モデルボクサー・高野人母美、日本でのキャリアを捨て渡米「グローブ片手に世界を回りたい」

2018年11月22日 08時40分

ライフスタイル eltha


 高校卒業の2006年、モデルとしてデビューし、“9頭身美女”として活躍してきた高野人母美(ともみ)。2010年に初観戦したボクシングに魅せられ、3年後にライセンスを取得。モデル兼プロボクサーの“モデルボクサー”となった。美貌と計量時のド派手なパフォーマンスが話題を呼ぶなか、2015年には第2代東洋太平洋女子スーパーバンタム級の王者に。そんな実力と話題性を兼ね揃えた彼女が、昨年、日本ボクシングコミッション(以下、JBC)を突如引退し、単身渡米。その選択には、彼女らしい生き様があらわれていた。

恵まれてはいた、でもボクシング界にある古い慣例が窮屈だった


――2017年の年末に突然、JBCからの引退を発表されました。その後すぐに渡米し、現在ではアメリカ・ロスを拠点に活動されています。この選択には驚いたファンも多かったと思います。なぜ引退を決断なさったのですか?

【高野人母美】 所属していた協栄ジムと交わしていた契約期間は3年でした。私は更新にサインしなかった。恵まれた環境のジムにいて、専属のトレーナーがいて、何でもしてもらえる。ありがたい半面、ボクシング界にあるさまざまな古い慣例に窮屈さも感じていたんです。もっと自分らしく自由にボクシングがしたかった。契約期間満了は“新たな挑戦の時期”というシグナルではないか、と思い、ジムを辞めJBCを去る決断をしました。






――現在の拠点は、アメリカ・ロスとのこと。拠点と決めた理由は?

【高野人母美】 新しい道を模索しているなか、偶然知り合った方から、息子さんがロス在住のアマチュアボクサーだと聞いて、「これもご縁。私もロスに行こう」と。その4日後にはアメリカに渡っていました。ところが、向こうに着いたら、頼りにしていたその方と音信不通になってしまって…。

――渡米も音信不通も突然の展開ですね!

【高野人母美】 そうですね(笑)。仕方ないからハリウッドで一番有名なボクシングジムを調べて“アポなし”で行ってみました。「私、こういう人間なのですが、練習させてくれませんか?」と。そしたら、拍子抜けするくらい簡単に「OK」が出た。やっぱりアメリカは夢を追う人たちが世界中から集まる場所なのでしょうね。フィリピン人のトレーナーさんが、同じアジア人のよしみで「僕がみるよ」と言ってくれたので、今は彼の指導のもと練習に励んでいます。






⇒小原優花 「体重31kg。階段も上れないガリガリのギャルモデルだった」



世間のイメージとのギャップに苦しんだ日本プロ時代





――高野さんがJBCに所属されていたのは2013年〜2017年の5年間ですよね。試合前日の計量時、ウエディングドレスや白無垢を着用したり、アバターのコスプレをしたり、全身にタトゥ―ペインティングしてみたりと、インパクトのあるパフォーマンスをなさっていた姿が印象的です。

【高野人母美】 ボクシングはエンターテインメントだと思っているので、私が面白いことをやってニュースになれば女子ボクシングが盛り上がるんじゃないかと思っていました。「自分にしかできないことをやる」というのが、私のモットーなんです。タトゥ―は3時間、アバターのコスプレなんて5時間もかかったんです。減量してヘロヘロになっているから、本当に大変でした(笑)。



2017年末のボディ。現在はひと回り大きく、より強靭な肉体になったと話す。

2017年末のボディ。現在はひと回り大きく、より強靭な肉体になったと話す。



3時間かかったというタトゥーペインティング。トップレスも話題になった。

3時間かかったというタトゥーペインティング。トップレスも話題になった。





――JBCでの日々を振り返ってみて、一番辛かった出来事は?

【高野人母美】 2015年の11月に初めての世界戦に出場しました。東洋太平洋チャンピオンになった直後ということもあり、ファンの方にも期待していただいたんですが、KO負け。周囲からは、「人に夢を与える職業なんだから、『夢は世界チャンピオン』と言うべき」と助言されていたので、インタビューなどではそう答えていましたが、実力が追いついていませんでした。それは自分が一番わかっていたし、世の中が求める「高野人母美」像と、本当の自分のギャップに苦しんでいた時期だった気がします。







――高野さんといえば、2017年の5月に行われたカイ・ジョンソン選手とのリベンジマッチの直後、自転車事故に遭い、大ケガされたこともニュースになりましたね。

【高野人母美】 KO勝ちしてアドレナリンがあふれていたんでしょうね。猛スピードで坂道を下っていたら、自転車のチェーンが外れて体ごと飛ばされました。痛かった! 脚の骨を3本骨折していたんです。でも事故後、ボクシングに対するモチベーションが明らかに変わりました。もっと強くなりたい、もっと戦いたいと思うようになったんです。松葉杖をついてトレーニングしたり、上半身を鍛えたりとリハビリに励みました。この時の高みを目指す気持ちが、“JBC引退”につながったのかもしれません。

体脂肪8%で生理も止まった、それでも勝てる強い体が欲しい





――ボクシングをする上で、外国人と日本人の大きな違いはなんですか?

【高野人母美】 やっぱり体が違います。70キロの人とスパークリングすると打ち負けてしまうんです。日本では常に53キロで戦っていたから、アメリカに来た頃の私は、ガリガリのヒョロヒョロ。でも今は、食事やトレーニングがアメリカナイズしたせいか、日本にいた時と比べて10キロ増え、ずいぶん筋肉質になってきました。

――モデル体系ではなくなっている?

【高野人母美】 完璧にボクサーですね。今、CMではモデル業をやらせていただいているけれど、“洋服を見せる”というファッションショーや雑誌の撮影は無理だと思います。筋肉がありすぎる(笑)。

――でも、しなやかな筋肉ですごくかっこいいです!

【高野人母美】 ありがとうございます。体脂肪8%で生理も止まっているし、友人には「後ろから見たら男だよ」と言われちゃうけど。でも、私の仕事はボクシングなので、勝てる強い体づくりが永遠の課題です。






――現在、アメリカではどのような暮らしをなさっているのでしょうか?

【高野人母美】 当然ですが、食事や体調面の管理はすべて自力でやらねばなりません。キッチンがない一軒家を格安で借りて暮らしているので、電子レンジを使った料理がすっかり得意になりました。ちゃんとお米も炊けるんですよ。米もパンもトルティーヤも、なんでも食べます。日本では苦手で避けていましたが、早朝に10キロほどランニングするのが日課になりました。



クールなイメージと異なり、よく笑う高野。

クールなイメージと異なり、よく笑う高野。



大きな仕草で笑うのも印象的だ。

大きな仕草で笑うのも印象的だ。





グローブ片手に世界中をまわりたい、世界は196ヵ国もあるから





――すっかり海外暮らしになじんでらっしゃいますね。今後も拠点はアメリカのままですか?

【高野人母美】 そうですね、当面はアメリカにいると思います。ただ、世界には196ヵ国もあるから、どこに行ってもいいと思っています。グローブ片手に世界中をめぐりたいですね。自分から見ても「私の人生、面白いな」と思います。落ち込んで引きこもることなんて絶対ないし、そもそもあまり落ち込みません。辛いことがあっても気にしないですね。だって過去は変えられないけど、未来は選んでいけるんですから!

――最後に、今後の目標を教えてください。

【高野人母美】 今年5月、アメリカのボクシングライセンスを取得しました。ただし、ビザが取得できていないのでファイトマネーが発生する試合はできないのが現状です。弁護士さんに手続きを進めてもらっているので年内には取れると思います。来年1月5日には、アメリカ初めて試合をする予定です。やるからには絶対に勝ちたいですね。

長いスパンの目標としては、仲間やサポートしてくれる人たちと「チームともみ」をつくり、チーム一丸となって世界に挑戦したいです。もっといろんな経験を積んで、後輩たちにもアドバイスできるようになれたらいいなと思っています。そしていつの日か、そういうことを全部まとめて1冊の本にしたいです。

インタビュー・文/高倉優子 撮影/臼田洋一郎

高野人母美 instagram
高野人母美 オフィシャルサイト








PROFILE
高野人母美(たかの ともみ) プロボクサー、モデル。「9身頭のモデルボクサー」として人気を博す。協栄ジムに所属していた2015年、第2代東洋太平洋女子スーパーバンタム級の王者となる。2017年JBCを引退し、単身渡米。現在はアメリカ・ロスを拠点に、プロボクサーとして活動している。




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プロボクサー高野人母美(ともみ) 写真/本人提供




プロボクサー高野人母美(ともみ) 撮影/臼田洋一郎




プロボクサー高野人母美(ともみ) 撮影/臼田洋一郎



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