ゴヤの名画盗難の真犯人はタクシー運転手!? 前代未聞の実話に隠された真相【映画】

2022年02月24日 20時20分

エンタメ anan

世の中には知られざる驚きの実話が数多く存在していますが、今回映画化されたのは、名画盗難事件の真相。犯人でありながら、イギリス中を感動の渦に巻き込んだ男の嘘のような本当の話をご紹介します。

『ゴヤの名画と優しい泥棒』


【映画、ときどき私】 vol. 461


イギリスが誇る“世界屈指の美の殿堂”として多くの人を魅了しているロンドン・ナショナル・ギャラリー。ところが、1961年にゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれ、前代未聞の大事件が発生する。


その犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。孤独な高齢者にとってテレビが唯一の娯楽だった時代に、彼らの生活を少しでも楽にしたいと盗んだ絵画の身代金で公共放送の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもうひとつの隠された真相が……。


本作は、残念ながら2021年9月に急逝した『ノッティングヒルの恋人』で知られるロジャー・ミッシェル監督にとって最後の長編映画作品。そこで、その思いを受け継いだこちらの方にお話をうかがってきました。

ニッキー・ベンサムさん


映画業界で長年キャリアを積み、本作ではプロデューサーを務めているニッキーさん。今回は、映画化にいたった経緯やロジャー監督から学んだことなどについて、語っていただきました。


―もともとはケンプトンのお孫さんからニッキーさんに送られてきたメールがきっかけだったそうですが、どういった内容だったのでしょうか。


ニッキーさん  ある年のカンヌ国際映画祭のプロデューサーリストを見た彼から、「僕の家族に関するすごい話があります」と突然メールが送られてきたんです。私以外にも何名かのプロデューサーに送っていたようですが、書かれていた簡単なあらすじに魅了された私はすぐに返信をしました。


―つまり、その時点で「これはいい映画になる」という手ごたえを感じていたと。


ニッキーさん  そうですね。家族モノで、実話に基づいていて、絵画の盗難もあるというのはおもしろいので、いい映画になる可能性はいくつも秘めているなと。しかも、それがあまり知られていないというのも大きかったですね。まずは自分で調査を始め、すべての事実がはっきりしてから企画に取り掛かることにしました。

ロジャーの姿勢から学ぶことは多かった


―その後、本作の監督としてロジャー・ミッシェル監督を指名した理由についてお聞かせください。


ニッキーさん  彼の過去作には素晴らしい作品が揃っていますが、彼の映画はたとえ規模が大きくても必ずパーソナルな部分にフォーカスしているのが魅力だと感じていました。この物語も背景にあるのは当時大きく取り上げられたスキャンダルですが、核心となるのは家族の温かみやユーモア。そういった家族ドラマを作るには、ロジャーが一番だと思ったのが理由です。彼ほどバランスの取れる監督はなかなかいないので、完璧な人選だったなと思います。


なぜ彼がそこまで温かいストーリーを描けるかというと、彼自身が人間や俳優を心から愛しているから。だからこそ、俳優たちの才能を引き出し、心地よく演技できるような演出ができるのです。


―ananwebでは2021年に『ブラックバード 家族が家族であるうちに』でロジャー監督へ取材をさせていただき、映画作りに対する興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。実際にロジャー監督と一緒にお仕事をされてみて、感銘を受けたこともありましたか?


ニッキーさん  企画が動き始めるといろいろな混乱に陥りやすいものですが、そのときにロジャーがよく言っていたのは、「何かあったら脚本に戻れ。答えはそこにあるから」ということ。どれだけ周りが騒いでいても、そういったノイズはすべて消して、脚本をガイドとして歩んでいけばいいんだと教えてくれました。そういう彼の姿勢から学ぶことは多かったですね。


それからロジャーの撮影方法はすごく効率的で、だいたい1回撮ったらOK。私としてはクローズアップや別の角度からも撮り直さなくて大丈夫かなと思っていたのですが、ロジャーは「最初の純粋な演技が一番なんだよ」とつねに自信を持って言っていました。そんなふうに、何よりも脚本と俳優を信じることを彼から教えてもらいました。

ゴヤの絵には何か惹かれるものを感じた


―また、本作でもうひとつの主人公と言えば、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」。ニッキーさんはこの絵に対してどのような印象を抱かれましたか?


ニッキーさん  最初にこの絵を見に行ったとき、すでに事件についてすべてのことを知っていたので、まるで有名人にでも会えたような気分でしたね(笑)。正直言って、ナショナル・ギャラリーのなかで一番素晴らしい作品だとは思いませんでしたが、絵の存在感やパワフルさという意味では、何か惹かれるものがあるとは感じました。


ゴヤの作品においても、もっとも素晴らしい作品とは言えませんが、インパクトはありますし、こういったストーリーのもとにもなっているので、魅力のある作品ではないかなと。依頼をした脚本家たちと初めて会うときに「事件の現場で会いましょう」と言って絵画の前で待ち合わせしたのもおもしろかったです(笑)。


―では、何か日本にまつわるエピソードについても教えていただけますか?


ニッキーさん  私はオーストラリア出身なのですが、子どものころに家族旅行として初めて訪れた東京や京都、そして富士山の横を通ったときの記憶はいまでも鮮明に覚えています。


それから、オーストラリアでは有名なベン・リーというシンガーソングライターがいますが、大学の同級生であった彼が日本でツアーを行ったときに撮影担当として来日したことも。日本の食事はおいしいし、人々は優しいし、地方の景色は美しいので、いろんなJ-POPのアーティストたちと一緒にツアーを回るのは素晴らしい経験でした。最近、私の子どもが日本の文化にハマっているので、旅行ができるようになったらぜひ一緒に日本へ行きたいですね。

女性たちに必要なのは、自分の体験談をシェアすること


―ニッキーさんは育児や介護をしながらでも女性たちが映画業界で働けるような活動にも力を注いでいますが、ご自身もそういった困難を味わったことがあるのでしょうか。


ニッキーさん  もちろん、私自身の経験に基づいているところもありますが、周りの女性たちの声にも耳を傾けてみたら、「キャリアは積みたいけれど、この業界にいるのは難しい」という意見が多く上がりました。そういったことが発端となりこの活動を始めることになったのですが、問題はどうすれば女性が映画業界に来てくれるかよりも、どうすれば女性たちが映画業界に残ってくれるか。それに改めて気づかされました。


実際、若い世代の男女比は半々ですが、監督や上のポジションになると女性の数は減ってしまいますからね。ただ、私は文句を言うだけで終わりにするのは嫌なので、解決策を見つけて変化をもたらしたいという思いから女性たちをサポートする方法を考えました。映画業界の未来のためにも、才能のある女性たちを失わないような活動をこれからも続けていきたいです。


―日本の働く女性でもキャリアと家庭との両立に悩んでいる人は多いので、アドバイスをお願いします。


ニッキーさん  私が育児や介護をしながら働く女性たちのための団体を立ち上げたとき、まず初めに作ったのは、女性たちがそれぞれの体験をシェアできるコミュニティ。そこで多くの女性たちが自分の失敗談や成功談を語り合っていたのですが、そうすることで「大変なのは自分だけじゃない」と勇気づけられたと聞きました。


おそらく日本の女性のみなさんも、同じような苦労があると思うので、お友達や同僚、もしくはそういった話ができるコミュニティでそれぞれの体験をシェアし合うことが大切なのではないかなと。ただ、それが一部の間だけで行われるのではなく、より多くの人の間で語り合うことができるような社会になるための働きかけも必要だと考えています。

笑って泣いて心まで盗まれる!


他人に対して無関心になりがちな時代だからこそ、忘れたくないのは、互いを思いやる優しさと人が寄り添い合っていくことで生まれる温もり。何ものにも代えがたい夫婦や親子の絆だけでなく、弱者のために1人で戦うケンプトンの姿は、いまの私たちに大切なものは何かを教えてくれるはずです。

取材、文・志村昌美

驚きの詰まった予告編はこちら!


作品情報

『ゴヤの名画と優しい泥棒』

2月25日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

監督:ロジャー・ミッシェル

出演:ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード

配給:ハピネットファントム・スタジオ

©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020

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2022年02月24日 20時20分

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