“新しい働き方”を実践する3組から学ぶ、いま求められるスキル&人材像

2022年01月07日 19時00分

ライフスタイル anan

テレワーク、パラレルワーカーなど、働き方の多様化が進む昨今。その背景や、そんな時代に求められるスキル&人材像とは? 実際に新しいワークスタイルを取り入れ、それを実践している3組に取材。働き方における今どきの心地よい関係の築き方を探ります。

新しい仕事スタイルを確立した3つのチームの働き方に密着!


コミュニケーションもフルリモート型にシフト。



“自分に合った働き方ができる社会の実現”をビジョンに、オンラインで、プロのキャリアカウンセラーに気軽に相談できる事業を展開する「ミートキャリア」代表の喜多村若菜さん。オフィスを持たず、キャリアサポーターだけでなく、運営メンバーが全国各地に在籍し、全スタッフがフルリモートで働いている。しかし起業当初は、フルリモートで事業を展開していこうとは思っていなかったと話す。


「ミートキャリアを立ち上げた背景に、“時間的な制約があっても、しっかりとやりがいのあるキャリアを築きながら働ける人が増えてほしい”という想いがありました。事業を展開していくにあたり、人材を募集したところ、本業を持っていたり、育児中など、時間的制約はあるけれど、その想いに共感しサポートしたいと応募してくださる方が多くいたんです。フルリモートにすれば、全国はもちろん、海外の優秀な人材ともつながることができるし、ビジョンの実現にも近づけると思い、今の形になりました。サービスを開始して2年以上経ちますが、立ち上げメンバーと対面で会ったのは、ウェブサイトに載せる写真を撮影した時の一度きり。まだ実際に会ったことがないメンバーもいます(笑)」


フルリモートで各々が業務をこなしていくことで、意思疎通や連携がおろそかになり、業務に支障をきたすことはないかと尋ねると、「全くない」と喜多村さんは笑う。


「コミュニケーションもフルリモート型にシフトチェンジすれば、全く問題ありません。オンライン上だとたわいもない会話や雑談ができないと思われがちですが、私たちの場合、チャットでつながることで、情報共有も雑談もすべて文字で発信しています。そのスタイルに慣れれば、チャットにすべての会話の履歴が残っているので、リアルタイムで参加できなかったメンバーが後からすべての流れを追うこともでき、情報をキャッチアップしやすい。情報の非対称性がなくなるという点は、対面よりオンラインの方が優れています」


また喜多村さんは、今の自分の状況やコンディション、考え事、モヤモヤしていることなど、小さなつぶやきを積極的にチャットで発信するように心がけている。


「そんな何気ないやり取りのなかで絆が生まれたり、問題解決のヒントや、新しいアイデアにつながることもあります。相手の顔が見えないからこそ、オンライン上でアウトプットして共有することができれば、フルリモートであっても深い信頼関係を構築することができると思います。どこにいても自分の能力を発揮でき、直接会わない関係であっても仲間たちとコミュニケーションを図りながら楽しく働ける。そんな会社が増えていくことを心から願っています」


フルリモートでつながる。



Web会議システム「Zoom」で頻繁にミーティングを行い、ビジネスチャット「Slack」で情報共有を習慣化。オンラインでのコミュニケーションをスムーズに行うことで、生産性もアップできる。


ミートキャリア その人が希望する働き方やキャリアをアドバイスする、オンラインキャリア相談サービス。10名の運営メンバーと、約70名のキャリアサポーターが、全国各地(一部海外)からフルリモートで参画。


喜多村若菜さん 代表取締役CEO。大阪府出身。神戸大学経済学部卒。在学中にシンガポールやNYの企業でインターンシップを経験。会社員を経て、25歳で起業。


個性と能力を活かしながらパラレルな働き方で輝く。



リノベと街づくりを手がける会社の事業部のひとつとして大石真理子さんが率いるのが、弁当&社食「アホウドリ」。大石さんが経営方針から従業員の採用まで任されていて、その人選が実にユニーク。


「別の仕事も持つパラレルワーカーを採用しています。全員同じ方向を向くと会社の成長にはなるけど、個人としてはのめり込みすぎると視野が狭くなりがち。昔はそれでよかったのかもしれませんが、今は一社がその人の人生の面倒を見る時代じゃない。会社に縛られずに自分のやりたいことはやるべきだと思うんです」(大石さん)


例えば、お弁当チームのメンバーとして欠かせない存在の古内珠樹さんは、アクセサリー作家の顔を持ち、中目黒にあるCGパースデザイン会社の社員食堂を任されている杉野牧子さんは、テキスタイルアーティストとして、二足のわらじを履いている。他のスタッフも然り、風通しも良好だそう。


「映画好きなスタッフは堂々と、『映画を観に行きたいから今日は早く上がりたい』って言えるし、もちろん快く送り出してもらえます。メンバーは20~50代と年齢層も幅広いですが、みんなと楽しく仕事ができて、ストレスは一切ありません。“私だけこんなにやっているのに”という意識が強い人はいないですね」(古内さん)


個人の活動が、新たな仕事を生むきっかけにも。


「アホウドリが依頼を受けたジャムのパッケージに、私がやっている草木染を施して、贈答用にしようというお話も出ていて、お互いにいい刺激が」(杉野さん)


パラレルワーカーであることでお互いへの尊重が生まれ、助け合いもできる。大石さん自身も、


「私が産休・育休に入ったらアホウドリは続けられないと、会社に言われたんです。私がいなくてもまわる体制を整えなくては、仕事が個人に偏るとサービスが終了してしまうことを痛感しました」


古内さんと杉野さんにサポートしてもらって切り抜けたそうだが、そこはやはり“お友達”ではない。


「メンバーは仕事をする同志だけど、利害関係があるのは悪いことじゃない」と言い切る、一見ドライな大石さんだが、根底にあるのは、女性の働く環境への想い。


「お弁当という形にしたのは、お客さんを待つのではなく、毎日必要な所へ届けたかったから。一般的に飲食業は、時給が低かったり、夜遅くまで営業しなきゃいけなかったりとハード。しかも女性は、結婚したり子供が生まれたら、退職しなければいけない状況になることも。だから、女性たちが働きやすい環境を整えたいと思っていて。うちでは基本、土日祝はお休みにして、時給も地域相場と比較して決めているんです。居心地のいい場所にしていきたいですね」


朝からお弁当作りに奮闘中!



ロケ弁でも大人気の定番、アホウドリ丸わっぱ弁当と牛肉のしぐれ煮弁当。各¥1,620。


アホウドリ 東京・要町のリノベーションした古民家で、お弁当のケータリングを営む。具だくさんで美しいお弁当は撮影現場で大人気となり、現在はご近所向けお弁当の店頭販売や、2つの食堂を運営する。


右・杉野牧子さん 社食担当。2019年3月から「アホウドリ」に参加。社員食堂担当者として、メニュー決めから調理まで担当。テキスタイルアーティストでもある。


中・大石真理子さん 代表。広告制作会社に勤務後、飲食業界に。『なんてんcafe』の店長を経て、料理チーム「アホウドリ」を立ち上げる。経営戦略や人事まで担う。


左・古内珠樹さん 代表代理。「アホウドリ」に勤務しながら、オリジナルブランド『mwezi』のタッセルアクセサリー作家として活動中。3人の子育てをする母。


ビジョンを共有することで、大きな夢の実現を目指す。



次世代リーダーが参加する世界最大の国際会議「One Young World(OYW)」の日本代表を務めたことで出会ったふたり。市川太一さんは日本、平原依文さんは海外と、異なる環境で教育を受けてきたが、これまでに経験したことを語り合う中で、お互いが同じ夢を持っていることを知る。


「僕が高校生の時、自分がしたいことや進むべき道を探りたかったのに、進路指導室に行ったら赤本しかないことに失望して。大事な時期に未来に向けた相談ができないことや、日本に根強く残っている偏差値教育に違和感を覚えたんです。その後、大学で留学を経験し、国籍、人種、年齢を問わず人々が集まる、境界線のない世界にこそ大きな学びがあるということに気づいたんです」(市川さん)


「私はカナダ留学中、高校卒業後の進路についてスピーチする授業で、友だちが『NPO団体を立ち上げたい』などさまざまな可能性を持ち、違う夢を語る姿を見て、大学進学1択と考えていた自分が恥ずかしくなって。一人一人が自分の“軸”を探求できる教育が、日本にも必要なのではと強く思うようになったんです」(平原さん)


ふたりのビジョンが一致したことで、“地球を1つの学校にする”をミッションに掲げる今の会社を立ち上げることになる。


「彼女と話していると生きてきた世界や場所も全く違うのに、価値観や考え方がすごく似ていて、言葉がどんどん重なっていく。反射鏡のような感覚。彼女というフィルターを通して、自分の凝り固まっていた考え方に気づかされ、すべきことがどんどんクリアになっていくんです」(市川さん)


「彼は自分の軸をしっかりと持ち、誰に対してもフラットに接することができる人。世界中のあらゆる境界線を溶かすことのできる逸材だと思います」(平原さん)


そんなふたりは、昨年6月に境界線のない世界を実現するプロジェクトの一環として、『WE HAVE A DREAM 201ヵ国202人の夢×SDGs』を出版。


「これは、世界のミレニアル世代、Z世代の若者たちが書き下ろした夢の本です。物語を通して、世界を学べる、まさに教科書。OYWに参加し、世界中のリーダーとつながった私たちだからこそ実現できたこと。この本を完成させるまでに喧嘩もたくさんしたけれど、ブレることのない大きなビジョンをふたりが持っているから、何があっても大丈夫と信じて進めていけたんだと思います」(平原さん)


「『WORLD ROAD』という社名には、世界とつながり人生の道が描ける社会にするという意味を込めています。僕らにも道があるように、自分らしい道を世界から描ける未来へ、教育を軸に歩み続けていきたいです」(市川さん)


SDGs実践のための情報を発信。



保険会社、動物園、時計メーカーなどさまざまな企業とタッグを組み、SDGsのワークショップやイベントを開催。


WORLD ROAD 教育を軸に事業を展開。社会貢献をビジネスにつなげるための、企業・自治体向けのコンサルティングと研修事業、教育機関に向けたカリキュラム作りや、子供たちにSDGsを伝える授業の提案を行う。


右・市川太一さん 共同代表。青山学院大学在学中に、OYWに参加。卒業後、エンターテインメント企業、スタートアップでの事業企画などの経験を経て、27歳で起業。


左・平原依文さん 小学2年生から単身、中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学。早稲田大学卒業後、ヘルスケア企業などを経て、26歳で同社を設立。


※『anan』2022年1月12日号より。写真・小笠原真紀 土佐麻理子 取材、文・鈴木恵美 岡井美絹子


(by anan編集部)

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