“〇〇大好き芸人”の初回は意外なアレ 『アメトーーク!』が愛される理由

2017年06月19日 20時00分

エンタメ anan

なんとanan総研内視聴率70%超え!の人気バラエティ番組『アメトーーク!』。特に人気が高いのが、“何かを大好き”な人たちが登場し、その“偏愛ぶり”を語る通称<◯◯大好き芸人>の回。物事に熱い気持ちを抱くことを肯定した、この番組の魅力を、『アメトーーク!』演出、ゼネラルプロデューサー・加地倫三さん、上智大学教授・碓井広義さん、心理カウンセラー・塚越友子さんが解説する。


14年前の深夜に始まったこの番組。毎週異なるテーマの中で、何かを愛する芸人たちがその思いを熱く語る<◯◯大好き芸人>というシリーズは、“ときめく気持ち”が溢れる夢のような企画だ。スタートは、’06年に放送された<フリスク芸人>だった。


「ある収録のとき、スタジオの横にある前室にいた芸人たちが、揃ってフリスクを食べていて。ミントのタブレットが人気だったこと、そして“◯◯芸人”という言葉が出始めた時期だったこともあり、彼らを見て、“みんな、フリスク芸人じゃん”なんて話になったんです。その前から、一つのテーマについてしゃべる“くくりトーク”という形で番組を作ると、おもしろいし評判がいいという手応えはあったので、ならば“フリスクが好き”くくりで1回やる? ってことになり、制作してみたのが最初です。深夜にもかかわらず、10%を超える視聴率を獲りました。驚きましたね」(『アメトーーク!』演出、ゼネラルプロデューサー・加地倫三さん)


そこから始まった<◯◯大好き芸人>という切り口。以降、芸人たちからの“愛を語らせて!”というプレゼン企画を経て、ガンダム、BOOWY、家電、ドラえもん、キングダムなど様々な偏愛が語られ、いずれも高い視聴率を獲得。上智大学教授でメディア文化論が専門の碓井広義さんは、“恋愛以外の愛”を世間が肯定しだしたのは、この番組がきっかけだと語る。


「『アメトーーク!』に登場し、いかにそれが好きかを語る皆さんの“愛”は、本物感が強く、しかも“ビジネスとしての偏愛”が一人も登場しない。好きなものと真摯に向き合い、突き詰める。番組で語っているので結果的にはビジネスになってはいますが、その本質は“無償の愛”。それを楽しそうに語る彼らを見ていると、偏愛は、人生を楽しく豊かにしてくれ、人によっては、生きる支えになっていることがわかります。“何かを好きになるって、素敵だ”と、心の底から思うことができる」(碓井さん)


人は、好きなことについて思い切り語ることで達成感が満たされ、加えて聞き手が興味を持って聞いてくれることで、称賛欲求も満たされる、と言うのは、心理カウンセラーの塚越友子さん。


「偏愛について語る芸人の高揚感は、ある意味、ゾーンに入ったスポーツ選手と同じ。白熱した素晴らしい試合に観客が興奮するのと同じように、ゾーン状態の芸人さんを見るのは、視聴者にとっても非常に気持ちがいい体験です」


偏愛が素敵。世間の意識が変化する、そのトリガーを引く要因の一つは確かにこの番組だった。しかしそこには、時代の流れも大きく関わっていたのでは? 塚越さんと碓井さんはそう分析する。


「時代によって価値観は変わります。カウンセリングに来る人たちの悩みの傾向から見ると、恋や友情という“誰かと一緒にいること”に悩むくらいなら、個人主義であることを支持する、という人が増えつつあります」(塚越さん)


「恋愛は他者との関係の中で成り立つもの。だからこそ、相手と価値観をすり合わせる中で、ストレスや敗北感を感じることも。でも物や趣味への偏愛ならば、自分だけの価値観で行動でき、さらに人と自分を比べることもなく、極端に言えば愛する対象から傷つけられることもない」(碓井さん)


学生と向き合う中で碓井さんは、現在は恋愛よりも偏愛の時代なのでは、と感じるという。


「かつては好き=恋愛でしたが、今はそうは言い切れません。恋が終わったというわけではないのでしょうが、それだけにうつつを抜かすのはダサい、という空気は感じます。何かを好きになり極めていけば、知識も広まり深まり、さらには新しい付加価値が身につき、それが魅力となる。逆に言えば、ただルックスがいい、優しいだけではダメで、もう一つ“意外な才能”=何かを偏愛している、ということがないと、恋愛においても魅力的だと思われない時代になってきているのかもしれません。“何も好きじゃない人は、寂しい人”という価値観の広がりと言ってもいいでしょう」(碓井さん)


「“追求する力”“こだわって何かを成し遂げる力”を持つ人が評価され、成功する時代になってきたこともある。わかりやすい例で言えば、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズなどがそう。彼のアップルに対する強い愛、こだわりは、会社を成功させただけではなく、世界をも変えた。今の世の中においては、自分もそんな力を持ちたい、そういう人になりたい、という憧れを抱く人が多い。偏愛を語る人がたくさん登場するこの番組に支持が集まる理由は、そんなところにもあるような気がします」(塚越さん)


かぢ・りんぞう テレビ朝日社員。他に『金曜★ロンドンハーツ』や『チェンジ3』でゼネラルプロデューサーを務める。

うすい・ひろよし 制作会社「テレビマンユニオン」での番組制作を経て、’94年より教鞭を。好きな回は<ガンダム芸人>と<家電芸人>。


つかこし・ともこ 「東京中央カウンセリング」代表。雑誌やテレビなどで幅広く活躍中。<宅配芸人><ガラスの仮面芸人>の回が好き。


※『anan』2017年6月21日号より。取材、文・河野友紀


(by anan編集部)

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