白石和彌、映画業界を目指したきっかけは“エロいもん見たさ”?

2019年10月08日 20時30分

エンタメ anan

暴力や犯罪、流血は当たり前。『凶悪』などで知られる白石和彌さんの映画は、正直めちゃくちゃ怖いです。でも監督の描く“闇と本質”に、俳優も観客もなぜか惹かれてしまう。その吸引力の秘密に迫ります。

「殺したい奴はいないのか?」そう若松監督に聞かれた夜は、今でも心に強烈に残っています。



今、日本で一番注目されている映画監督といっても過言ではない、白石和彌さん。アウトローな世界を描いた映画で注目され、今やたくさんの俳優が出演したいと願う監督の筆頭的存在です。でも実は30歳の頃は、「1作だけ撮って、映画の世界から足を洗おうと思っていた」そうで…。


――11月8日に公開される『ひとよ』は、監督にとって今年3本目の公開作です。昨年も3本公開されていて、とても多作ですよね。


白石:そうなんですよね。最近は、もちろん途中で止まっちゃうものもありますが、7~8本くらいの映画が並行して進んでいて。あと、本を書きたいなぁ~と思っているものも頭の中にあるので…。


――頭の中で混乱しませんか?


白石:昔は切り替えられなかったんですが、徐々に慣れてきました。最初の頃は「俺、これ無理だわ」って思ってたんですけれど、でもこの流れを逃したら、暗黒時代に戻ることになるし、それだけは嫌だと思って、必死にくらいついてきたというか。


――小さい頃から映画がお好きだったんですか?


白石:最初のきっかけは、“エロいもん見たいなぁ”って(笑)。


――エロいもん(笑)。


白石:中学生くらいですから、そこは責められないですよね(笑)。僕らの世代だと、ちょうどその頃にビデオが普及し始めて、近所にレンタルビデオ屋が急に増えて。そこに借りに行って、ロマンポルノとか観てました。そのあと『仁義なき戦い』などにハマっていき、そこで映画には“作り手”がたくさんいることを学び、いつか映画のスタッフになれたら、と思ったのが最初ですかね。で、東京に出てきて若松孝二監督の事務所に入り、流れで映画の助監督になっちゃったんですけれど、正直、監督になれるとはまったく思ってなくて。監督になってごはんを食べていけて、それで一生いられるとか、絶対無理だろうなって。でも単純に、助監督というフィールドワークは、すごく面白かったんです。


――どんなご経験を?


白石:当時はコンプライアンスなんてなかった時代で、今だったらアウトなことばっかりだからあんまり言えないですが、例えば国道を封鎖して撮影したり(笑)。僕がついていた映画監督って、若松さんとか行定(勲)さんとか、おかしい人たちばっかりだったんです。若松さんに初めてゴールデン街に連れていってもらった夜、「お前、殺したい奴とかいないのか?」って聞かれて、「いません」、「お前駄目だなぁ~!」っていうやりとりをしたんですよ。おかしいですよね? 「殺したい奴はいない」に対して「駄目だなぁ~!」って(笑)。そもそもそんなこと普通の人は聞かないし、そういうことを聞くのが映画監督なんだったら、俺はマジで無理だわって思いました。でもその夜は、映画人としての第一歩だったなと、今でもよく覚えてます。映画『止められるか、俺たちを』の脚本にも、そのやりとりは入れたんです。とにかくそんなちょっとおかしい監督たちが考えることを実現するために、動いたり走り回ったりすることが本当に楽しくて、“これが映画だよね!”とか、“俺ら今、超かっけぇ!”とか思ってやってましたね。


――青春ですね。


白石:まさにそう。血糊つけて家に帰って、道中職質されたりもしましたよ。でも10年くらいやってるといろんな監督と組むわけで、「あれ、俺、この監督より面白いもの撮れるんじゃない?」と思うこともちょっとずつ増えてきた。同時に、助監督も一生続けられる仕事じゃないし、今さら映画の別部署に行くのも違うし、いつか、転職とか田舎に帰るっていう踏ん切りをつけるタイミングが来るとも思ってた。そこで、じゃあ1本だけ撮って、それでやめようって思ったんです。それが、30歳くらいのときかな。


――1作目『ロストパラダイス・イン・トーキョー』は、34歳のときの作品ですね。4年のブランクがありますが…。


白石:そう、そこからがさっきちらっと言った暗黒時代です。助監督やめて収入がほぼなくなり、でも子供が生まれたり。嫁に「稼いできてくれ」って怒られたり(笑)。


――でも、1本撮ってもやめなかったから、『凶悪』が生まれたわけですよね。続けたのはなぜ?


白石:1本目を観て、「白石さんと映画を撮りたい」と言ってくれた人がいたんですよ。それが『凶悪』のプロデューサーなんですけれど。あとは、やっぱり観客の皆さんですね。何度も観に行ったと言ってくれた人や、この映画を観て、映画のスタッフになった人もいた。あんな小さい映画でも、誰かの人生を変える力があるんだということが実感できて、それが大きな勇気になりました。


――白石さんの、助監督時代を経ての今って、『情熱大陸』とかで描かれそうな感じもありますが…。


白石:いや、それはちょっと…(苦笑)。どっちかっていうと僕は、ああいう成功者をキレイに描くドキュメンタリーよりも、“日曜2時の『ザ・ノンフィクション』”のほうが好きな部類の人間なので(笑)。


監督にとって、今年3本目の公開作の映画『ひとよ』。自分の子供たち3兄妹を守るべく夫を殺した母・こはる(田中裕子)が、15年ぶりに家に帰ってくる。事件以来、人生が大きく変わってしまった次男の雄二(佐藤健)、長男の大樹(鈴木亮平)、長女の園子(松岡茉優)と、母親の再会。バラバラになった家族はどこへ向かうのか。11/8より全国ロードショー。


しらいし・かずや 1974年12月17日生まれ、北海道出身。映像技術系専門学校卒業後、中村幻児監督主宰の映像塾に参加。その後、故・若松孝二監督に師事し、2010年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編デビュー。’13年『凶悪』で各映画賞を総なめにし、注目される。代表作に『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』『凪待ち』など。


※『anan』2019年10月9日号より。写真・岩澤高雄 


(by anan編集部)


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2019年10月08日 20時30分

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