小林薫「料理もできないような“昭和の男”じゃダメ」『深夜食堂』に新シリーズ

2019年10月24日 20時30分

エンタメ anan

ひとり暮らしをしている人にとって、深夜にふらっと寄って、リラックスして食事ができる行きつけの店を持つのは、ひとつの憧れ。そう願う人の理想の場所といえば、ドラマ『深夜食堂』の舞台である“めしや”。お客さんが求めるもの、作れるものならなんでも作ってくれるという、寡黙だけれど温かいマスターを演じているのが、小林薫さん。地上波でスタートしたこのドラマですが、気がつけば今年で10周年。この秋から、Netflixにて新シリーズの配信がスタートします。

――10年間、間を空けながらですが、こんなに作品が続くのもなかなかないことかと思います。人気が継続していることも、素晴らしいですよね。


本当にそうなんですよね。この世界では、作品が続かないことは当たり前だし、やりたくてもさまざまな事情で続けられないというのも、本当によくある話で。この作品に関しては、いろんな奇跡が重なって続けてこられたんだな、という思いがとても強いですね。まあね、制作陣も僕も、そんなに強い信念があって…みたいなことは、正直ないんです。行きあたりばったり(笑)。というか、スタート地点では、そんな先のことなんて考えてやってなかったっていうのが、ホントのところなんですよ。


――ドラマが始まったばかりの頃のインタビューを読んだのですが、「予算がないんです、小規模なんです」とおっしゃってたのが印象的でした。


うん、そこは今でも変わらないです。今も予算はそんなに潤沢にはない(笑)。まあだからこそスタート時は、作品の良さがちゃんと伝わるか、とても心配でした。もしも、いかにも書き割りなセットに、年季も入っていないようなメニューをペタペタッと貼ったりしたら、薄っぺらな感じになってしまうんじゃないか、なんてところもとても気になりましたし。


――小林さんが、『深夜食堂』に出演を決めた理由はなんだったんでしょうか?


う~ん…。原作者であるマンガ家の安倍夜郎さんが、ドラマ化にあたって「マスターは小林さんで」っておっしゃったらしいんです。どうやら僕が大昔にNHKのドラマで寿司職人を演じたのをご覧になっていたみたいで、それとめしやのマスターに、通じるものがあったのかな…。でも、今話したように、この世界をテレビドラマで作っても、奥行きがない浅い作品になってしまう気がして、非常に難しいぞ、と思ったのも事実。その頃、たまたまうちの事務所の若いスタッフが映画監督の松岡錠司さんに、「こんな話があるんですけれど、ご興味ありますか?」って、企画書を見せたんですよ。


――『バタアシ金魚』や『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』などを撮った方ですね。


そうそう。映画監督に、深夜テレビの企画書を見せるって、相当に大胆だなと思いますが(笑)。でも監督は、「なかなかおもしろいんじゃない?」って興味を持ってくれて、その辺から徐々に動き始め、スタッフが決まっていった。結果的に、彼が撮ってくれたおかげで非常に趣のある映像が出来上がりましたし、飯島奈美さんというフードスタイリストの方が料理を作ってくれることになったので、出てくるメニューがどれも素晴らしく美味しそうに仕上がった。そして数々の名作映画の美術を担当されてきた、原田満生さんという美術監督がセットを担当してくれ、こだわりぬいた空間を作ってくれた。確かに予算はなかったけれど、これだけの“こだわりの才能”が集まり、彼らをはじめ他のスタッフもなぜか暴走気味に凝りだしたおかげで(笑)、この贅沢なドラマが出来上がったんです。今思うと、誰も低予算をブレーキにしなかった。すごいことですよ。


――10月31日から配信がスタートする新シリーズを拝見しましたが、相変わらずどの食事も美味しそうで…。


そうなんですよ。でも実は、その回のメインメニューになっている以外の料理っていうのも美味しくて。僕は撮影の流れ的に、タイミングがなくて、あまりメインの料理は食べられないんだけど、いわゆるレギュラーの役者さんがカウンターに座っているときに、メインメニュー以外の料理が出ることがあるのね。それはたまに僕も食べることができる。あるとき飯島さんが、スーパーで食材を買っていたとき長芋が美味しそうだったからって買ってきて、それをソテーして出してくれたの。そうしたらそれが、めっちゃくちゃに旨くて! ただソテーしてしょうゆをかけただけなのに、どうして? ってくらい旨かった。で、家でも真似して2~3回やってみたんだけど、ああいうふうにはいかないんだよなぁ…。マズいわけじゃないんだけど(笑)。



――10年マスターを演じて、料理上手にはなりました?


料理って、完成に向かってどう組み立てていくか、その順序が結構大事じゃないですか。闇雲にただブロックを積み重ねても崩れてしまう。まず下味をつけて、ちょっと焼いて休ませて、その隙にこっちを焼いて、最後に調味料と一緒に合わせて完成、という流れが頭に入っていないとなかなかできない。そしてその組み立てが、美味しさを作り出すんですよね。10年このドラマをやって、その意識は芽生えました。でも、何はともあれ早くビールが飲みたいので、作るとしても手がかからないものだけ。だから僕が家でやるのは、枝豆茹でて塩を振る、程度のことですよ。まあ多少見栄えがいいように、先をちょっとカットしたりはするようになりましたが(笑)。でも今は、なんていうかな、たとえ結婚していても、人に頼って生きる時代じゃなくなってきていると思うので、自分のことは自分でまかなう、という考え方に変わってきました、僕も。


――えええ! 昭和世代の小林さんに、なぜそのような意識変化が起こったのでしょう…?


ん~、特に何か大きなことがあったわけではないんですが、ここまで生きてきて、改めて、料理もできないような、いわゆる“昭和の男”じゃ、だめなんじゃないか、と思ったんですよ。僕はまさに、“昭和どっぷり系”の男なんで。そう思ってからは、仕事が午後からのときは、午前中は家事やってますよ。まず朝、犬の散歩行って、帰ってきて朝ごはんを食べたら、洗い物が残っていたら片付けるし、洗濯もする。つけ置き洗いなんかも、ちゃんとします。メダカに餌をやったり庭木に水をやったりも。それから、家族が仕事をしているので、夜帰ってくるのが遅くなるときもあるんですね。そういうときは夕方スーパーに行って、食材買って、簡単なものですが、晩ごはんを作ったり。たぶん近所のスーパーの人には、「あの人よくいるな」って思われてると思う。もずくをよく買うので、「あの人もずくが相当スキなんだろうな」とも思われていると思う(笑)。


――そんな小林さんの日常…。ちょっと意外です。お若い頃は、家事はされました?


いや、やらなかった。まったくやらなかった。でもこの年になってやると、家の中で何かが滞っていることに気がついたら、誰かがやるのを待っているよりも、自分でさっさと片付けたほうが、結果快適に過ごせるってことに、やっと気がついたのかもね。そうしたほうが、家族はもちろん、自分も楽だし。


こばやし・かおる 1951年生まれ、京都府出身。’71年から’80年まで唐十郎主宰の状況劇場に在籍。退団後、映画、ドラマ、舞台、CMなどで幅広く活躍。映画『それから』『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』では日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。現在、連続ドラマW『トップリーグ』(WOWOW)に出演中。


Netflixオリジナルシリーズ『深夜食堂 ‐Tokyo Stories Season2‐』は10月31日よりNetflixにて全世界独占配信スタート。『ビッグコミックオリジナル』(小学館)で連載中の安倍夜郎さんによる同名漫画が原作。今回も、焼きそばパンやチキンライスなど、“めしや”らしいラインナップに。監督は、松岡錠司さん、山下敦弘さん、小林聖太郎さんが務める。


※『anan』2019年10月30日号より。写真・樽木優美子(TRON) ヘア&メイク・廣瀬瑠美


(by anan編集部)


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