ある日突然、妻に余命宣告...崩壊しかけた家族を救った奇跡の友情

2021年10月14日 19時30分

エンタメ anan

この秋も続々と話題作が公開を迎えるなか、注目したいのは、全米雑誌賞に輝いた珠玉のエッセイを映画化した1本。今回ご紹介するのは、温かくも胸を締めつける実話をもとにした感動作です。

『Our Friend/アワー・フレンド』


【映画、ときどき私】 vol. 418


仕事に打ち込み、各地を飛び回っていたジャーナリストのマット。ときにぶつかり合いながらも、妻で舞台女優のニコルとともに、2人の幼い娘を育てながら毎日を懸命に生きていた。ところがある日、ニコルが末期がんの宣告を受け、一家の生活は一変してしまう。


妻の介護と子育てによる負担に押しつぶされそうになっていたマットのもとにやって来たのは、かつて人生に絶望したときに2人から心を救われた親友デイン。数週間の滞在予定だったが、デインは2年にも及ぶ闘病生活をマットとニコルとともに送ることになる。3人の想いと苦悩が交錯するなか、彼らが見つけた希望とは……。


アメリカの映画レビューサイトRotten Tomatoesでは、観客から95%もの高い支持率を誇りっている本作。今回は、誰よりも思い入れの強いこちらの方にお話をうかがってきました。

原作者のマシュー・ティーグさん


妻ニコルさん(写真・右)との壮絶な闘病生活とともに、親友であるデインさん(左)との友情を描いたエッセイで全米に大きな反響を巻き起こしたジャーナリストのマシューさん(中央)。現場で見た撮影の裏側や自身の体験を通して伝えたいことについて、語っていただきました。


―自分の人生を映画として観るというのはあまりない経験だと思いますが、作品をご覧になったときはいかがでしたか?


マシューさん 今回は現場に行ったり、編集の様子をのぞいたりと制作過程を見続けてはいましたが、やはり完成版を最初に観たときは、非常にエモーショナルな気持ちになりました。こういう形で自分の人生の記憶を振り返り、改めて経験することはなかなかないことですからね。特別なことだと思います。


―そのなかでも、印象に残ったシーンはありましたか?


マシューさん 僕のお気に入りは、デインとマット(※)がハイキングに行くシーン。川に飛び込む様子は、実際の瞬間にとても近い形で再現されていたので、そのときのことを思い出して、すごく幸せな気持ちになりました。


※劇中で、マシューさんの呼び名はマット。


―今回はハリウッドでもトップクラスの俳優であるケイシー・アフレックさんがご自身を演じていますが、これは特別なことだったのではないでしょうか。


マシューさん そうですね。ただ、友達とディナーを囲んでいるときに、「もし自分の人生を映画化したら、誰に自分を演じてほしい?」みたいな話をすることがあっても、僕はもうこの話題には参加できないんだなとは思いましたけど(笑)。というのは冗談で、ケイシーのようにオスカーを獲っているほどの素晴らしい俳優に演じてもらえて本当に光栄なことだと思っています。

俳優たちは深みを持って見事に演じてくれた


―現場でケイシーさんから意見を求められたり、質問されたりしたことはありましたか?


マシューさん すでにいい脚本ができていたので、感情面について改めて僕から説明する必要はありませんでした。ただ、ジャーナリストという仕事はどういうものなのか、治安の悪い国に行ったときどういう気持ちだったのか、といったことについては聞かれることが多かったですね。


―実際にケイシーさんが演じている姿を見て、感情が動かされる瞬間もあったのではないかなと。


マシューさん 確かにいくつかのシーンでは、見ているだけで苦しく感じることもありました。特に、妻が娘たちに末期がんであることを伝えるところは、自分の人生のなかでもっともつらい記憶のひとつですから。ただ、それを俳優たちみんなが深みを持って演じてくれたと思います。


―ニコル役のダコタ・ジョンソンさん、デイン役のジェイソン・シーゲルさんのパフォーマンスについても、どのように感じたのかを教えてください。


マシューさん 僕にとってニコルとデインは誰よりも近い人物なので、何かあればすぐにでも違和感を抱いてしまうだろうと身構えていたのですが、そういったことを感じることはありませんでした。それぐらいダコタとジェイソンは2人の精神や魂をしっかりと表現してくれていたと思っています。


僕とニコル、デイン、そして娘たちにとって、あの時期は本当に強烈な出来事だったので、それをこれだけ素晴らしい俳優たちに演じてもらうというのは貴重な体験になりました。


―デインさんは、この作品をどのようにご覧になったのでしょうか?


マシューさん 実は映画を観た後も、デインとはあまり詳しい話をしていません。なぜなら、僕たちはまるで一緒に戦争を生き延びたかのような感覚があるので、あえて言葉にする必要がないものがたくさんあることを知っているからです。でも、この作品が何か人の助けになるようなものになってほしいという気持ちでいるとは思います。

これからも親友のことを愛し続けていきたい


―家族でも向き合うのが難しい闘病生活に、友人が2年間も寄り添うのは稀なことだと思います。デインさんをそのような行動に駆り立てたものは何だったのでしょうか?


マシューさん 人の動機というのは複雑なものですからね。親友といえども、心のうちを推し量るのは難しいものだと思います。ただ、当時の彼は人生に迷っているところがあったのも大きかったのかなと。そんなときに僕たち家族が誰かの助けを必要としていることに気がつき、彼は大きな犠牲を払ってでも僕たちといることを選んでくれたのです。とはいえ、当初はホリデー期間中の数週間だけいるつもりだったとは思いますが……。


―この経験がその後のデインさんに、影響を与えている部分もあるとお感じになりますか?


マシューさん 本人から直接聞いたわけではないですが、「自分にとって大切な人間関係とは何か」ということを前よりも考えるきっかけにはなったんじゃないかなと思います。そのあと彼は結婚もしましたからね。


―面と向かっては言えないけれど、いまデインさんに伝えたいことは?


マシューさん アメリカでは肩を小突いたり、ジョークを言ってからかったりすることでお互いの愛情を表現するのが親友の関係。だから、あまり口に出して言ったことはないですが、ひとつ言えるとすれば、いままでも彼のことをずっと愛してきたけれど、これからも愛し続けていきたい、ということだけですね。

死については、もっと正直に話し合うべきと感じた


―素敵な関係ですね。今回は、事前に脚本を細かくチェックしていたそうですが、改めて当時を振り返る作業を繰り返すなかで、新たな“気づき”のようなものもあったのではないでしょうか。


マシューさん これはいままで誰にも聞かれたことのない特別な質問ですね。だからこそ、答えるのが難しくもありますが、僕にとってそういったものはゆっくりと時間をかけて見えてくるものだと思いました。それは、何年も葛藤して、苦労するなかで生まれる“人生の知恵”みたいなものと言えるかもしれません。


ただ、今回はこの映画を作ったことによって、当時のことをより深く思い返すことができたのはないかなと。人の心というのは、つらい記憶やトラウマをなるべく忘れようとしてしまうものですが、この経験を通して自分のなかに思い出として留められるようになったのは、うれしいことだと感じています。


―本作を手掛けたガブリエラ・カウパースウェイト監督は、マシューさんたちの物語から「人生はフェアじゃないけど美しい」と感じたのだとか。ご自身は、人生観や死生観に変化はありましたか? 


マシューさん 僕自身は敬虔なクリスチャンなので、死生観が揺らぐことはありませんでしたが、アメリカでは死について語る文化がないことには気づかされました。非常に婉曲的に扱われていることが多いと感じたので、いまの僕が改めて伝えたいのは、死についてはもっと正直に話し合うべきであり、学ぶべきであるということです。誰だっていつかは向き合わなければならないことですからね。


それと同時に僕が学んだのは、自分が愛する人たちとの友情がいかに美しく、いかに人の心を慰めてくれるものであるかということ。今回の経験から、たとえ犠牲を払ってでも得る価値があるものだというのを改めて教えてもらったように感じています。

周りの人たちを大切にして、これからも生きていきたい


―職業柄、言葉の持つ力を感じていらっしゃると思いますが、ご自身が人生において大切にしている言葉があれば、教えてください。


マシューさん 先ほどお話したように、僕はクリスチャンなので、そこにつながってくるものになりますが、心に留めている言葉は、イエス・キリストの「汝の隣人を愛せよ」。隣人というのは、自分たちの周りにいる人みんなという意味がありますが、まさにこの映画でもそこを描いているんじゃないかなと。


みなさんにも、「周りの人たちを大切にして、愛していこうよ」というふうに感じていただきたいですね。僕自身もこれからの人生をそうやって生きていきたいと思っているので、みなさんにもこの言葉を届けたいです。


―まもなく日本での公開を迎えますが、日本に対する印象などがあればお聞かせください。


マシューさん 日本といえばディテールを大事にする国として、アメリカでは認識されていますが、それはものづくりや礼儀正しいみなさんの振る舞いにも表れているように感じています。そういうところは、本当に素敵なことですよね。僕自身も他人を大切に思いながら、みなさんのような振る舞いができるようになりたいと考えています。


―ありがとうございます。それでは最後に、この作品を通して観客に伝えたいことをメッセージとしてお願いします。


マシューさん 原作となるエッセイでは、死に直面することの意味を恐れることなく真正面から描くことを意識していました。僕も最初は勇気がなくて、自分でも受け止めきれていませんでしたが、そこに助けに来てくれたのが友人です。


なので、もしみなさんの周りにいる大事な人や家族が葛藤しているのを見たら、できるだけ彼らに助けの手を伸ばしてほしいと思っています。そして、それとは逆に誰かが自分に助けの手を伸ばしてくれたら、それを受け入れる素直さも持ってもらえたらいいかなと。そういったことを少しでも考えるきっかけになる作品になっていたら、うれしいです。

愛情と友情が生んだ“希望の光”が、観る者の心を照らす!


生きることや死ぬこと、そして人と人との絆など、誰の人生にも欠かせない大切なものの意味を考えずにはいられない真実の物語。家族の愛情や友情が持つ美しさと強さに心を揺さぶられ、涙以上の思いが込み上げてくるのを感じるはずです。

取材、文・志村昌美

胸に迫る予告編はこちら!


作品情報

『Our Friend/アワー・フレンド』

10月15日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

配給:STAR CHANNEL MOVIES


© BBP Friend, LLC – 2020

©Courtesy of Matthew Teague

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2021年10月14日 19時30分

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