森田望智「心配だったAV撮影シーンも山田孝之さんが支えてくれた」

2019年08月07日 19時50分

エンタメ anan

始まったばかりの令和という時代がどのようになるのか楽しみな一方で、古き良き時代とされる昭和の“伝説”も語り継いでいきたいもの。そこで、1980年代に“放送禁止のパイオニア”として、社会の常識を覆した村西とおるさんの半生を描いたNetflixオリジナルシリーズ『全裸監督』をご紹介します。全世界での配信開始を控えたいま、本作で注目を集めること間違いなしと言われているこちらの方に、お話をうかがってきました。

写真・大内香織(森田望智)


ヒロイン役を務めた森田望智さん!


【映画、ときどき私】 vol. 250


劇中では、厳格な母親に育てられた女子大生の恵美から伝説のAV女優・黒木香へと生まれ変わるまでを演じた森田さん。その豹変ぶりが話題となっているところですが、今回は体当たり演技の裏で感じていた思いや撮影現場の秘話について語っていただきました。


―AV女優の役ということもあり、躊躇した部分もあったとは思いますが、それでもオーディションを受けようと思った理由は?


森田さん 最初にマネージャーさんから詳細を聞いたとき、その場で「受けたい!」と思いました。体当たりな部分については、長い役者人生ではあることだと覚悟していたこと。「それがこの作品なら……」という気持ちでした。


そのあと、黒木香さんをネットで検索してみたら、「笑顔がちょっとだけ自分と似ているからいけるかも?」と思いました。でも、詳しく調べてみたら強烈な個性の方なので、少し怖くもなりました。とはいえ、こんなに受かりたいと思った役は初めてだったので、オーディションには意気込んで向かいました。

―オーディションはどのような様子でしたか?


森田さん 会場はすごい緊張感でしたが、黒木香さんのワキ毛をマジックペンとアイラインで再現して行ったんです。でも、全然反応が良くなくて……。


なので、2次のときは描かずに行ったんですけど、実はワキ毛が好評だったみたいで、総監督の武正晴監督からは「今日はワキ毛ないんだね」と言われました。


―役を勝ち取ったと聞いたときのお気持ちはいかがでしたか?


森田さん すごくうれしかったですが、夢かと思いました。というのも、その時期にオーディションを受けて落ちるという夢を見続けていたので。だから、とにかく信じられなくて、「本当に私でいいんだろうか?」とか「間違えて合否が届いたんじゃないだろうか?」とか思ったりもしました(笑)。


―その後、撮影までどのような役作りをしていきましたか?


森田さん いろんな資料を読んだり、現場の雰囲気を見させていただいたりしましたが、そのほかにもしたいことは何でも叶えていただきました。たとえば、「ストリップを観に行ったことがない」と言えば助監督さんたちが連れていってくださいましたし、「私の体型は大丈夫ですか?」と聞いたら、「じゃあ、体のメンテナンスをしましょう」とサポートしてくださったり。


あとは、「客引きがいるところを見に行って欲しい」と言われて、ひとりでそういうエリアを歩いてみたりもしました。私自身も、これまでそういう場所に触れる機会はなかったですが、そこで初めて感じた気持ちは役と同じだったので、リアルな感覚を持ち続けることは意識していたところです。不安もありましたが、撮影前にできることは全部させていただいたと思います。

アダルトビデオ撮影シーンで吹っ切れた瞬間とは?


―アダルトビデオの撮影シーンでは、「みんなインフルエンザになって延期しないかな」と思っていたそうですが、どうやって撮影を乗り越えたのですか?


森田さん 確かに、最初は本当に不安だったんです。なので、撮影までは「あと何か月、あと何週間」みたいに数えていたほど(笑)。でも、2つの出来事によって、吹っ切ることができました。


まずは、私が恥ずかしがってできなかったシーンで、武監督が私の代わりにアクション指導の男優さんと絡んでくださったんです。そこまで一生懸命教えてくださる監督を見て、「私はなんでこんなに恥ずかしがっていたんだろう」と思えるようになりました。


あとは、ストリップを観に行ったとき。最初はいろいろな疑問が沸き上がったり、どこか悲しい気持ちになったりしました。でも、「彼女たちにとってはほかの仕事と同じであって、これが生きる道なのかもしれない」と気がついたときに、「自分の価値観ってなんて狭いんだろう」と思ったんです。そういったことがきっかけで、アダルトビデオの撮影シーンも緊張することなく挑めるようになりました。


―実際にできあがった作品をご自身でご覧になったときの感想は?


森田さん もちろん恥ずかしかったですよ! 一生懸命がんばりましたけど、やっぱり写っているのは自分なので、「イヤーッ」て感じでしたね(笑)。黒木さんがご自分の作品を観たときの感想について、「ほかの生命体や違う精神が自分に乗り移っていて、到底自分とは思えなかった。役者もこういうところに興奮していると思う」と本に書かれていました。でも、私は全然そう思えなくて、顔を隠しながら見ていました。(笑)

―黒木さんの作品をご覧になったときはどう感じましたか?


森田さん 性的にという意味ではなく、人の生きているエネルギー的な興奮を感じました。当時もそういった部分は話題になったところですが、恥ずかしさを逸脱して獣のような生命力を感じる作品だと思います。私もそういうふうに、むき出しにする気持ちは大事にして挑みました。


―黒木さんといえば、強烈なキャラクターが印象的ですが、背景を知ると別の見方もできます。森田さんから見てどのような女性に映りましたか?


森田さん 「実は普通の女性だったんだろうな」と思いました。ただ、当時出演していたバラエティ番組を見たときは、どこか仮面をかぶっているような感じがあり、本音を掴むのは難しかったです。


でも、『全裸監督』の恵美は、素の部分で愛されたかっただけで、母親から抑圧されていたことで好きなことができない葛藤があったんだと思います。そこでたくさん苦しんで、悩み抜いた結果がああいう姿になったのかなと感じました。


強く見えますが、自分が本当に好きなものを好きだと言っただけの女性。それが、初めて自分のことを認めてくれた村西さんたちと出会うことで、自分を解放していくことに繋がっていったんだと思います。

何でもオープンに出し合える現場だった


―村西さんを演じた山田孝之さんをはじめ、満島真之介さんや玉山鉄二さんといった“村西軍団”の方々と共演されてみていかがでしたか?


森田さん みなさんとはわりと個々の撮影が多く、全員一緒だったのはアダルトビデオの撮影シーンくらいでしたが、何でもオープンにしてアイディアを出し合い、まじめにモノづくりをしている姿を見て、「ステキだな」と感じましたし、どんな内容だとしてもそこは関係ないと思いました。


―黒木さんが村西さんを信頼していくように、山田さんにも対してもそう思う瞬間はありましたか?


森田さん 山田さんは「いまので大丈夫ですか?」とか「こっちのほうがいいですか?」みたいにいつも声をかけてくださいましたし、自然にその場にいてくださる方。劇中の村西さんもそうですが、山田さんも私に対等に接してくださる方なので、つねに支えてもらっている感覚がありました。


劇中では私が主導権を握って進めてはいますが、実際は山田さんが受け身の体制で待ってくださっていたからこそ、私も安心してできたと思います。

―母親役の小雪さんはいかがでしたか?


森田さん 小雪さんとは緊張感があるシーンばかりでしたし、役の影響もあって勝手に怖いイメージを抱いていました(笑)。でも、実際の小雪さんはすごく優しくて、本当のお母さんのようでした。


―では、ご自身が現場で大事にしていたことはありますか?


森田さん この作品では、武監督はじめ、内田英治監督と河合勇人監督という3人の監督が交代で担当されていたので、監督によって求められることも違いました。


ただ、そのなかで大事なのは、「自分はどう思うか」ということ。それは普段の私にもあてはまることなので、そこは今回学ばせていただいたところだと思います。恵美が黒木香になって成長するように、私も同時に成長できていると感じました。

周りを裏切りたくない気持ちが支えだった


―心身ともにハードな撮影を続けるなかで、リラックスするためにしていたことはありますか?


森田さん 村西さんと初めて面接するシーンで、みなさん準備万端でいまから本番という瞬間に、私がすごく緊張していることに気がついてくれた武監督が「コーヒータイムにします!」と言ってくださったことがありました。自分ひとりではどうしていいかわからなかったと思いますが、そんなふうに周りの方がリラックスさせてくださったので、本当に助けていただいたと感じています。


あとは、よくなるにしろ悪くなるにしろ、以前の自分よりは絶対に前に進めていると思えたので、それも糧にしていました。そして、選んでくださった方々やこの役を受けてもいいよと言ってくれた両親を裏切りたくないという気持ちと、中途半端に演じたら黒木さんにも失礼だと思う気持ちもあったので、そういう思いで繋いでいくことができたと思います。


―ということは、怖い役はもうないですね。


森田さん そんなことないです! まだ何でも怖いです。(笑)

―今回、作品を通してアダルトビデオや性に対する概念は変わりましたか?


森田さん そうですね。自分の欲求をむき出しにする姿というのは、恥ずかしいものではないと思うようになりました。飾らない自分をさらけ出すということは、性に関することだけではなく、美しいことなんだと感じるきっかけになったと思います。


―村西さんや黒木さんの影響もあるとは思いますが、昔に比べると女性も自分の欲求にオープンになってきています。それに対してはどういうお考えですか?


森田さん 解放的になってきていると感じていますが、それでもまだ本来あるべき姿にたどり着いてないと思っています。ただ、そうだとわかっていても先駆者になるのはすごく勇気がいること。特に、性に関することだと偏見を持たれるかもしれないですし、理解されないかもしれないですから。


そんななか、黒木さんやそのあとに続いている方々も「もっと自由であるべき」と訴えている女性はとてもカッコイイですよね。そういう方々がいるからこそ、そのあとの世代も生きやすくなるんだと思いますし、自分に素直になれたり、自分の欲求を解放できたりする場所が増えることは、ステキなことだと感じています。

ポルノは女性を解放する場でもある


―ananwebでも性に関する記事は人気が高いですが、この役を演じるうえでリサーチはされましたか?


森田さん いろいろと研究はしました。そこで気がついたのは、性に対する興味だけでなく、女性には認められたいという思いがあるということ。女性が表現する場として求められている部分もあるので、アダルトビデオの世界は男性主体ではなく、女性を解放する場所のひとつとしても必要なんだなと知りました。


―それでは最後に、女性読者へ向けてメッセージをお願いします!


森田さん この作品には、黒木さんみたいに抑圧されていた女性が解放されていったり、傷つきながらも男性のなかでひとりたくましく生きていく女性の姿や、いままで褒められたことのなかった女性が初めてアダルトビデオの世界で自分の場所を見つける姿など、さまざまな女性が登場します。


それは性だけではなく、好きな仕事に就きたいけど挑戦できなかったり、嫌われたくないから人前で意見を言えなかったりしている人にとっては、共感できるところだと思います。そんなふうに、性別関係なく強く生きている女性たちの姿にもぜひ注目してください。


インタビューを終えてみて……。

終始ニコニコと笑顔で、癒し系のオーラが漂う森田さん。今回の役どころとあまりのギャップに驚かされましたが、まるで黒木さん本人が憑依したかのような熱演は必見です。次はどんな役で驚かせてくれるのか、今後も楽しみにしたいと思います。

昭和の熱気が駆け巡る!


心も体も裸にし、全力で人生を生きている村西さんや黒木さんの生きざまは、ついぬるま湯に浸かりがちな現代人には、ムチに打たれるような衝撃が走るはず。自分の欲求にまっすぐ生きる熱さを肌で感じてみては?

ストーリー


バカ丁寧な口調でトップにのし上がった英語教材セールスマンの村西。ところが、会社はある事件によって倒産してしまい、妻にも浮気をされてしまうのだった。失意のどん底にいた村西だったが、チンピラのトシや川田と出会い、アダルト雑誌を販売することを思いつく。


その後、村西は大胆な手腕を発揮し、一躍業界の風雲児となるのだった。ところが、商売敵の暗躍によって、事態は大きく変わっていくことに。そんななか、村西たちの前に厳格な母の元で本来の自分を押し込めていた女子大生の恵美が現れる。

ナイスな予告編はこちら!

作品情報

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』

8月8日(木)、Netflixにて全世界独占配信

総監督:武正晴 監督:河合勇人、内田英治

出演:山田孝之 満島真之介 森田望智 柄本時生 伊藤沙莉 冨手麻妙 後藤剛範 ・ 吉田鋼太郎 板尾創路 余 貴美子 / 小雪 國村隼 / 玉山鉄二 リリー・フランキー 石橋凌

脚本:山田能龍、内田英治、仁志光佑、山田佳奈

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2019年08月07日 19時50分

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