ヌードの傑作!...「圧倒的に美しい」写真の魅力をキュレーターが語る

2020年10月18日 19時20分

エンタメ anan

10月20日からBunkamura ザ・ミュージアムで『東京好奇心 2020 渋谷』がはじまります。この展覧会では、100人の写真家たちが撮影した作品約200点が集結。今回、同展キュレーターの太田菜穂子さんに取材し、見どころなどをうかがってきました。

東京好奇心って?


【女子的アートナビ】vol. 185


「東京好奇心」とは、「写真が社会のために何かできるのではないか」という思いをもって活動しているNPO東京画が2018年に立ち上げたプロジェクト。東京をキーワードに100人の写真家が撮影した作品をまとめ、世界に発信しています。


2018年にはパリ市4区庁舎で、2019年にはベルリン市庁舎とベルリン日独センターで展覧会を開催。そして、いよいよ2020年秋、『東京好奇心 2020 渋谷』がスタートします。


今回、NPO東京画のファウンダーで、同展のキュレーターも務める太田菜穂子さんにお会いし、写真展のお話をうかがってきました。

どんな100人?


展覧会の公式サイトを見ると、参加作家はアジアから欧米、南米まで16の国と地域にわたり、年齢もさまざま。巨匠と呼ばれる人から若手まで、個性的な100人が集まっています。そんな写真家たちについて、太田さんは次のように語りました。


太田さん この100人全員は、みんな私と実際に会った人たちです。写真は、ドキュメンタリー・建築・風景、アート系、エンターテインメントからコマーシャルまで、多くのカテゴリーに分かれています。同じ時代を生きていても、フォトジャーナリズムの写真家とファッションやコマーシャルの分野で活躍する作家間にはまったく交流がありません。


私はさまざまなケースでのキュレーションをする機会があり、自由な関係性のもと、垣根を越えて多ジャンルの方々が「東京好奇心」に興味をもち、集まってくださいました。20代から80代まで、東松照明さんや上田義彦さん、森山大道さんなど有名な方もいれば、無名の新人写真家もいます。普通の展覧会ではスター写真家に焦点をあてることが多いのですが、この展覧会ではみなさんを平等に扱い紹介しています。

写真はどう見ればいいの?


会場構成は、テーマごとに13の壁がつくられ、作家ごとに原則ひとり2点の作品が展示されるとのこと。約200点も並んでいると、どんなふうに見ればよいのか、迷いそうです。そこで、写真の見方についてお聞きしてみたところ、次のように教えてくれました。


太田さん 200点近いプリントや映像があるので、最初から全部をわかろうとするのは無理です。いくつか好きなものがあれば、それでいい。人生は、欲張らないほうが幸せです(笑)。でも、たくさんあるなかから自分で選ぶ習慣をもたないとだめ。自分で考え判断する習慣をもって、「これが好き」と感じ、発言していくことが大切です。


100人の写真家が主役のようですが、本当の主役は実は“見る人”。“見る人”が「これが好きだ」「これ、わからない」「こんなのでいいの」「この人と話をしてみたい」と感じ、写真の後ろ側にどんな物語があるのか、どんな意味合いを指しているのかなど、想像する力を養ってもらいたいのです。


例えば「東京ってこうだよね」と今まで自分が思っていたことが、写真を見ることで「あれ?」と思ったり、自分から積極的にかかわろうとする当事者意識をもって新しい発見をしてほしいのです。会場では、自分の感受性を思いっきり解放してみてください。


とはいえ、展覧会では各章のはじめに、写真への理解が深まる短い解説を設置していますし、今回はJ-WAVEの4人のナビゲーターの解説もオーディオガイドとしてご用意しています。4人のナビゲーターのことばからの“気づき”は、きっと新しい写真との出逢いをつくってくれるはずです。

女子におすすめの作品は?


好きな作品を自分で選ぶことが大切、というお話に心から納得しました。でも、やはり具体的な作品の鑑賞方法なども知りたいですよね。そこで、太田さんにおすすめの作品と見どころポイントを語っていただきました。


太田さん まず、第1章では東京の近過去を撮った写真からはじまります。ここではマーク・リブーさんの《日本の女性たち》にぜひ注目してください。女性が口に手をあてて笑い、その手前にマネキンの手が写り込んでいます。当時、女性は口を隠してエレガントな仕草で笑っていたのです。


まだ戦後の影が残る街で、女性たちが美しい洋服を着て笑いながら街を歩いている姿はいかに華やかであったか、想像してみてください。彼女たちの姿に、元気をもらった人たちもいたでしょうね。

見てはいけない…神々しい作品とは?


太田さん 次の章では、上田義彦さんの一対のヌード作品の前にたたずんでください。“女性の美しさとは何か”、その原点に想いがゆくはずです。ひとつめの鮮明に写し出された黒バックのヌード。このモデルは色素がない、真っ白な女性です。金髪碧眼の女性が美の究極イメージとしてありますが、何が本当に美しいのか、ということを新しい形で見せてくれています。


もうひとつの対になる作品は、雪の森に赤いボートがあり、そこにヌードの女性が立っている写真。フォーカスアウトでぼんやりと写されています。


これらの二点は私にとってヌードの最高傑作のひとつ、黒バックの作品は見れば見るほどミステリアス。そして雪の中のヌードは、圧倒的に美しい存在が目の前にあるのに、“神々しく”て見てはいけないと感じさせる力を秘めているようです。

太田さん 次は、瀧本幹也さんの作品、一年がかりで森を撮影した「LOUIS VUITTON FOREST」シリーズから今回は夏と冬の二点。季節によって風景はがらりと変わります。一回見ただけではわからない、自然界の奥深い美の姿を感じてみてください。これらの写真は大型クレーンを立てて、地上を見下ろす神の目の視点から描かれています。

太田さん 大和田良さんの作品は数百年を生き抜いた盆栽、後ろには光を反射する金屏風。実は、一か月ごとに撮影した複数の写真を合成した作品です。金屏風は月ごとの光の変化を見せていますが、木は一切変わらない。さらに盆栽は生と死の共存が生み出す造形美です。


そんな盆栽を愛でる感覚は日本的なるもの。ヨーロッパ人は満開の花の状態が一番美しいと評価する“完全”という基準がありますが、日本には異なる美のありようを追究する姿勢があり、それが写真のなかにも見出されます。

最後は、希望の作品


太田さん 最後に、澄毅さんとルイーズ=クレール・ワーグナーさんの写真を紹介します。写真はリアリティを克明に撮るものと理解されがちですが、フォトグラフィーの「フォト」とは“光”、元来は“光画”を意味します。光を求めた若い作家たちの写真をここではご覧ください。

太田さん コロナ禍の現在、私たちは暗闇の底にいるのかもしれません。でも、これからみんなで力を合わせ、誠実に一歩を踏み出せば、きっと希望を託せる時代がくるはずです。この展覧会をご覧になり、未来への希望となる“光”を感じてもらえたらうれしいです。

インタビューを終えて…

「若い女性たちにぜひ見に来てほしい」と熱く語ってくれた太田さんは、キュレーターをはじめ、さまざまな仕事をされているキャリアウーマン。


東日本大震災のあと、被災地の方々がアルバムを探す姿を見て、「未来を生きるために過去が必要で、その過去を保証するのが写真」と気づき、東京画の活動をはじめたそうです。


各国のアーティストと交流され、世界でもっとも重要な現代写真家のひとりといわれた故ロバート・フランクさんからは、「写真家と社会をつなぐ仕事をすべき」といわれたとのこと。太田さんは、世界の写真家たちから信頼される存在です。


そんな太田さんが心をこめてつくりあげた『東京好奇心 2020 渋谷』は10月20日から開催。ぜひ会場に足を運んで、自分の好きな写真を見つけてみてください。

Information

会期 : 10月20日(火)~11月12日(木) ※会期中無休


時間 : 10:00-18:00(入館は17:30まで)

会場:Bunkamura ザ・ミュージアム

入館料:一般¥1,000、高校・大学生¥500、中学生以下無料

★音声ガイド:

この展覧会では、自分のスマートフォンとイヤホンを持参すれば、音声ガイドアプリ「33Tab/ミミタブ」をダウンロードして、無料の“音声ナビゲート”を聞くことができます。J-WAVEのナビゲーター4名(ジョン・カビラさん、クリス智子さん、ハリー杉山さん、マリエさん)が、展示作品からご自分の視点で作品を選び、自らの言葉で語ります。



問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

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2020年10月18日 19時20分

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