恋も仕事もうまくいく!...相手が心地よく感じる「話の聞き方」#11

2019年11月30日 18時40分

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口は災いの元とも言われますが、耳には「牛耳る」なんていうパワフルな言葉があります。「良い印象を持たれたい!」と思うなら、躍起になって話すことよりも、深く聞くほうが有効です。全身全霊で聞くことはディープリスニングやマインドフルリスニングとも呼ばれ、聞く瞑想だとも考えられています。そこで今回は、仕事やパートナーシップで相手の心をつかむ「聞き方」6つのポイントをお伝えします。

取材、文・土居彩 看板写真・Yumiko Sushitani


【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 11



誰だって自分の話を聞いてくれる人は、好き。


突然ですが黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)を読まれたことがありますか? 出だし一番で主人公トットちゃんはADHDぎみの“問題児”とされ、小学1年生で退学になってしまいます。そして転入先のトモエ学園の校長先生 小林宗作さんとの面接のシーン。小林校長はトットちゃんに「さあ、なんでも、先生に話してごらん」と言って、4時間ずっとトットちゃんの話に耳を傾け続けます。話し終えたトットちゃんは、生まれて初めて本当に好きな人に会った気がするのです。その理由は、



だって、生まれてから今日まで、こんなに長い時間、自分の話を聞いてくれた人は、いなかったんだもの。(この人となら、ずーっといっしょにいてもいい。)



「良い印象を持たれなくちゃ!」。そう思って私たちは、相手に何を話すべきかと一生懸命になるものです。面接だったら、有能な人材だと見なされなきゃいけないし、デートだったら魅力的だと好意を持ってもらわないとダメですからね。でもその結果、どうしようもないことを口走ってしまったと後悔することもありませんか? 私はしょっちゅうです。しゃべりすぎたと気づかなくても、次の誘いが無かったりしてね。


面接官は、聞く力をかなり見ている。



面接に関して、話すよりも聞くことの力を感じたエピソードが二つあります。ひとつ目は、新卒で就職したマガジンハウス。採用されたあとに人事担当者に「君はいつも隣の面接者の話を興味深そうに聞いていた。面接での上級テクニックなのかと思ったよ」と明かされました。当然そんなスキルは持ち合わせておらず、蓋を開けてみれば単に相手の能力に圧倒されて「中国語のバイリンガルなんだ、すごいなぁー!」と感心していただけなのでした。私には取り立てて自己アピールできるものはありませんでしたから。でもそれがかえって印象的だったようなのです。


アメリカでインターンに採用されたときも社長に「君を選んだのは、候補者の中で唯一話の腰を折らず最後まで真剣に聞いて、言葉を選びながら質問に答えたからだ。ほとんどの候補者は“自分はこれができる、アレができる”とアピールするばかりで、キチンとこっちの話を聞かないものだからね」と言われました。これに関しても種を明かすと、別に私に傾聴力があるわけではありません。ネイティブではないので最後まで聞かないと質問の意味がよくわからなかったためだし、深く考えて答えているように見えたのも、頭のなかで日本語を英語に翻訳するタイムラグがあっただけ。のちにそれを告白すると、社長に大爆笑されました。



ところで私はニューメキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターというところで暮らしていたことがあります。ウパヤではカウンシルという円陣を組んで座ってそれぞれ正直に話して、それをみんなが偏見を持たずに聞くという時間が定期的にありました。そのカウンシルで、相手の”聞く力”で完全に心をつかまれ、自分の行動が変わったことがあります。


当時私は禅修行に疑問を感じていました。仏教では”私たちはそもそも仏である”と言うけれど、じゃあなんで修行するんだと。そこでカウンシルで初対面であった僧院長のジョアン・ハリファックス老師に「どうしようもない自分を律するために早起きしてみんなのためにご飯を作って、一生懸命坐禅しています。そもそもぐうたらで気前が良いわけでもない私が仏であるなんて信じられませんよ!」とぶちまけたのです。第一印象としても、弟子としても最悪ですよね。でも偉い先生に気に入られたいという気持ち以上に、モヤモヤを晴らしたかったのです。


すべてを聞いて、相手の不安を包んで溶かす。


老師は、私の疑惑、不安、悲しみ、恐れ、恥、拒絶、期待などすべてを包み込むように、ただじっと見つめてきました。口もとは優しく微笑んで、目は温かい空気が伝わってくるような目尻を少し下げ、でもまっすぐな眼差しで。沈黙のなかで力強く見つめられた私は、時が止まったように感じました。20人の輪の中で老師と私にスポットライトが当たったような気分です。「彼女は、全身全霊で私とともに完全にいてくれている」。そう感じました。



老師は「美しい…。素晴らしい…」と言って、もっと修行しなさいとも、そんな考え方は未熟だと批判もしません。実はわたし自身自分のなかでダメ出ししていて、「人に指摘されたら嫌だな」と思っていた一面をあえてさらけ出したのですが、それを彼女は私の代わりに受け入れてくれたのです。「そういった至らなさを率直にわかち合おうとするのは、あなたの価値ですよ」と。アドバイスもないし、こうしなさいと命じる言葉も無い。だからこそしっかりと支えられていると実感した私は「老師のもとで頑張ろう」と新たな気持ちで修行に取り組めるようになったのです。


これはカウンセリングでも受容(アクセプタンス)という手法として取り入れられています。誰にもわかってもらえないと思っているクライエントの思いに寄り添うことで、クライエントは安心できる。そして自己探求を始め、やがては受け入れることが出来なかった自分の一面を自己受容(セルフ・アクセプタンス)できるように成長していくのです。



このように相手を癒してその成長を促す、全身全霊で傾聴することはディープ・リスニング(深く聞くこと)やマインドフル・リスニングと言われ、聞く瞑想だとも考えられています。アメリカではビジネスシーンやパートナーシップ、子育てにおいても相手の心をつかむ力があるとされて、たくさんのハウ・ツー本でも取り上げられています。その中で私が実際に効果を感じたポイントは6つあります。


ディープ・リスニング6つのポイント。



1. 相手が話しているときは遮ったり、中断しない。

2. 話の内容を深く理解することにすべての意識を向ける。そこでうわの空になったら、注意を向けなおす。

3. 「相手が話すための安全な場所を作るぞ」と話の内容がなんであれ、まず受け入れると決意する。

4. 価値判断を入れず、自分の考え、気持ち、過去の記憶などはいったん脇にのける。

5. 大切なのは全身全霊で聞くこと。相手にどう見られるかを意識して相槌を打ったりしない。真剣に聞けば工作をしなくても、自ずと相手にそれが伝わる。

6. 意見を求められた場合は、完全に理解できたら答える。そうでない場合は質問し、相手がうまく思いが伝わっていると感じられるまで確認する。


職場でも、苦手な取引先やどうしても緊張してしまう上司っていますよね。しかも自分は口下手で気の利いたことも言えない。そういうときは焦点を少し変えて、相手をよく知るための聞く瞑想の時間としてみませんか。過去のいざこざも一旦はまっさらにして、今ここ目の前の相手と向き合います。もちろん無理に人を喜ばせようとしたり、自分の気持ちをないがしろにする必要はありません。ただひたむきに耳を傾ける練習をするんです。


誰だってありのままの自分のことを受け入れてもらいたいという強い欲求があるもの。「この人はわかってくれる」と感じたら? トットちゃんが校長先生に感じたように、あの人にとってあなたは”本当に好きな人”になれるかもしれません。



土居彩


編集者、翻訳者。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にて、畏怖の念について研究するダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、13世紀の道元禅師を初めて英訳し欧米に伝えた禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)を翻訳中。恩人たちに支えられ続けながら、会社を辞めて渡米奮闘したドタバタな当時の様子を綴ったananweb連載『会社を辞めて、こうなった』も。


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