“刀剣乱舞”を超えるか...『鬼滅の刃』の2.5次元化を演出家に聞いた!

2020年01月25日 21時00分

エンタメ anan

舞台『鬼滅の刃』の脚本・演出を手がけるのは末満健一さん。これまで、人気ゲームを2.5次元化させ大ヒット中の舞台『刀剣乱舞』や、独自の世界観でファンを増やしているオリジナル作品『TRUMP』シリーズなどで知られる演出家。その末満さんが、この大ヒットコンテンツをどう舞台化するのか。

全員が共通の目的意識を持てば、カンパニーってまとまるんです。



――今回の演出を引き受けられた経緯を伺えますか。


末満:お話をいただいたのは今のように大きな話題になる前。じつは現在かかえている以上の2・5次元舞台の依頼はお断りしていたんです。ですが『鬼滅の刃』のお話をいただいたとき、心惹かれるものがありました。原作はいち読者として拝読していましたが、いざ自分が舞台を手掛けるとなると、炭治郎(たんじろう)と鬼との戦いは困難な表現の連続になるだろうという恐怖がありました。でも、そういった困難さが演劇的に変換できたとき、炭治郎の物語の熱量をさらに押し上げることができるのではないかと。それができるなら、『鬼滅の刃』を舞台化する意味が自分の中に見出せるような気がして、お話をお受けする覚悟を決めました。


――その困難な表現を舞台上に実現させていくための何か方法論のようなものはお持ちですか?


末満:稽古場でキャストと一緒に考えることは多いです。頭の中で考えるより、俳優の肉体を通して考えたほうが実現性の高いアイデアが出ます。今回は、原作の単行本と脚本の両方を広げながら、どうやってこの漫画表現を演劇にするか、ということで頭を捻りました。できるなら、体の向きや指先の形に至るまで原作通りにやりたい。炭治郎と錆兎(さびと)の戦いは、最後の画を表現するために、逆算的にアイデアが出てきました。今回の舞台のお気に入りの場面のひとつです。


――舞台はライブゆえに、特に全員の結束力が必要です。短い期間でチームを作り上げるため心がけていることはありますか。


末満:心がけていることは特にありません。不思議と稽古していくあいだにカンパニーはまとまるような気がします。全員が作品という共通の目的意識を持っているからじゃないでしょうか。あと、座長の存在は大きいです。今回の竈門炭治郎役・小林亮太くんはまだ若いですが、作品に対する懸命さが周囲にも伝播して、一体感を生んでいるように思います。座長が良いとまとまりますね。


――プライベートでの仲の良さもチームには必要だと思いますか?


末満:僕は基本的に、稽古場は楽しくなくていいと思っています。できるなら、楽しいに越したことはないんですけど(笑)。でも、作品への客観性を見失ってしまうことも怖いので。ただアクションシーンなどは、キャスト同士、スタッフ同士の連携がないと怪我に繋がる危険もありますから、気軽にコミュニケーションをとり合える雰囲気づくりは意識しています。


――作品の完成イメージを全員が共有することも大切だと思うのですが、その意識統一はどのようにされていますか。


末満:作品の完成イメージを共有するのは大変です。会話劇なら読み合わせやディスカッションを重ねて、作品の方向性を共有することも意義のあることです。ですが2・5次元舞台は、セリフの他にも、照明や音楽や効果音、プロジェクションマッピングなど、劇空間を構成する要素が多く、総合芸術的な側面が大きい。そのすべてを稽古場で共有することは難しいです。まだ舞台経験の少ない役者には説明しても伝わらないこともあるので、とにかく「今はなにをやっているかわからないけど、こちらを信じてやってくれ」という感覚です。今回の座組には、僕の作品の経験者が何人か入ってくれていて、初参加の役者をリードしてくれているので助けられています。


――今回の舞台『鬼滅の刃』でチームっぽさを感じられる場面はありますか。


末満:今回は主人公の炭治郎を中心に展開される物語なので、炭治郎役の小林亮太くんはほぼ出ずっぱり。周りが全員で彼を支えていかないといけないと思いますので、そこのチームワークを見ていただけると思います。


すえみつ・けんいち 1976年生まれ、大阪府出身。演劇ユニット・ピースピット主宰。自身が書き下ろした『TRUMP 』シリーズのほか、舞台『刀剣乱舞』や舞台『K 』などを演出。



舞台『鬼滅の刃』 【東京公演】上演中~1月26日(日)天王洲 銀河劇場、【兵庫公演】1月31日(金)~2月2日(日)AiiA 2.5 Theater Kobe 原作/『鬼滅の刃』吾峠呼世晴(集英社「週刊少年ジャンプ」連載) 脚本・演出/末満健一 音楽/和田俊輔 出演/小林亮太、高石あかり、植田圭輔、佐藤祐吾、本田礼生、高木トモユキ、舞羽美海、佐藤永典、佐々木喜英ほか S席9800円、A席7800円(共に税込み)


鬼に家族を皆殺しにされてしまった家族思いの少年・炭治郎。唯一生き残った妹・禰豆子(ねずこ)も鬼に変貌。妹を人間に戻し、鬼を討つため、鬼殺隊(きさつたい)に入隊する。©吾峠呼世晴/集英社 ©舞台「鬼滅の刃」製作委員会 2020


※『anan』2020年1月29日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・川合康太 ヘア&メイク・MIZUHO(vitamins) 取材、文・望月リサ


(by anan編集部)


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