしなくていい」だったんですね。


【せせらぎ】スクールカウンセラーさんの言葉でした。衝撃と同時に救われました。けーくんの習いごとの先生にも、「ひとり親なんだから、飴かムチだったら、絶対に飴になった方がいい」と言われて。お母さんが怒っている横で、お父さんが「大丈夫だよ」って言ってあげる役割分担ができないから、両方持てないなら飴がいい。その言葉で、かなり楽になりました。私は、色々な先生に密告すればいいだけなので(笑)。


――最初に、「けーくんが発達障害と診断されて安心した」という言葉も印象的でした。


【せせらぎ】旦那が死んでしまって大変だし、子育て自体も大変だし、自分の大変さがいわゆる一般的な大変なのかも判断できなかったんです。保育園やお医者さんに「言葉が遅いんです」って相談しても、「まだ小さいから大丈夫」と言われて。それでもすごく大変で、いっぱいいっぱいだったから、発達障害児専門のお医者さんに「あー、この子は大変だ」って言われた時、すごく安心しました。よかった、プロの方から見ても、大変な子だったんだって。私は大変だったんだって。


――それまでの大変さや頑張りを認めてもらえた気がした?


【せせらぎ】はい。小学校に行くにも、診断があるのとないのでは受け取ってもらい方もだいぶ違う。診断を受けたことで、色々な面で進みが早いのも助かりました。


■「休み時間に遊ぶ子がいなくなっちゃった」天真爛漫で邪気のない長男の変化に「すごくいい兆候」


――長男のけーくんはどんなお子さんですか?


【せせらぎ】天真爛漫で、無邪気。すごく素敵なことなんですけど、邪気がなくて、純粋な気持ちのままに動くから悪気もゼロなんです。だから注意も難しいし、自分の好きなことをやれる良さと、やってしまう悪さがあります。


――小学生になってからはいかがですか?


【せせらぎ】1年生の終わりぐらいに、「休み時間に遊ぶ子がいなくなっちゃった」と言われたことがありました。でも先生に相談したら、「けーくんはこの1年、休み時間はいつも一人でしたよ」って言われて(笑)。たぶん、話をする子はいるし、嫌われているわけじゃないけど、特定の友だちとの関係が築けないことに気が付いたんでしょうね。今まで自分だけだったのが、周りが見え始めて、さみしい、仲よくなりたい、と思えたのはすごくいい兆候だと思っています。


――日頃接していても、けーくんが変わってきた実感はありますか?


【せせらぎ】それこそ同じ小1の終わりごろ、会話のキャッチボールができるようになった時は感動しました。それまでは投げたボールは帰って来ないのが普通だったのですが、「今日の夕飯を何にしようか」って誰でもしているような何気ない会話のやり取りが、きちんと意思疎通してできたんです。できないことは多いけど、ずっとできないままじゃなくて、時間がかかるだけなんですよね。


――日頃、子育てで心掛けていることはありますか?


【せせらぎ】なるべくホメるようにしています。たくさん注意する分、「ほら、できると思った」とか、「やればできるじゃん!」とか。プラス、「お母さんはおっちょこちょいでできないからがんばって」も言います。できないことがあるのはダメじゃない、お母さんだってできないよってことも、伝えるようにしています。


 できるようになるものは、どれだけ時間がかかろうがいつかできるようになる、逆にできないものに関しては特性だからできない。だから、今ここで何かをできるようにさせる必要はないなと。いずれできるようになるから、そのまま成長を待つようにしています。『待つ』が一番忍耐を必要とするんですけどね…。


■にぃにが大好きな健常児の弟・しーちゃんが抱える葛藤「まだ優しい気持ちでは受け止められないことも」


――弟のしーちゃんは、どんなお子さんですか?


【せせらぎ】けーくんがお腹に忘れてきたものを全て吸収してきたんじゃないかっていうぐらい、しっかりしています。周りが見えて、話が聞けて、想像力も汲み取りも言葉も達者で…。ただ、邪気があります(笑)。


――お兄ちゃんのけーくんとの関係は?


【せせらぎ】しーちゃんは物事を分かっているので、お母さんも僕もやめてって言っているのに、なんでけーくんがやめられないのかが理解できないみたいです。「もうお兄ちゃん捨ててきて」って言われたこともあります。けーくんは邪気がないから同じことをやり続ける、ということは理解しているけど、まだ優しい気持ちでは受け止められない感じですね。でも、けーくんがいないと、「にぃにいないと遊ぶ人がいなくてさみしいな」って。根本は大好きなんだと思います。


――今後、しーちゃんに望むことはありますか?


【せせらぎ】しーちゃんは敏感な分、たぶん大変な思春期を迎えるだろうなと思っています。でも、お兄ちゃんといることで、こういう子もいるんだって経験をできるから「こういう時はこうする」とか、うまく立ち回れるようになるらしいので、そうなってくれたらと思います。


■目標は「いつかお母さんを辞めること」成長していく我が子への想い


――せせらぎさんがシングルマザーの難しさを感じるのは、どんな時ですか?


【せせらぎ】分担作業ができない時です。もう一人いたら見ていてもらっている間にできることも、シングルマザーだと全部一人でやらないといけない。圧倒的に手が足りないです(笑)。例えば子供と出かけてヘトヘトで帰ってきても、ごはんを作るのも片づけるのも、寝かしつけるのも自分。私が動かないと何も進まないので。


――亡くなった旦那様への想いに変化はありましたか?


【せせらぎ】まー君が亡くなってもうすぐ5年たちますけど、いまだに毎日彼のことは思い出します。「辛いな」って思った時にも必ず心に浮かぶし、いてくれたらよかったのにとも思う。でも、ある時、子どもたちと3人でラーメンを食べている時に、きっとその未来はなかったんだなと思ったんです。彼と一緒に子どもを育てる未来はどんな選択肢を取ってきたとしてもなくて、今が必然的になった一番ベストな状態なんだろうなと思えた。彼らがお父さんがいない家に生まれ育ったのも運命だし、それによって作られた人格も必然だったんだと。全肯定できたし、ある種、ちゃんとあきらめられたのかもしれないです。


――せせらぎさん自身の、今後の目標はありますか?


【せせらぎ】目標は、いつかお母さんを辞めることですかね。今はまだ「やりなさい」とか「やらないで」って教えることが多いけど、ベースは対等がいいと思うから。前に、もし再婚するとして向こうに連れ子がいるとしたら、私はお母さんになれなくていいから、その子にとって一番信頼できる大人になろうと思ったんです。それと同じで、我が子に対しても教えて導く人じゃなくて、単純に一番信頼できる大人として側にいられたらと思っています。


――最後に、子どもたちへのメッセージはありますか?


【せせらぎ】こうなってほしいっていう思いはたくさんあるけれど、一番は自分を好きでいてほしい。それだけかな。人生を幸せに生きていくために必要なことは、それ一本だと思うから。私は今自分のことが好きだし、自分のことを信じていて。彼らにも、ずっと自分を好きでいて欲しいと願っています。


 ダメなところを助け合って、良いところを見つけ合って、どんな困難にも笑って生きていければと思っています。


(取材・文/辻内史佳)

eltha

2022年05月30日 07時00分

ライフスタイル eltha

BIGLOBE Beauty公式SNSはこちら!

最新記事はここでチェック!

タグ一覧

ヘアアレンジ スタイリング 時短アレンジ術 簡単アレンジ術 前髪 人気ヘアカラー まとめ髪 ショートヘア ボブ ミディアムヘア ロングヘア ストレートヘア パーマヘア ポニーテール お団子ヘア ヘアアイロン活用 ヘアケア シャンプー 髪のお悩み 流行ヘア モテヘア カジュアルヘア オフィスヘア ヘアアクセサリー バレッタ ターバン ヘアピン・ヘアゴム 小顔ヘア セルフネイル ジェルネイル 上品ネイル ピンクネイル カジュアルコーデ シンプルコーデ ナチュラルコーデ プチプラコーデ フェミニンコーデ コンサバコーデ ガーリーコーデ モテコーデ ベーシック ゆったりコーデ ママコーデ ストリートコーデ モードコーデ ギャル 結婚式コーデ ミリタリー モノトーンコーデ カラーコーデ スポーツMIXコーデ パーティスタイル ヘビロテ 着回し抜群 トップス アウター カーディガン シャツ ワンピース ビスチェ パーカー フーディー コート トレンチコート カラージャケット スカート フレアスカート タイトスカート ミニスカート デニムスカート ガウチョパンツ ワイドパンツ ワイドデニム スキニーパンツ バギーパンツ 靴下 タイツ スニーカー サンダル ミュール ニューバランス ブーツ ショートブーツ パンプス 帽子 ニット帽 ベレー帽 スカーフ グッズ メガネ ベルト 腕時計 ピアス トレンドアイテム バッグ ファーバッグ クラッチバッグ リュック ショルダーバッグ チェック柄 グレンチェック 刺繍 ファー ロゴもの コーデュロイ デニム 色気のある格好 花柄 ボーダー柄 レイヤード パンツスタイル ドレススタイル ニット スウェット anan表紙 雑誌付録 ユニクロ GU しまむら ZARA メイク術 スキンケア クレンジング 化粧水 美容液 オールインワン 美白ケア 毛穴ケア 眉毛ケア コンシーラー ファンデーション マスカラ アイシャドウ リップ 乾燥対策 ムダ毛ケア バストケア ヒップアップ マッサージ エクササイズ ダイエット ヨガ 動画レシピ サラダ カフェ巡り スタバ ひとり旅 女子旅 パワースポット巡り 人気スポット 絶景スポット 絶品 お弁当 スイーツ パン 占い 心理テスト 結婚 浮気・不倫 モテテクニック スピリチュアル 恋愛お悩み 男性心理 デート 恋愛テクニック ドン引き行動 LINE体験談 ホンネ告白 胸キュン 片思い カップル話 婚活 倦怠期 ファッション恋愛術 プチプラ おしゃれマナー マネー お仕事 家事・育児 趣味 アプリ 癒し 大人女子 金運 ミュージック アニメ・漫画 アウトドア 清潔感 インスタ映え イメチェン パンチョとガバチョ ナイトブラ 脱毛 置き換えダイエット ケノン 痩身エステ

本サイトのニュースの見出しおよび記事内容、およびリンク先の記事内容は、 各記事提供社からの情報に基づくものでビッグローブの見解を表すものではありません。
ビッグローブは、本サイトの記事を含む内容についてその正確性を含め一切保証するものではありません。 本サイトのデータおよび記載内容のご利用は、全てお客様の責任において行ってください。
ビッグローブは、本サイトの記事を含む内容によってお客様やその他の第三者に生じた損害その他不利益については一切責任を負いません。