石崎ひゅーい、菅田将暉と意気投合したきっかけは「赤坂のお蕎麦屋さんで...」

2020年12月01日 20時00分

エンタメ anan

石崎ひゅーい。なんと本名。でも彼の作る、懐かしいような切ないような、それでいて熱くて優しい楽曲と歌声は、“ひゅーい”という不思議な響きにぴったりとハマる。

――新曲「Flowers」は、負け犬たちを描いたボクシング映画『アンダードッグ』の主題歌です。映画にインスパイアを?


えっと…ふたつあって、ひとつは映画です。闘いの映画なんですけど、観て僕が思ったのは、闘いって大切なのは勝つことじゃなくて、何度でも立ち上がることなんじゃないかってことで。そこに焦点を当てようと思ったんです。もうひとつは、ステイホーム期間中のことで…。普段、僕は街とか人とかからヒントを得て曲を書くことが多いんですけど、あの期間、家とスーパーの往復だけの生活でほとんどヒントがなくて、あまりいいものが書けなくて、ある意味僕も、映画の登場人物みたいに切羽詰まってる状態になっていたんですよね。そんなときに、スーパーに行く道の途中のコンクリートの割れ目から咲いている花を発見して、これだって思って、そのふたつに焦点を当てた感じです。


――他の楽曲を聴いていても、華やかなものよりも、名もない花に惹かれる人なんだなと感じます。


そうかもしれません。菅田将暉くんに「虹」っていう曲を書いたんですが、それも街にかかる大きな虹ではなく、ベランダで足元にできるような小さな虹のことで。生活感があるもののほうが好きだし、目がいっちゃう。そういう癖なんでしょうね。


――性質的に。


それは、僕が茨城県民だからじゃないかと思うんです。茨城って、この間8年ぶりに(都道府県魅力度ランキング)最下位からようやく抜け出したくらいですからね。たぶん県民性として、キラキラしているより、泥くさいとか“いなたい”みたいな表現が好きな人が多い気がするんです。僕の周りの人たちもそうだし。ちょっと関係してるかなって。


――そんな人が、キラキラの代表のような菅田将暉さんと仲がいいというのも面白いですね。


菅田くんもキラキラしているけれど泥だらけなんです。普段一緒にいるとわかるんですけど、何事に対しても、砂場で泥だらけになって遊ぶような純粋さがある。へんに悟った人よりも、そっちのほうが好きだし信用できるんです。


人に書く曲と自分で歌う曲、使う脳が違う感じです。



――普段はどんな生活を送っているのか気になっているんですが。


結構同じところにしかいないんです。自粛前から飲みに行くのも同じ店だし、服とかも同じ服ばっかりだし。結構出無精というか…。


――でも、同じ場所にいるとなると、どこで人と出会うんですか?


そうなんですよ。だから現場が多いです。人に対してだけはすごく貪欲で、面白いなと思った人とか、好きだなって思った人には結構自分からアプローチするんです。


――興味を惹かれる、その引っかかりってどんなところですか?


話し方ですかね。あと顔。具体的に言うと、ちょっといなたい人っていうか陰がある人、ぽつりとしゃべるような…そういう人に話しかけちゃいます。そうすると、大体好きなものが一緒だったり、表現者の場合は表現に対するスタンスが似ていたり。どちらかというと、人間くさい人が多いです。


――そうやって仲良くなった方で、一番意外だった方って?


岡田将生くんです。『そらのレストラン』という映画で一緒だったんですけど、すごく似てるんです。考え方とかが。将生くんも、中身は繊細だし泥くさくて、そういうところに惹かれます。


――菅田さんとは?


僕の「花瓶の花」という曲を菅田くんが好きだって言ってくれていて、それを教えてくれた共通の知り合いに、菅田くんの舞台に誘われたのが最初なんです。その後、雑誌で対談させてもらったり、レコード会社が一緒になったりもして、「今度ちゃんと話さない?」ってことになって。相手が菅田くんだからって、食べログで調べた赤坂の高そうなお蕎麦屋さんを結構無理して予約して…。そこでなんかすごい意気投合したんですよね。音楽も結構一緒のところが好きだったりして、じゃあ一緒に曲作ろうよってなって、そこから世の中に出せないようなしょーもないものを一生懸命作って遊ぶ日々が始まって。そのなかでドラマの主題歌のお話をいただいて、腰を据えてやるかって書いたのが「さよならエレジー」でした。


――人への提供曲と自分が歌う曲で、書くときの差はありますか?


全然違いますね。たとえば菅田くんの曲なら、菅田くんのことを毎日考えて、菅田くんに合う歌詞とか構成、メロディで書く。自分で歌う曲と使う脳が違うって感じ。そういった意味では、ソングライターとしての能力がついてきた気がするし、単純に、自分じゃないものが生まれる面白さも感じています。きっと最終的にはそれが自分に戻ってくると思うので、楽しんでやらせてもらってますね。


――それって、自分と違う人間を演じるのと近い感覚?


ちょっと似てるかもしれないです。演技をやった後って、曲がめっちゃできるんですよ。自分の視点じゃなく、擬似的にですけれどその役の視点とか考えが入ってきて、景色とかが普段とちょっと違って見えるんだと思います。


――基本的に無から有を作り出すクリエイターは、どこかエゴイスティックな部分がないと、と思うんです。でも石崎さんには、そういうエゴを感じないんですよね。


それ、よく言われるんですよね。僕はそこまで自分が強いタイプではないんだと思います。曲って完成までに、レコーディングしたり、いろんな作業があるんですが、そこは力まずに、周りの意見も取り入れて、チームでいいものを作る。ただ、最終的に“歌う”っていう部分に関してだけは、申し訳ないけれどって。すべてを振り払ってエゴというか自分の世界に没頭する。そのときは“無”で、何も考えてない状態。そういうスイッチが入るといい歌が歌えるんです。


いしざき・ひゅーい 1984年3月7日生まれ、茨城県出身。2012年『第三惑星交響曲』でメジャーデビューを果たし、『夜間飛行』『花瓶の花』など話題作を次々発表。’18年には菅田将暉に楽曲提供した『さよならエレジー』がヒット。近年は映画『そらのレストラン』など、俳優としても活躍。12/25に単独弾き語りLIVEの開催も控える。


ユーズドのブルゾン¥49,800(ONtheCORNER TEL:045・211・4565) ビンテージのTシャツ¥4,900(Side Car Charlie TEL:03・6427・4879) シューズ¥17,000(CONVERSE ADDICT/コンバースインフォメーションセンター TEL:0120・819・217) パンツは本人私物


新曲「Flowers」は、現在デジタル配信中。映画『百円の恋』などを手掛けた武正晴監督による映画『アンダードッグ』(11/27全国公開)の主題歌で、くすぶった日々を送りながらも心の奥に戦いの炎を燃やし生きる、負け犬たちの心の叫びが綴られた楽曲に。また、発売中の、楽曲提供した菅田将暉の新曲「虹」は、公開中の映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌。


※『anan』2020年12月2日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・入山浩章 ヘア&メイク・くどう あき インタビュー、文・望月リサ


(by anan編集部)

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