「日本人は本当に親切で心強い」超人気ドラマで主演のオリー・アレクサンダーが見た日本

2022年01月18日 20時00分

エンタメ anan

1月といえば、新しいドラマが始まるシーズン。何を観ようか悩むところですが、良質なドラマと出会いたいと思っている人にオススメしたいのが本国イギリスで社会現象を巻き起こした『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』です。英ガーディアン紙の「2021年TV作品ランキング1位」や米ニューヨーク・タイムズ紙の「2021年TV作品ベスト10本」に選出されるなど、大きな注目を集めています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。

オリー・アレクサンダーさん


【映画、ときどき私】 vol. 446


1980年代のロンドンで生きるゲイの若者たちが、HIV/エイズに関する正しい情報と理解が少ない社会のなかで、葛藤を抱えながらも明るく生きる姿を描いた本作。オリーさんは、主人公のリッチーを演じ、初主演を務めています。「Years & Years」として世界的人気を誇るミュージシャンであり、LGBTQ+アクティビストとしても活躍するオリーさんに、本作を通して伝えたいメッセージや日本のファンへの思いを語ってもらいました。


―本作がイギリスで放送開始された際、HIV検査数が記録的な伸びを見せ、大きなムーブメントを巻き起こしたそうですが、この作品がいまの時代に与えた影響をどう受け止めていますか?


オリーさん 社会現象が起きることも、放送される時期にいまのような状況に陥っていることも、撮影段階では僕たちにも予想できませんでした。とはいえ、どんな状況でもこのドラマが伝えるストーリーとHIVが当時のLGBTコミュニティに与えた影響を語るこのドラマの本質は変わりません。


ただ、放送がコロナ禍と重なり、死に至るウィルスの蔓延を体験しているからこそ、観客はこのドラマをより自分ごととして受け入れることができたとは思っています。もちろん、新型コロナウイルスと当時のHIVが与えた影響とは異なるものですが、80年代にHIVの脅威にさらされていた人々のことをより考えやすくなったのではないかなと。実際、このドラマがきっかけとなって、HIV検査キットの1週間の注文数が史上最高を記録しました。これだけの反響があったというのは信じられないことです。

自分の人生とリンクするところが多かった


―リッチーという役と、ご自身の人生がリンクする部分もありましたか?


オリーさん リッチーと僕とは似ている部分が多いと感じています。役者を目指していた点、18歳のときにロンドンに移住した点、そして大きな夢を持っていた点などはまさにリンクしているところです。


リッチーは、演技をしたり、ステージに立ったりして、ひと際目立つ人物になりたいと思っていますが、それも僕が持っていた夢と重なる部分。そういったこともあって、リッチーの言動を理解するのは、僕にとってはとても容易なことでした。


―演じるうえで、リッチーという人物をどのように分析されたのでしょうか。


オリーさん リッチーは現実をそのまま受け入れようとしないので、つねに隠しごとを持っている人だと感じました。そういう傾向になってしまう大きな原因は、自分のセクシャリティに対する恥の感情を持っているから。それによって、自分をオープンに表現することができないのです。


そして、それは僕が若いころに持っていた感情と同じものでもあります。僕自身もゲイである自分が嫌で、自分ではない他の誰かになろうとしていたことがありましたから。ほかにもリッチーはグループの注目を浴びるためにジョークを言ったりしますが、目的は自分の本心を隠すこと。僕も以前はそのような行動をよく取っていたので、その部分も彼には非常に共感できました。

この経験が僕自身にも大きな影響を与えている


―そんな彼を支える友人たちとのやりとりも、非常に印象的でした。


オリーさん リッチーは時々とても自己中心的な言動を取ることがありますが、そこで彼を諭してくれるのが彼の仲間たち。そんな彼らのことを愛しているにもかかわらず、リッチーは失礼な態度を取ることがあって、そういう彼の部分は個人的に少しうんざりすることもありましたけどね。仲間に対する思いやりに欠けているなと。なぜなら、僕自身はもっと思いやりのある人間だと思っているので(笑)。


とはいえ、僕にとってリッチーの一番の魅力は彼の複雑な人間性。人は誰でも複雑な内面を持っているものですが、そういう複雑さを感じられるのは、ドラマで描かれるゲイのキャラクターとしては珍しいと思いました。


―この役を演じた経験は、オリーさん自身の演技やアーティストとしての活動にも影響を与えたのではないでしょうか。


オリーさん そうですね、大いに影響を受けました。なぜなら、このドラマでリッチーを演じたことは、アーティストとして僕がこれまで持っていなかった創作プロセスを僕に与えてくれましたから。それは音楽を作ってツアーを回る活動とはまったく別の体験でした。この物語が持つ強力なメッセージ性はもちろん、素敵な撮影チームと共演者からもたくさんの良い影響を受けていると思います。

仕事とは思えないほど、すべてを楽しめている


―では、役作りで苦労した点といえば?


オリーさん 彼はオシャレ好きで陽気で、いろいろな人と寝たい、グループの中心でありたい、とにかく人生を謳歌したい、と思っているような人。そんなリッチーを作り上げるのは簡単ではありませんでしたが、とても楽しかったです。撮影現場では80年代の素晴らしい音楽をよく聴いていたのですが、そこからやる気やインスピレーションを得ることができました。


そのほかに、僕個人として一番難しさを感じたのは、母親とのシーン。お互いに愛しているのにそれをうまく表現できなかったり、激しい感情のやりとりが多かったりしたので、自分と両親との関係性がオーバーラップすることもありました。そういう意味でも、僕にとっては大きなチャレンジをしたシーンだったと思います。


―初主演を経験したり、3ピースバンドだった「Years & Years」をソロ・プロジェクトにされたりと、オリーさんにとって2021年は激動の1年だったと思います。俳優とアーティストを両立するうえで大事にしていることついて教えてください。


オリーさん 2つのことをしているように見えますが、音楽活動では、歌手であり、プロデューサーであり、曲を書くライターであり、映像を作り上げる監督であったりと1人で何役もこなしているイメージです。俳優としては、1つの役にのめり込むので、そういった部分で音楽活動との違いはありますが、「表現」という意味ではまったく一緒。お互いが助長しあっているような感覚ですね。


そんななかで、今回は非常に素晴らしいプロジェクトに恵まれたと思っています。ストーリーもチームとしても、すべてが完璧だったなと。歌手と俳優、どちらも仕事とは思えないほど楽しんでいるので、本当に僕はラッキーだと思います。

自分のユニークさこそが力になることに気づいてほしい


―劇中では、「5年後にどうなっていたい?」と聞かれるシーンがありましたが、ご自身は5年後の自分をどう見すえているのでしょうか。


オリーさん 18歳のころを振り返ってみると、リッチーと同じように成功したいという願望があり、25歳までに自分の作った音楽を出して成功したいといろいろな計画を思い描いていました。そして、実際に25歳までにすべてを実現させてしまったので、正直に言うと、いまは昔のように次のゴールというのを考えなくなっているような気がしています。


しかも、コロナ禍で明日がどうなるかわからないような状況のなかにいますからね。とにかくいま思うことは、キャリアを続けられること、そして家族や友達が周りにいてくれること、それだけでハッピーだと思っています。


―いまの時代もリッチーたちのようにありのままで生きることに難しさを感じている人も多いと思います。そういった葛藤を抱えている人に、オリーさんから言葉をかけるとすれば?


オリーさん 周りの目が気になって恥ずかしい思いをしたり、人と自分が違うことに後ろめたさを感じたりしている人は多いと思います。実際、僕もそうでしたから。ゲイであることも、人と違うことも嫌で、いつもその場になじんでいないような感覚がありました。


それを克服するのに時間はかかりましたが、いまは人と違うことこそが“スーパーパワー”なんだと。そして、自分の持つユニークさこそが自分の力になるんだと気がつくことができました。そう思えるようになるのは簡単なことではないかもしれませんが、少しずつ自分の胸のうちを探っていけば、みなさんにもそういう気づきの瞬間がきっと訪れるはずです。


僕がいる音楽業界は非常に厳しい世界ですし、似たようなアーティストが出てくることもありますが、僕自身は自分の持つユニークさを貫いていけば大丈夫だと信じています。

できるだけ早く日本に戻りたいと思っている


―公演などで来日されたことがありますが、日本の印象や思い出についてもお聞かせください。


オリーさん これまでに何度も訪れていますが、僕は日本が大好きなんです! 日本とイギリスは文化がまったく違いますが、そういったことを経験できるのも楽しみのひとつ。それに、日本のみなさんは本当に親切ですよね。東京で道に迷っていたときには、助けてくれる人がたくさんいたので心強かったです。


あと、いい思い出として残っているのは、電車で鎌倉に行ったときのこと。神社や森のなかを散策したり、駅の近くで日本のおいしいスイーツを食べたりしたのは楽しかったです。とにかく、日本にはもう一度戻りたいと思っています。


―ちなみに、影響を受けている日本の文化や作品などもありますか?


オリーさん まず、僕はジブリ作品の大ファン。美術館に行ったこともあります。なかでも特にお気に入りは、『ハウルの動く城』と『千と千尋の神隠し』です。あと、村上春樹さんの小説も読ませていただいています。とはいえ、もっと日本の作品を観たり、読んだりしたいなと思っているところです。


―それでは最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。


オリーさん (日本語で)ありがとうございます! 日本にいるみなさんに、僕からたくさんの愛を送りたいです。できるだけ早く日本に戻れるように願っているところですが、それが叶うまではぜひドラマを楽しんで待っていてください。

インタビューを終えてみて……。

終始チャーミングな笑顔を浮かべつつ、ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくださるオリーさん。日本が好きなことが画面越しでも伝わってきて、非常にうれしかったです。本作では初主演とは思えない存在感を見せており、俳優としての今後もますます楽しみなところ。また、ソロ・プロジェクトとして再始動した「Years & Years」の約3年半ぶりとなる新作アルバム“Night Call”がまもなく1月21日より発売となるので、こちらでは歌手としてどんな表現に挑まれているのかにも注目です。

ありのままで生きる姿がまぶしく、愛おしい


社会からの偏見に悩み、恐れや不安を抱えながらも、自分の感情にひたすら正直に生きようとする若者たちを描いた本作。自分らしい人生を得るために闘い続ける彼らの姿と、仲間や家族の深い愛には、心が震えるのを感じるはず。まさに、いまの時代に観るべき傑作ドラマシリーズです。

取材、文・志村昌美 

ストーリー


1980年代のロンドン。離島出身で同性愛者のリッチーは、コリン、ロスコー、アッシュと彼らの親友ジルとともに「ピンクパレス」と名付けたアパートで共同生活を始める。同性愛に理解のない家族など、さまざまな葛藤を抱えながらも楽しく暮らす5人だったが、そんななかHIVの感染が急激に拡大。仲間が次々とエイズを発症していくことに……。

引き込まれる予告編はこちら!


作品情報

『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』

スターチャンネルEXにて全話配信中


© RED Production Company & all3media international

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2022年01月18日 20時00分

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