金メダリスト・堀米雄斗「どん底にいる気分でした」 東京五輪決勝時の心境を告白

2022年04月23日 17時00分

エンタメ anan

才能あふれるスケートボード好きの少年は、海を渡りプロスケーターになる夢を叶えた。糧となったのは日本とアメリカでの出会い。東京五輪と自分のこと、LAでの生活…。まだ知られていない堀米雄斗を自らが語る。

オリンピックのこと。堀米雄斗のこと。

「いまでも信じられない夢のような出来事。全てが奇跡的でした」


金メダルを手にした2021年の夏、あの瞬間を堀米雄斗選手はそう表現した。“日本での開催”“コロナ禍による1年延期”、そんな状況で“初の日本代表”として出場した東京五輪。それら3つの背景だけでも特別だったが、さらに2つの“初”が連なっていた。一つはスケートボードが東京五輪で初めて正式種目になったこと。もう一つは試合会場の場所が、スケボーに初めて触れた地元・江東区であったこと。これらは大きなプレッシャーへと化けることに…。


――競技中の淡々とした表情からは窺えませんでしたが、当時の心理状態はどのようなものだった?


「これまで経験したことのない重圧に押し潰されていました。大会前や滑る直前は、いつも緊張から足が震えて、思うような出だしにならないことが多いんですが、あの決勝でも、合計7本滑るうちの最初の2本がうまくいかなくて。残りの5本を攻めるためにも、絶対に決めなければいけなかった2本なのにできなかったですね」


ストリート種目は、45秒の制限時間内に自由にトリックを見せる「ラン」2本と、障害物を選んで難易度の高い技に挑戦する「ベストトリック」5本の計7本で構成される。10点満点で1本ごとに点数がつけられ、上位4本の合計点で順位を争う競技だ。


「会場のボランティアスタッフのなかには、地元の知り合いやお世話になっている人もいたけど、(2本終えた時点で)みんな焦っているというか、どうしたんだろうという顔をしていたのを覚えています。いつもなら周囲の状況は目に入らないのですが、気になってしまいましたね。すごく練習していたのにここ一番で決められなくて、どん底にいる気分でした」


だがそこからの快進撃が凄まじい。続く「ベストトリック」の3本目では全選手の最高点をマークし、4本目ではさらにそれを塗り替え、5本目も高得点でフィニッシュ。9点以上は“スーパートリック”といわれる世界で、蓋を開ければ「ベストトリック」5本のうち4本で9点台をたたき出した。


「結果から見ると、普通の人に比べてメンタルは強いのかもしれません。昔から友達とよくカードゲームをやったりしていて、駆け引きを含めた勝負ごとが好き。だからなのか、勝負には強いと思います。とはいえ、それでも緊張はするし、それは常に(出だしの悪さを改善するための)課題でもあります。ですが、これからも緊張は取れないだろう、とも思うんですよね。自信のあるトリックから始めても解けないし、何が正解なのかわからない。だから、緊張していてもいい、ただ全てが終わるまでは諦めないと考えるようにしました。そうすれば、この時のように何とかなると思うんです」


“奇跡”とは、常識では起こり得ないこと。堀米選手を取り巻くいくつかのタイミングが重なり合ったことは、まさにそれなのかもしれない。でも、世界の頂点に立ったことは決して奇跡ではなく、かといって実力というひと言で片づけられるものでもない気がする。堀米選手の強さの秘密とは何なのか。それは“諦めなければ何とかなる”がキーとなりそうだ。


出会い。アメリカ。

現在、堀米選手はアメリカのロサンゼルスに拠点を置いている。「スケボーの本場でプロになる」という小学生の頃から抱いていた夢に向かって、高校から単身で短期留学し、卒業後に移住を決めた。短期留学では、当時面識のなかったスケーターの映像専門カメラマン・鷲見知彦さんにDMを送り、居候させてほしいと頼んだというから、その行動力には驚かされる。


――アメリカへは過去何度か大会に参加するため訪れていましたが、移住に恐れや不安はなかった?


「僕は物事をポジティブに考えるタイプなので、期待のほうが断然大きくて、不安とかは考えなかったですね。アメリカへ行けること自体が楽しかったし、そこでスケボーをするのが夢でしたから」


先ほどの、諦めなければ何とかなるというモットーに、“僕はポジティブ”という言葉がぴったりハマる。控えめでシャイ、そんな印象を多くの人が抱いていたが…。


「初対面では人見知りしますが、仲良くなったら自分を出せるほう。だから、慣れるまでに時間はかかるけど、アメリカの人たちはフレンドリーで話しやすいので、すぐに打ち解けられています」


そこにはアメリカのスケボーならではの文化も関わっていそうだ。


「ひとり暮らしは少なくて、ほとんどのスケーターがルームシェア。特に仲良くなくても一緒に住んで、そこからチームを組んだり、スケボーの映像の撮影をしたり。だからみんなコミュニケーション力が高くて、仲間意識が強いのかも」


自身も過去にはルームシェアをし、自宅を購入したいまも別のスケーターと共同生活中だ。


――ライバルになり得る仲間と練習することで、技を盗まれたり、弱点を探られたりするリスクは?


「スケボーはオリジナリティが重視されるんです。だから、一緒に練習をしていても、誰かの真似をするより、自分の得意な部分を伸ばすことに意識を置いていますね。共に高め合うというのが、しっくりくるような気がします」

初の自伝フォトエッセイ

『いままでとこれから』KADOKAWA 2200円 “いろいろな人の思いが乗っかって堀米雄斗ができている”ことがわかる、彼の魅力満載のフォトエッセイが発売に。「アメリカでの具体的な活動や関わってくれた人への思い、スケボーのメインともいえる、良いことを認め合うカルチャーについても書いてあります。読んでくれたら嬉しいです」


~堀米雄斗~

1999年1月 東京都江東区生まれ

2005年 6歳でスケボーを始める

2017年3月 アメリカ・LAに移住

2019年5月 プロスケートボーダーに

2021年7月 東京五輪で金メダル獲得


小学6年生で韓国のバーチカル世界大会で3位。中学生からストリート種目を本格的に始め、数々の海外の大会で上位入賞。2018年に世界最高峰のプロツアー「ストリートリーグ」で3 連覇を達成する。’21年世界選手権優勝。


※『anan』2022年4月27日号より。写真・杉田裕一 取材、文・伊藤順子


(by anan編集部)

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