衝撃事実! 男性だけの行事に女性が乱入して...根強い「男女平等の壁」

2021年05月21日 19時30分

エンタメ anan

男女平等が声高に叫ばれているものの、まだまだ乗り越えなければならない“壁”が多く存在しているのが現実。そんななか、あるタブーを覆した女性が発端となって起きた事件をもとにした注目作をご紹介します。

『ペトルーニャに祝福を』


【映画、ときどき私】 vol. 379


大学で学んだ知識を生かす仕事に就くことができず、ウェイトレスとして働く32歳のペトルーニャ。母親の知人に紹介された縫製工場へ面接に行くものの、面接担当の男性からは「仕事ができないうえに、見た目もそそらない」という言葉を吐き捨てられてしまう。


最悪の面接からの帰りにペトルーニャが遭遇したのは、司祭が川に投げ込んだ十字架を最初に見つけた男性は1年幸福に過ごせると信じられている祭だった。半裸の男たちが川のなかで競い合うなか、思わず川に飛び込んだペトルーニャは十字架を手にする。しかし、女性が十字架を取ることが禁止されているため、群衆は怒り狂うことに。はたして、ペトルーニャの運命は……。


2014年にマケドニア東部の町で行われた祭で、女性が十字架を取って騒ぎになったという実際の出来事がもとになっている本作。ベルリン国際映画祭では、エキュメニカル審査員賞とギルド映画賞をW受賞するなど、高く評価されています。今回は、その背景についてこちらの方にお話をうかがってきました。

テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督


北マケドニアの首都スコピエ出身で、芸術一家に生まれたミテフスカ監督。2001年に監督デビューを果たして以降、さまざまな作品を送り出し、世界各国の映画祭で注目を集めている存在です。そこで、本作を通して描いている女性の思いや監督自身の経験などについて語っていただきました。


―本作は実在する女性が起こした騒動がもとになっていますが、彼女の行動がきっかけとなって、ほかの女性たちに何か変化を与えたところはありましたか?


監督 彼女が周りから受けた扱いを見て、多くの女性たちが脅威を感じてしまったところがあるかもしれません。しかし、そのいっぽうで彼女から勇気をもらった女性もいたようで、2019年にふたたび若い女性が男性と一緒に川へ飛び込んで十字架を手にするという出来事が起きました。ちなみに、そのときは5年前とは違って、何の問題もなく女性が十字架を手にすることができたそうです。


私が本作を制作していたときは、この題材をテーマにすることに対して風当たりが強いところがありましたが、彼女が十字架を手にすることができたということは、間違いなく北マケドニアにも変化が訪れている証拠だと思います。


―実際、作品を観た人たちの感想はどのようなものだったのでしょうか?


監督 いろいろな反応がありましたが、前提として、そもそもこの映画自体が北マケドニアの観客にとっては、難しいところがある作品であると言えると思います。


なぜかというと、「自分たちは何者なのか」「自分たちの物事のやり方は正しいのか」といったあまり向き合いたくない現実をはっきりと描いている作品だからです。みなさんも、自分を鏡で見て、「自分のここは間違っている」と指を差すのは簡単なことではないですよね? この作品は、北マケドニアの人たちにとってそういう意味合いのある映画でもあるのです。

いままさに変化のときを迎えていると感じる


―なるほど。ちなみに、女性と男性では受け取り方もかなり違いがありましたか?


監督 さまざまな感想がありましたが、多くの女性たちは自分のつらい経験を話してくれたうえで、「これからは自分らしく生きます」とか「勇気をもらいました」と言ってくれました。


男性のなかには「自分たちの国をこんなふうに描くなんて」と罵る方もいれば、心から支えて応援してくれる方もいたので、本当にいろいろなリアクションがありましたね。でも、それは同時に北マケドニアの社会がいままさに変化を迎えているということの表れでもあると思うので、私としてはポジティブなこととして捉えています。


―日本でも女人禁制の祭はいまでも存在していますし、国技と言われる相撲も女性は土俵に上がることさえも禁止されています。そんなふうに、現在でも世界中で女性禁止の伝統行事が数多くあることを監督はどのように思っていますか? 


監督 まず、伝統というのはとても重要なものだと考えています。なぜなら、それによって私たちが誰であって、どこから来ているのかというのを文化的に定義づけてくれますし、私たちと深くつながっているものだからです。歴史的に見ていくと、もともと母権主義だった社会が父権主義へと移行していった社会も多いので、家父長制を構築する過程の一部として女性の参加を禁じる伝統行事が生まれたのではないか、と私は考えています。


ただ、私たちがいま生きている世界というのは、変化しつつあるので、こういったことに対する人々の認識もどんどん向上していますし、表現の自由というものが昔より重要になっていますよね? だからこそ、過去のままでは合点がいかないことも出てきてしまうのだと思います。


それらをすべて捨て去る必要はないにしても、あるべきバランスを見ながら再定義していくほうがいいのではないかなと。その変化というのは、決して伝統を滅ぼすものではなく、より美しくなるためのものだと考えています。

女性の問題が改善することを期待している


―ペトルーニャについても、おうかがいしますが、彼女は30代を超えてもいい仕事に就けず、恋人もいない女性という設定です。このようなキャラクターにしたのは、なぜですか?


監督 彼女のような女性は典型的なタイプではありませんが、北マケドニアの社会が抱える悲劇的な2つの側面が彼女の設定には深く関わっています。1つ目は、若者のなかで職業に就けていない人が多いこと。現在、その割合は全体の35%を占めていると言われており、これはかなり絶望的な数字だと思っています。


2つ目は30歳を過ぎて未婚だと、結婚できないと思われていること。劇中でもペトルーニャが母親から言われていることですが、だいたい30歳までに家庭を作ることが北マケドニアの伝統的なルールだとされています。


そういったこともあり、そんなことをすべて吹き飛ばすような存在としてペトルーニャを描きました。北マケドニアだけでなく、世界中の女性たちが古いルールから抜け出そうとしていますが、社会というのはそんなふうに変化するタイミングというのが必ずあるものなのです。


―確かに、その通りですね。また、劇中では男性からのセクハラや言葉の暴力についても描かれていますが、ここに込めた思いについて教えてください。


監督 面接のシーンでペトルーニャの身に起きるセクハラやパワハラのようなことは、おそらく多くの女性たちが何らかの形で経験していることだと思っています。それは非常に残念なことではありますが、こういったことをオープンに話せる時代になり、問題が表面化してきているので、これからいい方向に変わっていくことを期待しているところです。


ただ、私もこの映画を撮影しているときに男性たちからひどい言葉をたくさん浴びせられ、言葉の暴力を何度も経験しました。そういった現実に直面すると、大切なのは教育なのではないかと感じています。

周りに合わせず、自分自身を保ってほしい


―そうですね。北マケドニアの若い世代では、考え方にも変化が表れていると感じていますか?


監督 今回、この映画をきっかけにさまざまな地域の高校生と話をする機会がありました。そのときに、こういったことに対して若い世代の向き合い方が素晴らしいと感じることが多かったので、いまは希望を抱いています。昔に比べると彼らは非常にオープンな考え方を持っているので、その様子はとても美しかったですね。


―監督も過去には、つらい経験を味わったこともあったのでしょうか?


監督 私が17年前に初めて長編映画を作ったときは、まだユーゴスラビアの一部だったので、北マケドニアの映画業界は成熟していませんでした。スタッフも数が限られていましたし、私以外は50歳以上の男性スタッフしかいない状況。最初の3本はそういう環境で映画を作らなければいけなかったので、とにかく男っぽく振る舞う必要がありました。


でも、あるときに「私は映画を作るのと同じくらいエネルギーを使って、自分ではない誰かの振りをしようとしているのではないか?」ということにふと気がついたんです。そんな状況にいるなかで、「女性である自分が監督として現場にいることは普通なんだ」と自分を受け入れて、自分を解放するのは大変なことでした。


実際、居心地のいい環境にすることと、自分を問い詰めることをやめるまでには何年もかかりましたね。特に、男性社会にいる女性というのは、どうしても周りに合わせようとしてしまうので、それを乗り越えることはなかなか難しいことだと思います。


―それでは最後に、日本の女性たちに向けて、アドバイスがあればお願いします。


監督 まず伝えたいのは、自信と勇気の両方を持ってほしいということ。そして、あまり自問しすぎないことですね。あとは、自分の直感を信じることも大事だと思っています。なぜなら、直感というのは、意外と真実につながっていることも多いものですからね。いまは自分らしくいることもできるようなった素晴らしさもある時代になったので、あまり自分を周りに合わせるようなことをせずに、自分自身を保ってほしいと思います。

誰にでも、戦うべきときがある!


ときには、自分らしく生きることに難しさを感じることはあるけれど、そんなときこそ勇気を与えてくれるペトルーニャの姿。自分が一歩踏み出すことで世界を変えられること、そして誰でも“幸せの権利”を手にすることができるのだと教えてくれるはずです。

取材、文・志村昌美

気持ちが高ぶる予告編はこちら!


作品情報

『ペトルーニャに祝福を』

5月22日(土)より、岩波ホール他全国順次ロードショー

配給:アルバトロス・フィルム


©Sisters and Brother Mitevski Production, Entre Chien et Loup, Vertigo.Spiritus Movens Production, DueuxiemeLigne Films, EZ Films-2019 All rights reserved

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2021年05月21日 19時30分

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