ある大作家が抱える苦悩...格差社会に翻弄された波乱の人生

2020年09月14日 20時10分

エンタメ anan

世界三大映画祭のひとつであるヴェネツィア国際映画祭で、日本の作品が受賞を果たしたニュースが話題となっていますが、昨年のヴェネツィアを賑わせた注目作『マーティン・エデン』がいよいよ日本に上陸。そこで、こちらの方にお話をうかがいました。

主演を務めたルカ・マリネッリさん!


【映画、ときどき私】 vol. 322


『ジョーカー』のホアキン・フェニックスを抑えてヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞し、今後のイタリア映画界を担うひとりとして期待されている俳優のマリネッリさん。


労働者階級からアメリカが誇る大作家になったジャック・ロンドンの自伝的小説をイタリアへと舞台を移して描いている本作で、主人公のマーティン・エデンを演じています。今回は、現場での様子や作品を通して感じた思いについて語っていただきました。


―劇中では、見事な存在感を放っていらっしゃいましたが、ご自身で完成した作品を観たときはいかがでしたか?


マリネッリさん この仕事を始めたばかりのころは、鑑賞中に自分がうまくいかなかった部分が気になってしまうこともありましたけど、やはり自分が関わった作品を観るのは、非常にエモーショナルな体験ですよね。特にこの映画は、ヴェネツィア国際映画祭のときに監督やキャストのみんなと一緒に観ることができたので、大きな感動を得られましたし、とてもうれしかったです。


―本作の脚本を読まれたとき、どのようなところに惹かれたのかを教えてください。


マリネッリさん 全部ですね(笑)。というのも、この物語は普遍的で人間的なところがあるので、誰が読んでも自分自身のなかにある“何か”を見つけられ、自分との接点を感じることができるから。どのページを読んでも感動させられたので、すべて素晴らしいと感じました。


あとは、300ページもある脚本が第一稿から最終稿になるまでに、どんどん変わっていく様子を見守っていくのも興味深かったですね。

何が起きても動じない監督に感銘をうけた


―今回、ピエトロ・マルチェッロ監督とは初めてタッグを組まれてみて、現場で印象に残っていることは?


マリネッリさん 彼の映画は観たときから一緒に仕事をしたいと願っていましたが、個人的に彼がどういう人間であるのかとか、どんな仕事の仕方をするのかなどは全然知りませんでした。実際に仕事をしてみて驚いたのは、まず彼が自分の世界観をしっかりと持っていること。映画のなかには、当然演じている僕のエモーションが多く注がれていますが、彼の持っている感情も非常に多く表現されていると感じました。


あとは、どんな予想外のことが起こってもまったく動じないことと、それに対してつねに備えていること。そういった部分にも、感銘を受けました。


―ちなみに、現場で起きた予想外のこととは何が起きたのでしょうか?


マリネッリさん そもそも撮影ではつねに予想外のことが起きますが、忘れられないのはマーティンが酔っ払って草原を歩き回るシーンでのこと。本物の嵐になってしまって、ものすごい雨や雷に見舞われながらの状況で撮影をしました。スタッフの大半は雨宿りをしていたので、監督とカメラマン、音声さんという最小限の人で嵐のなか撮影を続行したのです。でも、それはそれで素晴らしい経験でしたよ。


―監督はマリネッリさんについて「この世代でもっとも才能あふれる俳優のひとり」と話されていますが、この作品を通して得たものを教えてください。


マリネッリさん まずは、監督がそう言ってくれていると聞くことができて、非常にうれしいですね。僕は映画を1本撮るたびに俳優としても人間としても、両方の面から自分が豊かになっていっていくのを感じています。そのなかでも、この作品からは本当に多くのものを得ることができました。


言葉ではうまく説明できないことではありますが、この映画は力のある作品なので、僕自身を大きく成長させてくれたと感じています。

困難な役が自分を豊かにしてくれる


―表現するのが難しい役でもあったと思いますが、アプローチで苦労した部分はありましたか?


マリネッリさん もちろん、この役を演じるうえで多くの困難がありました。最初に大変だったのは、方言と体づくり。あとは、マーティン・エデンという人物になりきっている自分を信じることが大事でした。撮影が進むにつれて、ある時点で物語のなかで自分を感じることがなくなるときがあるのですが、僕にとってはそうなった瞬間にその人物になりえたという意味を持つのです。


こういった難しさに直面し続けることは挑戦でもありましたが、乗り越えることで役への理解が深まり、そして自分を豊かにしてくれたと感じています。複雑な人物像なので、非常に大変ではありましたが、同時に忘れがたい経験になりました。


―厳しい現場で、気持ちを切り替えるためにしていたことはありましたか?


マリネッリさん 映画を撮影している期間中は、たとえその日の仕事が終わってもある程度は集中力を持ち続けているようなところがありますね。つまり、撮影がない時間でも、主人公と同じようなことを考えながら生きているわけです。自分が映画の一部に入り込んでいるような感覚に陥りますが、それによって映画のなかの人生をそのまま続けているようなところがあるのかもしれないですね。


とはいえ、仕事のあとに家に帰って、自分の生活のなかでリラックスしようとはするんですよ。でも、どうしても寝る前に次の日の撮影のことを考えて、集中力を高めようとしてしまうことも……。もちろん、撮影以外のときは少しだけ“衣装を脱ぐ”こと、つまり役から離れることも大事だとは思うんですけど、実際にはなかなかそれができないんですよね。


だから、撮影期間中のほとんどの時間をその人物として生きることに費やしているような感じなんですよ。でも、それはそれで僕にとっては素晴らしいことであり、終わるまではそれが必要なのかもしれないなと。とはいえ、同時に自分自身の人生をチャージする時間も大切なのかなとは感じています。

愛とはいつの時代も普遍的なもの


―劇中ではマーティンと“運命の女性”との愛についても描かれていますが、この2人と向き合うなかで、愛の力についても考えることはありましたか?


マリネッリさん ありましたが、マーティンの場合は、彼の人生を破壊してしまうほどの力を持っている特殊な愛だったんだろうとは思いました。この物語は原作者のジャック・ロンドンの自伝的な作品ではありますが、必ずしも彼は愛のことを信じていなかったわけではないんじゃないかなとも考えています。


なぜなら、ジャック・ロンドンの場合は、2番目の妻がすべてを分かち合える理想の女性であって、そういう女性と出会うことができた部分においては、マーティンとは違いますから。そういった現実と創作の間に生まれる違いというのもおもしろさであり、魅了されるところなんだろうなと思います。愛とは普遍的なものであって、いつの時代も大切なものですよね。


―それでは最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。


マリネッリさん できるだけ多くの方に観ていただき、この作品をみなさんに好きになっていただきたいと思っています。今回、この映画を直接日本まで紹介しに行けないことは非常に残念ではありますが、いつか仕事か旅行で日本には訪れたいと考えています。そのときにみなさんと会えたらうれしいですね。

インタビューを終えてみて……。

劇中のイメージとは違って、精悍で爽やかな雰囲気のマリネッリさん。オンラインでの取材ではあったものの、画面越しからも伝わるカッコよさには思わずくぎ付けになってしまいました。「次は日本で」と約束してくれたので、マリネッリさんの来日を楽しみに待ちたいと思います!

忘れられない1本となる!


厳しい環境のなか、時代に翻弄されながらも自らの力で名声と野望を掴もうとする男を力強く描いた本作。愛によって味わう喜びや苦悩を体現する俳優陣の圧倒的な熱演にも、心を大きく揺さぶられるはずです。

ストーリー


イタリア、ナポリの労働者地区で生まれ育ったマーティン・エデン。貧しい船乗りとしてその日暮らしをしていたが、あるとき優雅なブルジョワ出身の“高嶺の花”エレナと出会い、恋に落ちる。


そのことをきっかけに読書へとのめり込み、作家を目指す決意をすることに。ところが、そこには幾多の障壁と挫折がマーティンを待ち構えていたのだった……。

圧巻の予告編はこちら!


作品情報

『マーティン・エデン』

9月18日(金)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

配給:ミモザフィルムズ

ルカ・マリネッリ写真:©Kazuko Wakayama

©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE

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2020年09月14日 20時10分

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