宝塚退団から6年、柚希礼音の現在地とは 「自分を育ててもらえるような役とまた出合いたい」

2021年09月13日 20時10分

エンタメ anan

舞台人としての圧倒的な華と、心が伝わる芝居、ダイナミックなダンスで観客を魅了してやまない。宝塚退団から6年。柚希礼音さんの現在地とは。

男性を演じても女性を演じても、大事なのは心だなと。



もともとスターの器を持って生まれたきた人だ。しかし、今年の初夏に上演されたミュージカル『マタ・ハリ』での柚希礼音さんの、有無を言わせぬカリスマ性と毅然とした美しさには圧倒されるばかりだった。マタ・ハリとは、世界が戦争に駆り立てられていた20世紀初頭、フランスを拠点に国境を越え活躍していたダンサー。柚希さんにとっては‘18年の初演以来3年ぶりに演じた役。前回も高い評価を受けていたが、今回のマタの神々しさに、やはりこの人は真ん中に立つべき人なのだと再認識した。そんな感想をぶつけると、少し恐縮しつつも笑顔で、「自分でもよくわからないけれど、何かが起きていたんですよね」と続けた。


「私自身、舞台上に立っていることを忘れてマタ・ハリとしてそこにいるような感覚になったんです。だからご覧になった方がそう感じてくださったなら嬉しいです。じつは初演の時は、自分が女性を演じることに対してまだまだ戸惑う部分もあったんですね。稽古場では女性っぽくいなければと思いすぎて、演出の石丸さち子さんに『ぶりっ子してるように見える』って指摘を受けたりもしました。今回は前回以上に強く、誰にも媚びず、もっとカリスマで規格外の女性にと言われて、最初はこんなに強くて大丈夫かなと思いました。自分のけがれた過去を語る場面も、小さい声で歌っていたら、『そここそ大きく歌うのよ』と。結果、仁王立ちでいていいんだってところに辿り着いたんですよね」


宝塚歌劇団を退団して約6年。在団中は、その実力と人気でレジェンド級トップスターと謳われた人。しかし、女優として歩いてきた年月に対しては「難しかった」と振り返る。


「この身長といい肩幅といい、男役というものが自分の何もかもに合っていたんですよね。その前にバレエをやっていた時は身を縮めるようにしてきたからこそ、男役になって、伸び伸びできて体が喜んでいるのを感じましたし。だからこそ、男役を卒業してここから女性を演じるってなった時に、どうしたらいいんだろうって途方に暮れてしまって」


それまで自身の強みになっていた体格がコンプレックスに感じられ、男役として積み上げてきたさまざまな技術やキャリアは必要のないもののように思われた時期も。


「語尾に『~だわ』ってつけると、心がザワザワしたり。衣装でワンピースを着ている自分が落ち着かなくて、しっかり役に入れないまま舞台に立ってしまったこともありました。コンサバな服で取材を受けた時に、あまりに自分に似合っていなくて、もう終わったと思ったことも。その頃は『髪は伸ばすんですか?』『スカートはいつはきますか?』『ネイルはしてみました?』というような質問を受けることが多くて、逆にそうしないといけないのかなと悩んだり」


そんななか、女性としての居方や振る舞いを「その時その時の役が教えてくれた」と話す。


「研1(宝塚入団1年目)から男役を始めたのと同じ感覚で。この人はこういう歩き方でこういう喋り方をするんだっていうところから、女性としての型や心を学んでいったような気がします」



なかでも大きなターニングポイントになったのが初演の『マタ・ハリ』。


「それまでは役をいただくたびに、ファンの方はこれをやることをどう思うんだろうと気にしていました。とくにマタ・ハリは、露出度の高い衣装もあるので、きっと見たくないだろうなと心配したことも。でも、私が本気で役に挑んだら、みなさんそれを受け入れてくれたんです。退団後も応援してくださる方々は、私が男っぽいから好きなわけではないんだということがわかって、そこからは自分が心惹かれる作品や役に真摯に向かっていこうと思えるようになりました。自分にとってそれはすごく大きなことで、宝塚時代に男役として進むべき道を教えてくれた、『スカーレット・ピンパーネル』のショーヴランという役と同じくらいの意味を持っているんです」


そこから、初のアングラ劇に挑戦となった『唐版 風の又三郎』や、ヒロインの歌姫を演じた大ヒット映画の舞台化であるミュージカル『ボディガード』、主人公の少年を導いていくバレエ教師に扮したミュージカル『ビリー・エリオット』など、さまざまな役を経験してきた。


「いろいろな女性の型を学んでいくなかで辿り着いたのは、結局、男性を演じても女性を演じても、大事なのは心だなということでした。よく考えれば男役もそうだったんですよね。宝塚で約10年かけて男性に見せるための所作を学び、身ぶり手ぶりを身につけてからは、仁王立ちじゃなく立っていても、男役としての型じゃない脚の組み方をしても、男としていられるようになって。そこからは、型よりも心を追求していくことに意識を向けるように変わっていきました。今ようやく、いろんな役から学んできた“型”をあまり意識しなくても女性として舞台上にいられるようになり、役の心と向き合う段階に少しずつ入ってきたのかなと感じています」


そんなタイミングで迎えるのが、退団後からスタートさせ、今回で第4弾となる自身のソロコンサート『REON JACK4』だ。


「宝塚にいた時は、普段もカッコよくいたほうがいいんだって思って過ごしていました。でも、退団して男役ではない自分として出ていかなきゃいけなくなった時、“全部はカッコよくできないですけれど、心を少しオープンにします”って始めたのが、このコンサートです。ショーの場面では、普段の自分を忘れて思いっきり世界観に入り込める瞬間があったりするのですが、トークの場面になるとそのままカッコよくいられなくて…。それでも応援してくださる方々と、より強い信頼関係を築けた場所な気がします」


コンサートと銘打ってはいるが、毎回、柚希さんの代名詞でもある高い身体能力を生かしたダイナミックなダンスもふんだんに盛り込まれる。


「自分の芸事の原点にあるのがバレエで、やっぱりダンスは自分にとっては切っても切れないもの。たぶん私は、ダンスというものが好きになるように生まれてきたんだと思うんです。子供の頃、どんな習い事をしても嫌だったのが、初めてバレエをやった時に本当に楽しくて嬉しかったのを今も覚えています。それまでは授業で当てられても人前に出たくないと思っていたのが、バレエでなら表現できた。踊っていると、自分自身がいろんなものから解放されて、血管というか…細胞全体が喜んでいる感じがするんですよね。踊れば踊るほど、魂が浄化されていくような不思議な心地よさがあって。ただ、宝塚を退団すると、ミュージカルの中で少し踊る場面があっても、ショーのようにたっぷり踊れる機会って少ないんです。だから私にとって踊る場所として『REON JACK』はすごく大事なんです」


しかも、ただ得意なダンスを踊るだけにとどまらない。バレエはもとより、アルゼンチンタンゴや、ヒップホップやロックなどのストリートダンス、そしてコンテンポラリーと、新たなダンスにも挑戦している。


「ひと言でダンスと言っても、種類によってリズムのとり方も、使う筋肉も見せ方も全然違うんです。私のようなバレエ経験者は、ヒップホップが苦手な人が多くて、宝塚時代も自分は必死なのに、動きがダサいってよく言われていたくらい(笑)。前回初めて挑戦した男女ペアのコンテンポラリーでは、テコの原理でお互いがお互いの動きを利用し合うことで振りがどんどん発展していくのが、初めての経験で興味深かったです。私自身は、バレエだけを続けていくことの厳しさを痛感して宝塚という道に進むことを選びましたけれど、『REON JACK』に参加してくださっているのは、ダンスの道一本でやり続けてこられた超一流の方々ばかり。やればやるほど、リスペクトが止まりません。そのみなさんは、私がなかなか習得できない動きがあっても、振りを簡単にしようとはしてくれないんですよね。初日までには絶対できるようになるから大丈夫って、つねに私の前に高い壁を用意してくださるありがたい存在です」


今回は3年ぶりの開催。今、生のエンターテインメントにとって困難な状況にあるが、どんな趣向を考えているのだろうか。


「これまで私、ファンの方との心と心のキャッチボールをずっと大切にしてきたつもりなんですね。でもこんな情勢になってからは、みなさんと繋がろうと思ってもオンラインイベントとかになってしまって、すごく寂しかったんです。これまでのようにコールアンドレスポンスのようなことは難しいかもしれませんが、心のキャッチボールができて、久々に柚希礼音そのものに触れたって感じていただけるものにしたいと思っています。ストリートダンサーのYOSHIEさんからは、今回はパンキングのレッスンに来るよう言われていますし、振付で参加してくださる辻本知彦さんには、上野水香さんや宮尾俊太郎さんの場面を作っていただきます。演出も手がけるSHUN先生は、明るいのになんだか涙が出ちゃうストーリー性のある場面を作る方なので、楽しみなんですよ。ここまでの我慢や張り詰めてきた気持ちが少しでもほぐれて、面白かった、楽しかった、幸せだったと思ってもらえたら嬉しいです」


宝塚在団中も今も変わらず、芸事にはストイック。しかし、以前に比べてどこか肩の力が抜けて、ほがらかで柔らかな印象を受ける。


「もう、あまり無理して肩肘張らなくてもいいかなと思っているんです。作品に向かっている時は、それでも自分を追い込んでしまうんですけれど、それ以外のことなら無理して頑張るのはやめて、しっかり休もうという考え方になりました」


もともとは、休みとあらばここぞとばかりに予定を詰め込んでいたというが、昨年のステイホーム期間を経て、家で過ごす時間がいかに大切か実感するようになったそう。


「休みの日は朝から晩まで体のメンテナンスの予約を入れて、家は寝られればいいやみたいな感じだったんです。でも、家にいる時間が増えて、もっと広いベランダが必要だったなって思って、最近は物件ばっかり見ています。以前は公演がひとつ終わると海外旅行に出かけるのがルーティンでした。海外で何をしているかといったら、ホテルのベランダのチェアに座って、風を受けながらボーッとしていることが多かったんです。今は海外に行けない代わりに、家のベランダにソファを置いて、そこで台本を覚えたり、スマホのチェックをしたりしています。あとは、必要に迫られて料理をするようにもなりました。一度に大量に作って、同じものを何食か続けて食べているんですけれど(笑)」


そんな柚希さんに、いま挑戦してみたい作品や役柄を伺った。


「まだまだ女として勉強中なので、何でもやってみたいんですよね。マタ・ハリのように、演じることで自分を育ててもらえるような役とまた出合いたいし、すべての公演がそうなれたら幸せですよね。これまでずっと目の前のことを一生懸命やって次に繋げてきたので、あれこれ考えすぎず、目の前にあることを無理なくしっかりやっていきたいです」


『REON JACK 4』 歌のみならず、各ジャンルの第一線で活躍するダンサーたちとのハイレベルなパフォーマンスやトークなども交えたショースタイルのコンサート。日替わりでさまざまなゲストも。9月11日(土)・12日(日)東京ドームシティホールほか、北九州芸術劇場大ホール、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演。チケットスペース TEL:03・3234・9999(平日10:00~12:00、13:00~15:00) 


ゆずき・れおん 大阪府出身。1999年に宝塚歌劇団に入団し、星組に配属。下級生時代から、そのスター性の高さとダンスの実力で注目され、数々の作品に主演。2009年に星組トップスターに就任し、約6年もの間、組を牽引し続け、‘15年に退団。退団公演の千秋楽には、史上最多となる1万2000人ものファンが劇場前に集まり話題に。退団後は舞台を中心にさまざまな作品に出演。来年1~2月にはミュージカル『ボディガード』への出演が決まっている。


シャツ¥48,400 スカート(ライナー付き)¥66,000 コルセット¥231,000(以上Chika Kisada/エドストロームオフィス TEL:03・6427・5901) 上につけたイヤカフ¥220,000(RIEFE/リーフェ ジュエリー TEL:03・6820・0889) 下につけたイヤカフ¥18,480(KNOWHOW/ノウハウ ジュエリー TEL:03・6892・0178) その他はスタイリスト私物


ノースリーブコート¥308,000 パンツ¥96,800(共にMax Mara/マックスマーラ ジャパン TEL:0120・030・535) ピアス¥1,408,000(MESSIKA/メシカ ブティック 日本橋三越本店 本館6階 TEL:03・6262・7688) バングル¥105,000(Buccellati TEL:03・4461・8330)


レザーコート¥286,000 パンツ¥82,500(共にSportmax/マックスマーラ ジャパン) ネックレス¥201,300 上につけたイヤカフ¥220,000(共にRIEFE/リーフェジュエリー) 下につけたイヤカフ¥18,480(KNOWHOW/ノウハウ ジュエリー) その他はスタイリスト私物


※『anan』2021年9月15日号より。写真・Takanori Okuwaki(UM) スタイリスト・後藤則子 ヘア&メイク・赤松絵利(ESPER) 取材、文・望月リサ


(by anan編集部)

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