「私に大きな影響を与えた日本人は...」米インディーズ映画界のアイコンが語る日本への愛

2021年10月28日 19時00分

エンタメ anan

誰にでもある子ども時代の忘れられない思い出。その当時の経験がいまの自分を形作っていると感じることも多いのでは? 今回は、そんな気持ちが蘇ってくる注目作をご紹介します。

『スウィート・シング』


【映画、ときどき私】 vol. 424


普段は優しいがお酒を飲むと人が変わってしまう父と、家を出てしまった母を持つ15歳のビリーと11歳のニコ。頼る大人がいない姉弟は、お互いに支え合いながら暮らしていた。クリスマスの日、父がくれた思いがけないプレゼントに幸せを感じていたビリーだったが、両親が大ゲンカとなり、散々な1日となってしまう。


その後、父の入院をきっかけに母と恋人が暮らす海辺の家へと向かったビリーとニコは、少年マリクと出会い、友達になる。そして、ある出来事をきっかけに、3人は逃避行を始めることに……。


本作を手掛けたのは、米インディーズ映画の象徴的存在とされているアレクサンダー・ロックウェル監督。日本では、25年振りの新作公開となっており、話題となっています。そこで、こちらの方々にお話をうかがってきました。

アレクサンダー・ロックウェル監督 & ラナ・ロックウェル


本作で、主人公のビリーを演じたラナ(写真・右)さんは、ロックウェル監督(同・左)の娘であり、監督の作品に出演するのは2度目。高校を卒業した現在は、音楽の勉強に取り組むなど、今後の活躍が期待される存在でもあります。


今回は、監督自身のポケットマネーをつぎ込んで完成させた意欲作にかける思いや親子で挑んだ映画制作の裏側、さらに日本から受けた影響などについて語っていただきました。


―この映画は物語から生まれたのか、多感な時期のお子さんの姿をとらえたいという気持ちから生まれたのか、どちらが先でしたか?


監督 おそらく、両方同時だったと言えると思います。そのなかでも、ラナが子どもから大人への階段を上り始めている時期に差しかかっていたこと、さらにコロナ禍で学校や友達との関係に苦労していた頃でもあったので、そういう姿を撮りたいという思いは強くありました。そういった意味でも、この物語を語るにはパーフェクトなタイミングだったと言えるかもしれませんね。


あとは、2度とやってこない魔法のような子ども時代と型にはめられて構築されている大人の世界、子どもの純真無垢さと大人の荒々しい暴力というのをそれぞれ対比させたかったというのもあったかなと。さまざまな苦労を経験するなかで、子どもたちの力がぐんと伸びて花が開いていくような様子をとらえたいという思いで作りました。

ビリーの視点は、自身の幼少期と共通している


―監督自身の子ども時代も影響しているとのことですが、ご自身の経験も反映されている部分もあるのでしょうか。


監督 それはけっこうありますね。実際、僕の両親は早くに離婚していて、父親はアルコール依存症でしたから。僕の場合は、3人の姉が半分母親のように僕のことをしっかりと育ててくれました。当時はつらいこともありましたが、いま振り返ると、その状況をどこか客観視しているようなところがあったので、何とか自分のなかにある希望や喜びを失わずにいられたのかなと。


子どもというのは、大人たちの大変な世界を俯瞰することができ、すべてが平和であってほしいと願っている存在のようにも感じています。ラナはビリーを演じるうえで、そういった雰囲気をうまく出してくれていましたよね。そのあたりの視点が僕の幼少期との共通点と言えると思います。


―ラナさんは本当に素晴らしい演技でしたが、演じてみていかがでしたか?


ラナさん 家庭環境など、ビリーと状況は違うものの、キャラクターに共感する感覚を得られたのは、私にとってひとつの発見でした。ビリーを通して、自分自身の心について学ぶことができましたし、演技についてもいろいろと習得できたのではないかなと。自分が好きなものや情熱を注いでいるものが何なのか、ということを改めて知るような瞬間も何度かありました。あとは、家族との関係性も深めることができた気もしています。


―映画監督としてのお父さんを現場でご覧になって、どういった印象を受けたのかについて教えてください。


ラナさん 撮影のために友達との付き合いなどを一旦中断しなければいけなかったので、正直に言うと、実はいろいろと文句もありました(笑)。それは10代の娘と父親の典型的な関係でもあるので、ケンカをすることもしょっちゅうでしたが、そこには自分の父親を父親以外の者として認めたくないという気持ちもあったのかもしれません。


ただ、父親がどういったプロジェクトを手掛けていて、そのなかでもどういった役割を務めているのか、さらに映画監督としてどういう存在なのか、といったことを客観的に見ることで、父に対するリスペクトの気持ちは芽生えました。

映画の現場よりも、子どもと向き合う毎日のほうが挑戦


―今回、ニコを演じたのも実際にラナさんの弟で、母親役も監督の奥さまでラナさんのお母さまでもあるので、ご家族で挑まれた現場でもあったかと思います。とはいえ、親子だからこそできることもあれば、親子だからこその難しさもあったのでは?


監督 僕としては、不便な点はまったくなかったですよ。もちろん、役者を演出するのは、さまざまな困難がつきものではありますけどね。ただ、自分の子どもの場合、そもそも毎日子どもと付き合っていること自体がチャレンジですから(笑)。あくまでも映画はその延長線上にあったので、特に不自由を感じることはありませんでした。


それよりも、「この子にはこんな才能があるのか」と知ることができて、アーティストとしても新たにリスペクトする気持ちにもなったほどですよ。ただ、子どもにとってはつらかったかもしれないですね。なぜなら、監督という“仮面”をかぶって、父親だったら指図しないようなこともしていたわけですから。すごく寒い状況のなかで厳しく演出することもあったので、そういう部分で子どもは大変だと感じていたかもしれません。


―ラナさんはそれを聞いていかがですか?


ラナさん そうですね、ある意味では非常にほろ苦い経験になりましたね(笑)。でも、心を裸にして演技をするうえで、監督と一から信頼関係を築かなくてよかったのは、心強かったです。父とは普段から非常によくコミュニケーションが取れているので、それは力になりましたし、一番の利点だったと思います。あとは、父が私を何よりも大切にしてくれていることがわかっていたので、失敗しそうなプロジェクトに私を起用するわけがないという安心感もありましたね。


ただ、ときおり何か文句を言いたいときに父親が監督だと相談しにくいときもありましたが……(笑)。でも、難しいシーンのときはどんな監督を前にしても、難しいものは難しいので、監督が父親だから余計難しくなるというのはありませんでした。結果的には、父に監督をしてもらえてよかったと思っています。

「スウィート・シング」とは、子どもたちみんなのこと


―タイトルには、「愛しい存在」という意味のある『スウィート・シング』が使われています。おふたりが「スウィート・シング」という言葉から思い浮かぶものは何ですか?


監督 僕はやっぱりタイトルの基になっているヴァン・モリソンの楽曲「SWEET THING」です。歌詞のなかに「僕たちは年を取ることはないさ」みたいな下りがあって、現実的にはあり得ないことですが、とても感情に響くフレーズなんですよね。それこそが、子ども時代の純真さや甘さを象徴しており、この映画のエッセンスでもあると言えるのではないかなと。ビリーというキャラクターがそれを体現してくれていますが、このフレーズにはすべてが内包されていると思います。


実は、最初にこのタイトルにしようとしたとき、「ビリーが性的対象として読み取られる可能性がある」といった懸念の声が周囲から上がり、一時は僕もやめようと考えていました。でも、どうしてもこのフレーズが僕のなかに響いたので最終的には、このタイトルに決定しましたが、いまではその思いを貫き通してよかったなと感じています。


ラナさん 私もこの映画に出演した影響を大きく受けているので、子ども時代の天真爛漫さや純真無垢さ、そしてヒューマニズムといったものを連想しますね。


監督 あと、付け加えるなら、ビリーがマリクと一緒にいるシーンこそがこの映画の精神を体現しているとも思いました。ビリーが彼に語りかけるように「SWEET THING」を歌っているシーンなんか、特にそれが伝わってきますよね。なので、「スウィート・シング」とは、ビリーであり、マリクであり、ニコであり、子どもたちみんなのことを指しているのかもしれません。

日本の映画は、潜在意識に刷り込まれている


―まもなく公開を迎える日本についてもお伺いしますが、お好きなものや影響を受けているものはありますか?


監督 やはり小津安二郎監督、溝口健二監督、黒澤明監督からは、非常に強い影響を受けています。僕はあまり学校の成績がよくなかったので、学校から逃げるようにして映画館に駆け込んでは、『雨月物語』や『七人の侍』をはじめとする彼らの作品を観ていました。その後、パリに住んでいた時期もありましたが、そのときもずっと彼らの作品は観続けていたほどですから。ちなみに、ラナはお父さんの学業がふるわなかったことと、学校をさぼっていたことは、聞かなかったことにしてね(笑)。


ラナさん あはは!


監督 あと、現代の監督で挙げるなら是枝裕和監督。『万引き家族』だけでなく、ほかの過去作も観ていますが、彼のことは“映画の兄弟”のように感じているので、彼の作品を観ると、まるで心の友が僕にいろいろと教えてくれているような感覚に陥ってしまうほど。日本の映画は、映像の構図にしても、キャラクターの人間性にしても、ドラマの描き方にしても、僕が映像作家として形成されるうえで、要素のひとつになっていると思います。


ラナさん 私は父のように具体的な名前は挙げられないですが、幼少期から父といろいろな日本の名作を見て育ったので、そういったものが潜在意識として刷り込まれているように感じています。


監督 確かに、おとぎ話を語り聞かせるように、日本の映画をずっと見せていましたからね。

子ども心や喜びを再燃させてくれる作品になっている


―日本での劇場公開作品は25年振りとなりますので、待ち望んでいた日本のファンに向けてメッセージをお願いします。


監督 「日本のファンに向けて」ということですが、ファンではない方にはまずこの映画を気に入ってもらって、ぜひ僕のファンになってもらいたいですね(笑)。この映画をご覧になってくださる方に伝えたいのは、「みなさんが映画を観ているとき、僕はあなたたちのそばに一緒にいますよ」ということです。


日本で公開されるのは本当に光栄なことでもあるので、ぜひみなさんの感想をお待ちしています。僕は宇宙飛行士のような特別な存在のためではなく、みなさんのために映画を作り、そして対話をするために作っているので、ぜひ日本のみなさんがどう感じたのかフィードバックをもらえたらうれしいです。


ラナさん 私はキャストとスタッフ全員を代表して言いますが、日本でこの映画が公開されることにとても興奮しています。そして、この映画を支えてくれるみなさんにも改めて、感謝の気持ちを伝えたいです。ぜひ、みなさんのなかにある子ども心や喜びを再燃させてくれるような作品になってくれたらいいなと願っています。

悲しみと幸福が入り混じったファンタジー!


子どもの頃にしか味わえないきらめきと、かけがえのない一瞬をとらえた本作。そのなかで描かれる幸せと悲しみ、そして愛情の深さに心が動かされるのを感じるはずです。ラナさんの繊細で瑞々しい演技も、ぜひお見逃しなく。

取材、文・志村昌美

愛の詰まった予告編はこちら!


作品情報

『スウィート・シング』

10月29日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺他全国順次公開

監督メッセージ動画+スペシャル Q&A 動画の限定上映が決定(映画館によって上映⽇・上映回は異なります)

<『スウィート・シング』公開記念>

ロックウェル監督作『イン・ザ・スープ』(1992)が新宿シネマカリテにて10月29日(金)~11月4日(木)1⽇1回上映、他全国にて上映予定

配給:ムヴィオラ


©2019 BLACK HORSE PRODUCTIONS. ALL RIGHTS RESERVED

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2021年10月28日 19時00分

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