イケメンゲイ僧侶が結婚!...アメリカの禅修行者にLBGTQが意外といる理由 #3

2019年10月02日 20時10分

ライフスタイル anan

アメリカの禅センターで暮らしていた頃、“禅”と書かれた特注の作務衣を着こなすイケメンゲイのレジデントが居ました。彼はのちにパンセクシャル(全性愛)の女性と恋に落ち、僧侶の道を志すことに。二元性を超えた空(くう)の世界に触れたいと、アメリカで禅修行に勤しむ人たちにLGBT(性的少数者)の人々が少なくないことは自然なのかもしれません。言葉を生業にしていたというアイデンティティなんてものは完全に崩壊し、危うい英語で立ち回り続けた丸裸同然の筆者・土居彩がアメリカ修行中にジェンダーについて考えました。

取材、文・土居彩 看板写真・Yumiko Sushitani


【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 3



モテモテだったイケメン雲水のアール。


私がアメリカの禅センターで典座とともに料理を作りながら生活していたとき、アール(仮名)というイケメン・レジデントがいました。


アールの生まれはドイツ。イギリスの名門大学院を卒業し、ロンドンにアート関連の会社を起業した彼は美術に特化したコンサルティング業務を生業としていました。彼が渡米して禅センターで修行生活をしていたのは、禅仏教関係の古美術に魅せられたため。プラクティスしながらその世界に触れ、学びたいと考えたのです。


完璧なクイーンズ・イングリッシュを話し、ちょっとスパイシーな冗談を飛ばすアール。筋金入りのミニマリストな彼が持っている服といえば、「禅」と襟元に書かれた特注の黒い作務衣と着古されたコム・デ・ギャルソンのブラック・ジャケットのみ。只者ではないこだわりを見せ、キラキラ光る瞳にしなやかな肢体、くすんだ色の金髪には寝癖が……と、見た目もいいので当然モテます。


ところが、禅センターでとは恋愛はご法度。特に最初の4か月間は断固禁止で、レジデントとして認められたあかつきに渡される分厚い文書のかなりのページにも「恋愛沙汰NG」というお達しが念入りに書かれています。とはいってもアールのことをちょっといいなと思っていた女性は私が知っているだけでも何人かいて、彼女たちは恋破れては涙していました。


というのも、アールはゲイだったからです。



ゲイの彼がパンセクシャルの女性に恋をした。


このたびそんなアールが恋に落ちて結婚したのです。なんと相手は、女性! 美男美女で、就寝前には二人そろって小さな顔にウディ・アレンみたいな大きな丸メガネをかけ、笑っちゃうぐらいそっくり。


パートナーのティ(仮名)は、パンセクシャル。彼女の前の恋人は女性で、その前は男性。ティにとって性別というのは付属的なものに過ぎず、相手に惹かれるかどうかの条件にはならないのだそうです。


ちなみにバイセクシャルと混同されがちなパンセクシャルですが、バイセクシャルが「男性も女性も好き」とするのに対して、パンセクシャルは「相手の性別に囚われないで好き」となります。


異性愛者の私ではありますが、ニンフのような人間離れした透明感と底なしの明るさを持つティの魅力には、ちょっとクラッとくることも。アールが落ちたのもわかります。


そして僧侶になったアール。



とはいえ男性以外とお付き合いをしたことが無かったアール自身もビックリな展開です。当然ティ以外に女性経験ゼロな彼は「日々女性器の奥深さを探究中だけど、すごいんだねぇ! 僕らに娘ができたら、“アヤ”って名づけるつもりなんだ」、ですって。アメリカ人のティと結婚したアールは現在グリーンカードを申請中。ロンドンの会社も閉鎖し、出家してよりディープなお坊さん修行に勤めています。


神は男と女を作られた。


アメリカにおけるLGBT(性的少数者)の人たちが、「神は男と女を作られた」とする旧約聖書を基にした教えではなく、男と女という二元性や、「私」という個の概念を超越したところに真理があるとするブッダの教えを積極的に学ぼうとするのは自然なことなのかもしれません。


ところでアールのドラマティックな出来事はすべて、たった半年間で起こった話。当人を含めて誰も想像できないものでした。


つまり私たちは、自分はこういう人間だと、どこか決めているところがありますが、変わるんです、実際は。アールのように。


あらゆるものは変わるという般若心経の教え。


そういえば私たちが一緒に禅センターの朝課で唱えていた摩訶般若心経も、あらゆるものには自性がなく、変化を続けることが存在の本質だと説いていました。毎朝唱え続けることで、気づかないうちにその教えがアールや私にも浸潤したのでしょうか。


というのもアールほど極端な例ではありませんが、私もずいぶん変わりました。


料理しない女が典座と料理を作り続けたら…。


例えばアンアン編集者時代は素晴らしい料理家さんたちの料理ページの連載を担当しながら「私は料理をしない女」と豪語していました。太りたくなくて、食べることにもあまり興味がありませんでした。


ところが退職してからは何の縁か、アメリカの禅センターで毎日三食30〜100人の人たちの料理を作ることになり、否応なく食べることの重要さをヒシヒシと痛感することになりました。結果として、今では料理は大切な日課になりました。


先日も「食」とは「良い人」と書くと、接心でお世話になった福井県の天龍寺のご住職に教えていただき、日々それを実感しています。


©星覚

食べることを通じて、あらゆるものとの深いつながりを再認識し、さらには食べたものが3日もすれば、自分へと変化していく。そんな食の奥深さについて思うことは、また改めてこちらでお話したいと思います。


ほかにも中目黒に住んで、最新ファッション・ショーや化粧品の新作発表会にお邪魔させていただいていた頃には、自分が望んでアメリカで2年間もホームレス生活をするなんて想像すらできませんでしたし。


人は毎瞬変化するのです。食べたもの、取り入れた情報、出会った人、語り合った言葉、触れた土地……消費したり感じたもの全てがその人になっていきます。


トランス女性禅教師のカイトリオナ・リード。


さて1992年にティク・ナット・ハン師から禅仏教教師としての権限を授けられた、アメリカにおけるLGBT禅指導者のカイトリオナ・リードという人がいます。


カイトリオナは、南カリフォルニアにあるマンザニタ・ヴィレッジ・リトリート・センターを設立し、持続可能な環境作り、非暴力、社会正義を促進することを目的としたヴィッパサナー瞑想と禅のプラクティスを教えています。


今でこそ当たり前と言っても過言ではないLGBTの仏教家ですが、男性だった彼女がトランス女性禅教師という道を選んだ1996年はそうではありませんでした。


実際に弟子のひとりにも「あなたがトランス女性として生きることを選んだことにがっかりしました。だってあなたは私が出会った最も男性性と女性性が統合され、調和している男性だったからです」と言われたそうです。


カイトリオナの勇気ある選択を誇りに感じながら、その弟子の心も少しわかります。というのも男性僧院長と女性信者のスキャンダルで問題になった禅センターやスピリチュアル・コミュニティは、アメリカで数か所あるからです。


パワーとジェンダーがらみの問題は、たとえ精神修養の地だといっても、そこから完全に解放されてはいません。だからきっと私がレジデントとして暮らした禅センターでも、恋愛御法度という分厚い但し書きが渡されたのでしょう。


丸裸でもなおしがみつく「私」というレッテル。



日本で編集者だったなんて口が裂けてもいえない、訛りの強い英語に限られた語彙を擦り切れるまでリピートし続けてかろうじて意思の疎通がはかれる、丸裸同然の私っていったい何者なんだろう?


そんなふうに日々何者でもない自分と向き合わざるを得なかった毎日の中で、アールとティ、センターの休日に山を降りて一緒に5リズム・ダンスに行ったゲイのダブリュー(仮)と何か月も一緒に修行しながら生活したことは、丸裸同然でもなお、私が女性というカテゴリーに依然としてしがみついていることに気づかせてくれる体験でした。


ある日会話のなかで、当然のように「まぁ、私は異性愛者だから」と私が言ったとき、ティが「どうしてそう言い切れるの?」と興味深そうに、ちょっと悪戯めいて微笑みながらたずねてきました。


残念ながらそれに対する「今までそうだったし、これからも多分そうだから」という私の返答は、仏教の修行者としては全くクールではありませんでした。

公案だったら老師から落とされているでしょう。


だから私は、今日も坐っています。



土居彩


編集者。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を勤める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にて、畏怖の念について研究するダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、13世紀の道元禅師を初めて英訳し欧米に伝えた禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)を翻訳中。恩人たちに支えられ続けながら、会社を辞めて渡米奮闘したドタバタな当時の様子を綴ったananweb連載『会社を辞めて、こうなった』も。https://greenz.jp/author/doiaya/


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