夏木マリ「やらせていただくしかない」 舞台『千と千尋』出演を決めたワケ

2021年12月11日 21時10分

エンタメ anan

連続テレビ小説『おかえりモネ』で、林業がさかんな登米の資産家であり、主人公・モネを支え導いていくサヤカさんを演じていた夏木マリさん。さっぱりとしたまっすぐな性格で、オシャレでカッコよく、優しく時に厳しく、それでも根底に愛情を感じさせるキャラクターは、まるで夏木さん自身のようにも。

――来年、映画『千と千尋の神隠し』が舞台化されますが、なんとアニメ版オリジナルキャストである夏木さんが湯婆婆と銭婆を演じられると知って驚きました。出演を決められたのはどんな想いからだったのでしょうか。


私、今とても声の仕事が好きなんですけれど、湯婆婆はその出発点で大切な役なので、舞台化するなら自分がやりたいという気持ちがありました。でもじつは今回、私もオーディションのようなものがあったんですよ。演出のジョン・ケアードとは、20数年前に出演したミュージカル『レ・ミゼラブル』以来ですから、今の私を見ておきたかったというのもあるんでしょうね。考えてみたら、私自身、大きな舞台に出演するのは10数年ぶりなんです。久しぶりの舞台が『千と千尋~』というのは、すごく素敵だなと思うし、やっぱりご縁があるんだなと思います。


――映画制作時に、宮﨑駿監督から作品や役柄への想いを直接伺っていると思いますが、印象に残っていらっしゃることはありますか。


出演が決まって、最初にジブリに伺ったときに、宮﨑さんが私の前で湯婆婆と銭婆を線画で描いて見せてくださって、そこで初めて双子の役だと知ったんですけれど。それが最初の出会いでした。そのときに描いてくださった線画は、今も大切に保管しています。


――アフレコの現場では、監督から、湯婆婆を悪人ではなく一生懸命油屋を守るために働いているおばちゃんとしてやってくださいと言われたそうですね。


当時は私もまだ若くて、最初は湯婆婆と銭婆を単純に悪と善でとらえていたんです。でも、人間って誰しもいい面と悪い面を持っていて、湯婆婆はただそれが顕著に出ているだけなんですよね。坊と接するときは本当に母性を見せるわけですし。そういう人間の本質が描かれた役だということは、後になってわかりましたけど。


――湯婆婆と銭婆、見た目もですけれど声も変えずに演じていますが、あれも宮﨑さんの案ですか?


じつは最初は銭婆は、ちょっとスレンダーな人だったんですって。でも私に描いてくださったときは見た目は同じでした。声を変えましょうか、と聞いたんですが、監督が同じでいいと。そのときは、二役やったのかわからないような感じで終わったんですが、完成した映画を拝見したら素晴らしかったし、そういうことだったのかなと今は理解しています。



――舞台は久しぶりとのことですがここまで出演されなかったのは。


たぶん…面白いと思える台本がなかったんでしょうね。私自身がチャームを感じられなかったというか。あとやっぱり、蜷川(幸雄)さんが亡くなられて、一緒にやりたい演出家がいなくなったことも大きいと思います。今回は、役柄自体がチャーミングですからね、やらせていただくしかないという感じです。


――夏木さんが惹かれる作品とは、どういうものなんでしょうか。


今これをやるべきかどうか、ということだと思います。たとえばそれがシェイクスピアだったとしても、今の時代にやるべきだと感じたら選ぶだろうし、どんなに有名な作品でも今じゃないなと思ったらやらない。それは世の中的な意味でもあるし、私自身がという意味でもあります。


――『おかえりモネ』の出演の決め手はどこだったのでしょうか。


プロデューサーが、これは循環の話だとおっしゃったんですね。雨が山に降って、その水が海に流れて、空に上ってまた山に還る。主人公のモネもまた、土地を巡回することで自分の生き方を発見していく。パンデミックで、みんなが自分を喪失しているときに放送する朝ドラとして意味があると思いました。東日本大震災から10年のタイミングでもありますし。ヒットするかどうかより、いい作品に出ることのほうが俳優として価値があると思いますので、やらせていただけてありがたかったです。


――サヤカさんは、故郷を離れて登米で働くモネの親代わりという存在ですが、山間の地で自分らしくカッコよく生きていて、夏木さん自身と重ねて見てしまいました。


私にはあんなに人を惹きつける魅力はないですよ。「いってらっしゃい」って送り出して「おかえり」って迎えられるキャパもないですし。


――そんな…。


逆に自分に似ていない役のほうが、演者としてはやりやすいんですよ。似ている役は無理(笑)。私はあんなに働き者じゃないし、あんなに母性もない。自分にないところがいっぱいあるから、気持ちよく役に飛べたんです。私の魂胆として、「まるで夏木さん本人みたいですね」と言っていただくのは狙い通りです。ただ、何も芝居してないとか言われると…それは俳優の目指すところでもありますが、ああだこうだといろいろ考えてやった結果なんですよと言いたくなっちゃいますけど(笑)。


――似ているというのは、背筋を伸ばして自分の決めた道を歩んでいる姿勢というんでしょうか…夏木さん自身を見ていて、こんなふうにカッコよく歳を重ねていきたいと憧れる人は多いと思います。


私はサヤカさんほど人間ができてないですし、ほんと情けない毎日を送っているんです。普段、年齢は記号だって言いながら、すぐ疲れちゃうし、諦めちゃうし(笑)。自分のことを死守するのに精一杯で、彼女のように人のことを後押ししたりできないです。体力的な面でもね。だからananの読者世代には今のうちにいろいろやっておいたほうがいいよ、とはお伝えしたいです。私は20代のときに怠けてたから…もうダメダメちゃんなんで。


なつき・まり 1973年に歌手としてデビューし、’80年代から演劇にも活動の場を広げ、ドラマや映画にも出演。’93年より自身が企画・演出・出演するパフォーマンス公演「印象派」をスタート。国内外で公演をおこなっており、2008年にはパフォーマンス集団・MNTを立ち上げ、活動継続中。今年出演した連続テレビ小説『おかえりモネ』も話題に。


夏木さん出演の舞台『千と千尋の神隠し』は2022年3月より東京・帝国劇場を皮切りに、7月まで大阪、福岡、札幌、名古屋で上演。夏木さんはWキャストで湯婆婆/銭婆を演じる。演出は、ミュージカル『レ・ミゼラブル』日本初演の演出を手がけたジョン・ケアード。主人公の千尋は、橋本環奈と上白石萌音がWキャストで演じる。


※『anan』2021年12月15日号より。写真・小笠原真紀 ヘア・TAKU for CUTTERS(VOW‐VOW) メイク・SADA ITO(donna) インタビュー、文・望月リサ


(by anan編集部)

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