大女優イザベル・ユペールが日本を絶賛「フランス人の多くが魅了されている」

2020年12月09日 19時10分

エンタメ anan

さまざまなイベントが中止や延期を余儀なくされた今年。そんななかでも、各主催者の尽力によってなんとか開催へとこぎつけているものもありますが、そのひとつが「フランス映画祭2020 横浜」。毎年6月が恒例ではあるものの、ようやく12月に開幕することとなり、映画ファンにとってはひと足早いクリスマスプレゼントとなりそうです。そこで、こちらの方々にお話をうかがってきました。

女優イザベル・ユペールさん&ジャン=ポール・サロメ監督


【映画、ときどき私】 vol. 347


今回、貴重なお時間を割いてくださったのは、映画祭において本年度のフランス代表を務め、日本にも多くのファンを持つ大女優イザベル・ユペールさんと主演最新作『ゴッドマザー』でタッグを組んだジャン=ポール・サロメ監督。フランス映画界を代表するおふたりに、映画にしかできないことや日本への思いについて語っていただきました。


―まずは、映画祭に関わるうえで楽しみにしていることはありますか?


ユペールさん 私が期待しているのは、日本にいる多くの観客がフランス映画と出会うこと。それに貢献し、映画や映画に対する愛を讃えているこの映画祭は、とても重要な存在だと思っています。私自身もフランス映画祭で何度か日本を訪れたことがありますが、毎回日本のみなさんの映画に対する熱狂的な思いを感じることができました。これは私にとって本当に大きなことなんですよ。


―では、ご自身の作品が映画祭のオープニング作品として、遠く離れた日本で上映されるいまのお気持ちを監督からお聞かせください。


監督 フランス映画祭は、フランスの映画界にとっても大切な映画祭なので、そのオープニングで自分の作品が上映されることは、非常に誇らしいことです。ただ、今回横浜に行けないのは、とても残念なことですね。新作が日本でどのように受け入れられるのかを直接見たいと思っていましたから。ただ、作品が海外に出て、国外でも存在していることは重要だと感じています。


―それはなぜでしょうか?


監督 たとえば、『ゴッドマザー』はコメディではありますが、いまのような難しい時期のなかでも、問題解決につながる何かをどこの国の観客にももたらすことができると思っているからです。そんなふうに、この映画の持っている感動が国境を越える瞬間を見たかった気持ちはありました。でも、心配はしていません。


なぜなら、フランス以外の国でもヒットを記録しており、この映画の持っている普遍性はすでに証明されているからです。私にとって、自分の作った映画が海外で封切られることは夢のひとつでもありますが、この作品によってそれをまた実現することができました。

女性が徐々に変わっていく様子に注目してほしい


―ananwebでは今年の8月に公開された主演作『ポルトガル、夏の終わり』でも、ユペールさんにお話を聞かせていただきました。その際、役作りは内面よりも形から入るタイプとおっしゃっていましたが、この作品ではどのようなことを意識されていたのでしょうか?


ユペールさん 今回演じた役は、人目を引くようなところがあるとても魅力的なキャラクター。特に、ある重要な場面においては、お金持ちのアラブ人女性に変装もしているんです。


そんなふうに、その過程ごとに彼女自身も徐々に変化していく様子を表さなければならなかったので、今回もすべての衣装に意味がありました。冒頭で着ていたセーターからだんだん変わっていく服のテイスト、そして内面的にも別の女性へと変わっていく様子は注目してほしいですね。


―監督は、ユペールさんと一緒の現場を通して感じたことはありましたか?


監督 イザベルが素晴らしいのは、具体的なところを重視する点ですね。というのも、脚本を書いて、人物像がいったん決まってしまうと心理的な側面を気にしなくなってしまいがちなんですが、彼女はいつも一緒に何かを探してくれようとしていました。


それによって、ときには脚本に書かれていることを超えた映像を作り出すことができたので、作品をよりよいものにするための建設的な会話をつねにできていたように感じています。彼女は映画作家にとって、とても刺激的な存在なんですよ。


―おふたりにとって、非常に充実した現場だったんですね。


監督 そうですね。お互いに本質的なところに直行する性質を持ち合わせているので、映画の素材自体を大切にし、無駄なことに頭を悩ませることもありませんでしたから。私はそういったときに発揮される彼女のエネルギーが好きでしたが、彼女もまた同じような考えを持つ私のことを必要としてくれていると感じることができました。


そういう意味でも、私とイザベルはとても気が合っていたと思います。もちろん撮影は仕事ですから、いつもずっとふざけ合っていたわけではありませんよ(笑)。でも、それくらい現場の雰囲気はとてもよかったです。

重要なのは感動を人と分かち合うこと


―現在、世界的にエンターテインメントが危機に見舞われています。こういう時期だからこそ改めて映画について考えたこともありましたか?


ユペールさん ロックダウンのときに気がついたのは、「私たちは映画やあらゆる形の芸術表現を必要としているんだ」ということでした。もちろんこれだけ難しい環境のなかにあって、人間の儚さを感じる状況でもありますが、私たちにとって空想力がいかに大切なことかということを再び感じることができたと思っています。


映画を観たいとか、本を読みたいとか、音楽を聞きたいとか、そういったことは空気と同じくらい人間が生きていくために必要なものだと言えるでしょう。今回は特に映画についてお話しますが、映画は私たちにとって本質的で、重要で、生命にも関わるものだということを確認できたと考えています。


―まさにおっしゃる通り、今回のことで多くの人がエンターテインメントの大切さに改めて気づかされたと思います。


監督 イザベルが言ったことに付け加えさせてもらうとすれば、感動をほかの人と分かち合うのがいかに重要かということも理解した時期になったのではないでしょうか。


いまは家のテレビやインターネットで映画や演劇を観ることはできますが、それは映画館や劇場に行って観るのとは決して同じではありません。なぜなら、他の観客と感動を共有したり、交流したりすることが欠けているからです。そういったことができなくて寂しいという感情をすべての人が抱いたのではないかと思っています。


いま人々は映画館の再開を待っているところなので、ロックダウンが明けたら多くの人が劇場に詰めかけることになるでしょうね。そして、それはきっと映画やさまざまな芸術の未来にとって安心できる要素になるものと感じています。

芸術を危うくしているのは無関心な人たち


―こういうときだからこそ映画に救われている人も多いと思いますが、いまの危機的状況のなかで支えになっているものは何ですか?


ユペールさん ここ数か月間、私はずいぶんと仕事をしてきましたので、恵まれた立場にいると思います。いまは自分がどれほど幸運だったのかということを痛感しているところで、そういう思いが支えと言えるかもしれません。


ただ、フランスの演劇や映画、音楽、ダンスといったすべて芸術に対して心配しているところはあります。アメリカやほかの国に比べると、フランスの芸術は国家からの援助を受けることができているかもしれませんが、援助金は実際に必要とされているよりは少なく、対応が遅いところもありますから。ただ、それよりも芸術という存在を危うくしているのは、無関心な人がいることのほうが大きいかもしれません。


―なるほど。そのなかで、監督も新たな気づきなどはありましたか?


監督 そうですね。世界中が同じ問題に直面しているので、いまは病気の人や脆弱な立場に置かれている人たちのことを考えずにはいられません。こういった状況は、経験したことがありませんから気づかされたことはいろいろありましたが、私もイザベル同様に映画という仕事に関われていることについて、とても恵まれていると感じています。


ちなみに、『ゴッドマザー』は一度公開が延期になったあと、1回目のロックダウンと2回目のロックダウンの間に公開することができ、ヒットを記録しました。多くの観客が映画館に足を運んでくださったことによって、この映画が存在している証にもなったと思います。


同時に、「映画を観たい!」という気持ちが人々のなかにあることもわかったので、これらのことから見ても、映画は人が生きるために必要であると証明してくれたのではないかと感じています。


―それによって、ご自身の意識も変わりましたか?


監督 このことは映画という仕事を続けていくうえで、私にとってはとても刺激的で重要なエネルギーとなりました。未来は不確かではありますが、映画を必要であることを人々が意識してくれたので、これからも映画に関わり続けていきたいと思っています。


ただ、社会的に大きな問題が起きて危機に陥っている事実を無視することはできないので、映画という“バブル”のなかに閉じこもることなく、時々は現実に立ち返ることもしていくべきだと感じているところです。

日本には来るたびに驚嘆させられている


―ユペールさんは以前から日本が大好きだとおっしゃってくださっていますが、ご自身にとって日本とはどのような存在かを教えてください。


ユペールさん 私だけではなく、フランス人の多くが日本に魅了されていると思いますよ。それくらい日本は魅力的な国ですし、私たちにとってはいろいろなことを発見してみたい国ですから。私は何度も来日していますし、過去には数週間の撮影で東京や京都、富士山などいたるところに行ったこともありますが、そのたびに日本の素晴らしさに驚嘆しています。


とはいえ、暮らしたことがあるわけではないので、もしかしたら美しい側面しか見ていないのかもしれません。それでも日本には詩的なところがありますし、日本の映画や文学、ファッションなどがとても好きなのです。そんなふうに日本人は芸術的ビジョンを重視しているところがあるので、フランス人は惹かれるんでしょうね。


あと私は日本の映画監督も大好きですが、まだ一度も日本人の監督の作品に出演したことがありません。これは私からのメッセージだと受け取ってもらっていいですよ(笑)。ちなみに、本当は今年の9月に日本公演を行うはずだった『ガラスの動物園』という演劇作品の上演を来年の9月に東京で行う予定なので、それを楽しみにしたいと思います。


監督 私も日本の魅力については、イザベルが言っていることすべてに同意しています。ただ、ひとつだけ追加するとしたら、日本料理も素晴らしいということですね。


ユペールさん もちろん、私も大好きですよ!

インタビューを終えてみて……。

現在、フランスも厳しい状況にあるにもかかわらず、オンライン取材を受けてくださったユペールさんとサロメ監督。画面越しでもさすがのオーラと映画に対する熱い思いはひしひしと伝わってきました。


ユペールさんは前回の取材終わりにも「これからお寿司を食べに行くの」とおっしゃっていましたが、今回も日本のことについて本当に楽しそうに話してくださっていたので、その姿にはこちらまでうれしくなってしまうほど。一日でも早く、おふたりが安心して来日できる世界になってほしいと願うばかりです。

日本にいながらフランスを近くに感じられる!

痛快な社会派コメディ『ゴッドマザー』をはじめ、話題のフランス映画が一気に10本も堪能できる「フランス映画祭2020 横浜」。フランス気分が味わえるだけでなく、今回はドライブインシアターを同時開催するなど、幅広い楽しみ方ができること間違いなしです。ぜひ、足を運んでみては?

取材、文・志村昌美

ストーリー


アラビア語の通訳として警察で働いているパシャンス。ある事件を捜査している最中に、警察が追うドラッグディーラーのひとりが、自分の母親を世話してくれている看護師の息子だと気がついてしまう。彼を助けることを決意したパシャンスだったが、それをきっかけに、彼女は驚くべき行動へと出るのだった……。

いますぐ行きたくなる予告編はこちら!


作品情報

「フランス映画祭2020 横浜」

会期:12月10日(木)~12月13日(日)

場所:横浜みなとみらい21地区、イオンシネマみなとみらいほか


©Unifrance

©Philippe Quaisse/UniFrance

©Guy Ferrandis

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2020年12月09日 19時10分

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