すべてを受け入れる社会に…LGBT当事者がカミングアウトする理由とは|多様な性、LGBTの世界 #7

2017年12月27日 19時30分

ライフスタイル anan

2017年12月、「OUT IN JAPAN」というプロジェクトが広島で開催されました。このプロジェクトは、LGBTを始めとするセクシュアル・マイノリティの方々をフォトグラファーが撮影し、カミングアウトするというもの。カミングアウトをするか否かは個々人の自由ですし、タイミングもそれぞれ。OUT IN JAPANでは、カミングアウトしたいという人を優しく受け止め、応援できる社会作りを目指しています。初の広島開催でしたが、どのような様子だったかをレポートします。今の社会に必要なものが見えてくるはずです。

フォトグラファーはレスリー・キーさん!地方開催への熱い想い

【多様な性、LGBTの世界】vol. 7


2015年4月から始まっているOUT IN JAPANというプロジェクト。2020年までに1万人撮影という目標を掲げて、全国で撮影会を実施中です。東京を皮切りに、大阪・福岡・名古屋・仙台、札幌と各地で開催してきました。大都市が主でしたが、今回は広島という地方開催です。地方開催だからこそ見えてくる社会の実態や当事者たちの想いがありました。


フォトグラファーは、プロジェクト開始から継続して参加しているレスリー・キーさん(写真手前)。アートやファッションといった撮影、映画監督など、世界で活躍し、輝かしい実績を持つ写真家です。彼のOUT IN JAPANに馳せる想い、地方開催への想いもとても深いものでした。


レスリーさん自身が日本のことを大好きで、日本にできることを考え続けてきたそう。そんななか、このOUT IN JAPANに協力することは、日本に大きく貢献できるのではないかと考えました。一人ひとりが生まれ持ったものにプライドを持って生きていってほしいという強い思いがあります。


日本では、LGBTのことを知らない人が多く驚いたと語ります。必要なのはコミュニケーションであり、伝えていくことだと力を込めました。


レスリーさんは自然体の写真を表現したいと思っています。和やかなムードのなか行われた撮影会ですが、被写体になるというのはどうしても緊張してしまうもの。しかし、無理な表情を撮影するのではなく、緊張していれば緊張したままの姿を撮影したいと語りました。それが ”今” のあなたなのだから。この言葉も、自然なキャラクターを活かして、写真で生命力を発信したいという想いがあるからこそ出るのだと伝わってきました。


温かい言葉と笑顔が飛び交う、優しさあふれる撮影会

認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ主催のこのプロジェクト。ヘアメイクサポートとして資生堂、スタイリングサポートとして丸井グループ、カメラ機材サポートとしてキヤノン、といった具合にさまざまな企業がその強みを活かして協賛しています。


参加者は、それぞれプロにヘアメイクや衣装をセットしてもらいます。担当者は彼らに寄り添いながら、なおかつ特別扱いをするといった空気もなく、さまざまな人の居心地が良い空間ができあがっていました。にこやかな笑顔があふれながら、個々の美しさを引き出していきます。


初対面同士の参加者たちもフレンドリーで、楽しそうな会話が飛び交っていました。


いざカメラを前にすると緊張した面持ちになる方もいましたが、前述の通りレスリーさんはそれを ”今” として撮影していました。ポージングや表情などはきちんと指導してもらえるので安心です。


リラックスムードのなか、プロの力でより自分らしさが引き出された姿を撮影する。カミングアウトをするという勇気も含めて、参加者にとっても良い1日になったのではないでしょうか。


当事者の可視化をする意義。主催者の想い

認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さん。松中さん自身がゲイで、LGBT当事者でもあります。カミングアウトは必ずするべきものではなく、個人の自由です。しかし、カミングアウトしたいと思ったときに、カミングアウトしやすい社会であるように変えていきたいのだと語ります。


そのためには当事者の可視化が必要。可視化することで、自分の身近にも当事者がいるかもしれないという意識をいろんな人に持ってもらうのです。


参加者一人ひとりにメッセージを書いてもらいウェブサイトにアップしています。そこにはさまざまな年代、職業、出身地、セクシュアリティの方がいます。当事者の方には勇気や希望を持ってもらいたいと願い、そうでない方にもセクシュアル・マイノリティの方が当たり前にいる存在として世の中に届くようにと活動を続けています。


また、東京を中心に理解が広がっているいっぽう、地方は閉鎖的でなかなか理解が進まないという現状があります。そのような現状ではカミングアウトしにくく、”隣にいない存在” になってしまいがち。だからこそ、地方での開催にとても意味があるのだと考えているそう。


これからは地方での撮影会だけでなく、写真展の実施も目指したいと熱を込めます。誰しもがその人らしく暮らせる社会になるように。いつかはLGBTというカテゴリーさえも無意味になるように。今は過渡期として、丁寧かつ力強く声を届けていきたいと考えています。


一般社団法人広島県セクシュアルマイノリティ協会(通称「かも?」Cafe)代表理事の野元惠水さん。セクシュアリティはストレートで、アライとして活動しています。親友の子どもや仕事のクライアントに当事者がいたことで、彼らの生きづらさを感じたそう。少しでも力になれればと、広島県での活動を続けています。


広島の閉鎖的な面を知っているぶん、撮影会には人が集まらないのではと危惧していたそう。当初は写真展だけを開催しようと思っていたけれど、グッド・エイジング・エールズと話を進めていくなかでポジティブな気持ちをもらい、撮影会開催を踏み切ったのだとか。


LGBTに限らずボーダレスな社会を望み、誰も排除されない世の中になるよう活動しています。都会だけではなく、あなたの隣にも当事者がいるかもしれないという優しい想像力を持ってほしいと力強く語りました。


OUT IN JAPANのロゴやポスター、チラシ等をデザインしている廣橋正さん。昔見たアメリカのLGBT写真集がきっかけで、日本でもそういったものを出したいと考えていたそう。セクシュアル・マイノリティ当事者はどこにでもいるのに、日本では全く認知されていなかったのを常日頃から疑問に感じていたそうです。


「私はリンゴが好きだけど、あなたはレモンが好きなんだ」。LGBT当事者とそうでない人の違いは、それくらい些細なものだと考えています。将来的にはLGBTだけでなく他の様々なマイノリティにも優しく、"違い"を受け入れ認め合える社会になってほしいと願っています。


デザインに関しては、様々に違う顔や表情、ポーズが一番美しく見える正方形を選んだということ。写真はモノクロでその人らしさをストレートに表し、その上にかかる金色のロゴによって、クローゼットから出てきて光り輝いている彼らの勇気を表現。10年経っても輝いているデザインを願って作ったそうです。


「来て良かった…!」参加者の声を聞いてみました

広島から参加した、ユキさん。セクシュアリティはゲイです。LGBTのイベントに参加するのは初めてだったけど、写真で自分を表現できればという思いで来ました。異性愛や同性愛の垣根を越えた社会を望んでいるそう。参加して本当に良かったと感じていて、これからもこういったイベントに行ってみたいと笑顔を見せました。


Male to Female(MTF)の一之瀬花凛さん。彼女も広島からの参加です。LGBTイベントの参加は初めてでドキドキしたけれど、紹介してくれた人がいたので安心感があったそう。今回参加して良かったけれど、広島の閉鎖的な地域性を考えると今後も室内イベントでないと抵抗があると話します。


東京などになると、パレードのような開かれたイベントへの参加にも抵抗感がないそうです。広島でも理解が深まるよう願っており、まずは知ってもらうところからだと語りました。


元保健室の先生であり、現在は全国で講師をしている井上鈴佳さん。セクシュアリティはレズビアン。以前広島県内で講演会をした縁で、大阪から参加したそうです。大阪は「おもしろければ何でも来い!」というノリがあるそうで、そこが広島と違うな、と感じます。


LGBT当事者の自殺率を下げたいという目標を掲げており、全国の子どもたちにセクシュアル・マイノリティの基礎知識を伝えています。当事者として伝えることで、子どもたちの意識が変わればと考えているそう。自分自身がセクシュアル・マイノリティ当事者だと気付いたとき、身近に当事者がいたときに、井上さんのことを思い出してもらえれば、と語ります。


セクシュアル・マイノリティであっても他の人と変わらないし、いろいろな人がいるのだという考えが浸透するよう活動しています。今回のイベントに参加したのも、その一助になればという思いだそうです。


広島からパートナー同士で参加したというC.Kさん(Cさん:写真右、Kさん:写真左)。Cさんはパンセクシュアル、KさんはFemale to Male(FTM)であり、クィアでもあります。これまでは、広島以外にも東京や関西でのLGBTイベントに参加したことがあるそうです。


ただし、パートナー同士で大々的にカミングアウトするというのは初めてだそう。元々OUT IN JAPANは知っていたもの、広島には来ないだろうと思っていたと話します。ところが今回広島で開催されると知り、2人での参加を決意したそうです。


一部の人にはカミングアウトしていたけれど、どこか殻に閉じこもってしてしまうところがあったと話すKさん。この日の撮影で、フッと心が軽くなったそうです。自然に笑顔になれる空間が心地よかったと、2人で笑みを交わしていました。


岡山から参加したアメリカ人のJoshua V Oggさん(写真右)と、広島から参加のRasheim Taylorさん(写真左)。彼らはゲイで、友人同士です。


Joshuaさんはアメリカで人権キャンペーンに参加したことがあるそうですが、写真を通したイベントは初。支援したいという思いやプライドがあっての参加です。楽しい時間を過ごせ、達成感があると笑顔で話してくれました。


いっぽう、Rasheimさんはギリギリまで参加を悩んだそう。東京の友人が参加していたためOUT IN JAPANは知っていたけれど、勇気が出るまで時間がかかったと話します。友人に相談して「変われるかな」と思い、決断したそうです。実際に参加すると心が軽くなったと穏やかな声で語りました。マイノリティであっても、人と違う個性を尊重し合える社会を望んでいます。


当事者は全国にいます。身近な存在なのだと意識してみて

こちらは、この日撮った参加者の写真の一部です。それぞれが自分に誇りを持って輝いているのがわかるかと思います。その姿は、LGBT当事者ではない方と同じ。みんな、生まれ持った輝きを持っているのだと私は思います。LGBTというくくりは関係なく、自分に誇りを持って生きるのが素晴らしいのです。


しかし、カミングアウトしにくい社会であるのも事実。地方ではそういった空気感が強いのだなと肌で感じました。LGBTは遠い世界での出来事ではありません。全国のどこにでも、当事者がいるのです。いろいろな人がいて当たり前だという未来を作るために。このプロジェクトはとても大切な意味を持っているのだと思います。


LGBTのニュースを見る機会が増えましたが、東京など大都市での出来事が多いな、と私自身感じます。全国どこに住んでいても身近で当たり前だという社会になることを切に願います。この1日で見たたくさんの笑顔や温かい空気感が広がっていくように。デザインにも込められた想いのよう、輝き、色あせないように。あなたもLGBTを身近に意識して、そして伝えてみてください。きっと、誰もが生きやすい未来が待っているはずです。


Information

OUT IN JAPAN


認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ


一般社団法人 広島県セクシュアルマイノリティ協会(通称「かも?」Cafe)


レスリー・キー氏

すべてのソーシャルメディアのアカウント:lesliekeesuper


写真(レスリー・キー氏以外の人物写真除く):photo anno




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