塚地武雅「地方に別荘を持ち、理想のお嫁さんと...」50歳を目前に語る夢

2021年11月11日 18時30分

エンタメ anan

劇場公開前から予告編の再生回数が異例の340万回を超え、上映館数も一気に拡大するなど、大きな注目を集めている話題作『梅切らぬバカ』。そこで、本作についてこちらの方にお話をうかがってきました。

塚地武雅さん


【映画、ときどき私】 vol. 429


「演技が上手い芸人ランキング」には必ず名前が上がる塚地さん。今回は、母親と自閉症を抱える息子が懸命に生きていく姿を描いた本作で、「忠さん(ちゅうさん)」こと息子の忠男を演じています。役作りの過程で初めて知ったことや50代を目前にしたいまの心境、そして理想のお嫁さん像などについて語っていただきました。


―今回は本当に難しい役どころだったと思いますが、脚本を読まれたときのお気持ちはいかがでしたか?


塚地さん 最初は、かなり不安でした。というのも、お笑い芸人である僕が登場したら、作品の邪魔になってしまうと思ったからです。いわゆる無名の役者さんのほうがより本物に見えるんじゃないかなとも感じたので、「僕が出たらマイナスになりませんか?」と監督に相談したこともありました。


そしたら、監督から「そんなことはまったくないので、いままで通り、役に対する真面目な姿勢とこだわりを持って忠さんを膨らませてほしい」と。それなら全力でやろうと思って、受けることにしました。


―思わず塚地さんであることを忘れてしまうほど、忠さんそのものだったと思います。


塚地さん 観てくださった方々が、僕を見ると「忠さん!」と呼んでくださるんですが、役柄の名前で呼ばれるのはうれしいですね。


―今回は、役作りのために自閉症の方々やご家族とも面会されたそうですね。実際に会われてみて、いかがでしたか?


塚地さん グループで住まわれているところを訪問させていただき、いろいろなお話を聞かせてもらいました。自分の周りに自閉症の方がいなかったこともあり、知識がまったくなかったので、行動を予測できないところが実はちょっと怖いと思っていたんです。


でも、この映画を通じてさまざまなことを知っていくうちに、ただ喜怒哀楽の表現がストレートなだけなんだということに気づかされました。そんなふうに、自閉症の方の性格や行動パターンを理解すれば、見方は変わるものなんだなと。いままで自分が抱いていた印象は、あくまでもこちらの勝手な先入観で作り上げられているものだったと知ることができました。

自閉症の方との関わりを通して、しっかりと役に臨めた


―ということは、役へのアプローチもかなり変わったのでは?


塚地さん そうですね。たとえば、自閉症の方の大半が忠さんと同じように、時間に正確だったり、ものすごい几帳面な性格だったりするというのは驚きました。そういったさまざまな特徴を知ったうえで、しっかり役作りに臨めたので、自閉症のみなさんと会う前と会ったあとでは、演じ方もかなり変わったと思います。


―塚地さんは文字や数字に色がついて見えたりする「共感覚」の持ち主で、珍しい現象とされているそうですが、ご自身が演じる役を色で考えることもあるのでしょうか。


塚地さん 子どもの頃から、名前と人が合わさると色は見えますね。でも、ただ色が見えるだけ。この話をすると「私って何色ですか?」と尋ねられることも多くて、「その色はどういう意味ですか?」と聞かれちゃうんですが、僕も理由は何もわからないんですよ……。


―オーラが見える人と間違えられているのでは?


塚地さん そうなんですよ! 「わからない」と伝えると、毎回がっかりされるので、それが嫌でだんだん僕も言わなくなってきてますね。


―確かに、それはちょっとつらいですね。


塚地さん イメージとしては、着ている服の色みたいに見えるだけなので、「あの人は赤いシャツを着てる人」くらいの感覚です。役に関しても色は見えますが、それを役作りに投影することはないです。


―ちなみに、忠さんは何色ですか?


塚地さん 青ですね。だからといって、クールに演じようとか、そういうわけではないですよ。でも、見えることは見えるんです。


―すごく興味深いです。意味はないということは、この機会にみなさんにもちゃんと知っておいてもらえるといいですね。


塚地さん 色を言ったあと、「ということは?」となるのが、本当に怖いです(笑)。

ウケるためなら何でもできるが、役者の仕事は不安だらけ


―塚地さんはご自分の出演作は毎回観たくないと思うそうですが、本作はすでにかなりの反響があるので、今回は自信を持ってお届けできるのでは?


塚地さん いや、ないですね。それよりも、「イケメン俳優かアイドルでないと予告編の再生回数がこんなに行くことはないですよ」とか「予告編だけで泣けた」とか言われて、その方々が本編を観たときに「あれ?」となったらどうしようと逆に不安しかありません。


―みなさんの期待値が上がりすぎてないか、いままで以上に心配になっている感じですか?


塚地さん まさにその通りですね。とはいえ、いつも不安な気持ちはあります。撮影中も監督と役者さんはモニターでチェックをされていますが、僕はそれさえも見ることができません。「ああ、俺が邪魔してるわ」と思っちゃうので。だから、試写とか見てられないですね。ほかの方のシーンは「素晴らしいな」と楽しめるんですが、自分が映ると「登場するな!」と言いたくなりますから(笑)。


―コントのときも、そうなりますか? それとも、役者のときは別の感覚なのでしょうか。


塚地さん そう言われたら、コントのときはしっかりチェックしてますね。たとえば、「もっとこの表情をしたほうがウケるな」とか「この画角ならこっちの動きのほうがいいな」とか考えますから。ウケるためなら何でもできるので、欲深い人間ですね(笑)。


―つまり、基準となっているのは、ウケるかどうかであると。


塚地さん 僕のなかで大きくは一緒ですが、分けているとすれば、映画やドラマはリアリティで、コントはどこかファンタジー。役者のほうはリアルな自分により近いから見ていられないのかもしれないですね。

加賀まりこさんは、本当のお母さんのようだった


―なるほど。リアルといえば、今回は加賀まりこさんとのかけあいは本当の親子のようでした。現場での様子はいかがでしたか?


塚地さん 段取り的なリハはしましたけど、本番はほぼアドリブ。僕は決められたルーティンをひたすらこなしているだけで、それを加賀さんがサポートするという流れでした。特別なことをしているわけではないのに、ちゃんと親子に見えるのは、加賀さんの懐の深さと慈愛に満ちた母性のおかげだと思います。加賀さんのお芝居は、本当にすごかったです。


―撮影以外にも、印象に残っている加賀さんとのエピソードがあれば、教えてください。


塚地さん 役柄についてのアドバイスはもちろん、「一人で大丈夫?」「ちゃんと食べてる?」などプライベートの心配までしてくださって、お母さんのようでした。


加賀さんの周りの方もこの作品を観てくださっていたようで、あるとき「私の友達が塚地くんのことを褒めていて、『素晴らしい役者さんと共演できてよかったね』と言ってたわよ」と教えてくださったことがありました。で、それを言ってくださったのが女優の浅丘ルリ子さん(笑)。そんなすごい方に言ってもらえる立場じゃないのに、と驚いたこともありました。


―それはかなりすごいですね。


塚地さん あとは、天海祐希さんも観てくださっていて、ドラマでご一緒したときに現場で「嘘がなくて、めちゃくちゃよかったよ。淡々としているけど、人生ってああいうものだから」と熱弁してくださったときもうれしかったです。でも、加賀さんがよかったという意味で、僕がよかったわけではない可能性もありますから……。まだ、認められませんね。


―ただ、浅丘さんと天海さんは嘘をおっしゃるタイプではない気がします。


塚地さん 確かに、それはありますね。でも、公開されて観てくださったみなさんの声を聞くまでは、とにかく不安で仕方ないです。

バカがつくほど好きなのは、15年追いかけているK-POP


―忠さんといえば、几帳面で分刻みのルーティンをこなす性格。塚地さんにも毎日絶対に欠かせないルーティンはありますか? 


塚地さん 朝は起きなくてはいけない時間の30分前に起きて、まずお風呂にお湯を溜めます。ボタンを押したら二度寝して、お風呂の準備ができたら半身浴を15分ほどするのが毎朝のルーティンです。


家に帰ってきたら、まず玄関で「ただいま」と言います。もちろん、一人ですけどね(笑)。そのあと、ソファに座って大声で「よいしょー!」と必ず言うんですが、そこで自分のスイッチをオフにして一日を締めています。ただ、たまに間違えてマンションのエントランスで「よいしょー!」と言っちゃって焦ることもありますが……。


―(笑)。では、スイッチをオフにしたあとの楽しみといえば?


塚地さん 韓流ドラマとか、韓国のオーディション番組を欠かさず見ています。


―忠さんはバカがつくほど梅を大切にしていますが、塚地さんがバカになってしまうほど好きなものといえば? 


塚地さん やっぱりK-POPは大好きですね。15年くらい前に、周りから勧められて見た東方神起がきっかけでしたが、そこからはCSのチャンネルをいくつも契約して、K-POPも韓流ドラマも片っ端から見ています。最近、BTSが急に盛り上がっていますけど、僕はデビュー当時からずっと見続けていますからね(笑)。あとは地方ロケの前後に自分の時間を取って、ご当地名物を食べたり、街を散歩したりするのが、好きな時間の過ごし方です。

50代も、僕の未来は明るいと感じている


―劇中では、忠さんが「お嫁さんがほしい」とたびたび口にする姿がかわいらしかったです。塚地さんにとって理想のお嫁さん像とは?


塚地さん 笑っていてくれていたら、それだけでいいです。あとは、たとえ面白い話ではなかったとしても、「今日こんなことがあってね」みたいなことを一生懸命話してくれたら最高ですね。家に帰ったときに、「ただいま」と言って返事が返ってくる生活を夢見ています。


―11月25日には、50歳の誕生日を迎えられます。お気持ちに変化はありますか?


塚地さん 実は、めちゃくちゃビビってます。でも、もう50歳になるのにまだ若手みたいな扱いで、お笑いの世界って何なんですかね(笑)。僕が若い頃に見ていた50代の芸人はベテランだと思ってたんですけど、僕なんてつい最近も学生服着て収録してましたから。何でいまだに、若手扱いなんだろうと驚いています。


ただ、先日ドラマの現場で「僕、今年で50歳なんですよ」とメイクさんに言った瞬間、隣にいた小日向文世さんが「若っ! これからできることがいろいろあるね」とおっしゃったんです。僕が20歳の子にするみたいなリアクションでびっくりしましたが、そのときに「俺はまだまだ若いのか」と気がついて力になりました。僕が知っている諸先輩方はみなさん本当にパワフルなので、いまは僕の未来も明るいなと感じています。


―それでは、50代をどんなふうに過ごしていきたいかを教えてください。


塚地さん まずは、大切な伴侶を迎えて、東京に家を買い、さらに地方に別荘を持てたらいいですね。最近は地方の暮らしに憧れているので、ゆっくりと過ごしていけたらいいなと思っています。

インタビューを終えてみて……。

塚地さんの笑顔にこちらまで笑顔になり、笑いと癒しをたくさんいただいた取材となりました。あれほどの名演技を披露し、周囲から絶賛の声が届いているにもかかわらず、不安な思いを抱えていらっしゃるのは意外でしたが、謙虚な姿もまた塚地さんの魅力。俳優・塚地武雅さんの素晴らしい熱演は必見です!

人生を豊かに育ててくれるのは、人との間に生まれる絆


何気ないささやかな日常のなかにある幸せや親子の深い愛に、心の奥がじんわりと温かくなるのを感じられる本作。偏見にとらわれ、人間関係が希薄になりがちな現代で、他者と向き合うからこそ得られる喜びについても改めて考えさせてくれる珠玉の物語です。

写真・山本嵩(塚地武雅) 取材、文・志村昌美 

ストーリー

都会の古民家で占い師として生計を立てている山田珠子は、自閉症の息子・忠男と二人暮らし。ささやかな毎日を送っていたが、息子が50回目の誕生日を迎えた日、母はこのままでは共倒れになるのではないかと気がつく。


悩んだ末、珠子はグループホームに忠男の入居を決めるが、環境の変化に戸惑った忠男は、ホームを抜け出してしまう。近隣住民からの反発を受けるなか、珠子は大切に育ててきた庭の梅の木を切ることを決意するのだが……。

目頭が熱くなる予告編はこちら!


作品情報

『梅切らぬバカ』

11月12日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

配給:ハピネットファントム・スタジオ


©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

写真・山本嵩(塚地武雅)

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2021年11月11日 18時30分

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