化粧水や美容液は美肌のマストアイテムではない 「スキンケアを見直して」医師がすすめる理由
化粧水、美容液、乳液…世の中には美肌に近づくための様々な基礎化粧品があふれている。しかし、化粧品に含まれている合成界面活性剤は、肌を守ってくれる角質層のバリアを破壊して“肌荒れ”の原因にもなりうる。恵比寿形成外科・美容クリニック院長・西嶌順子先生は「どんな高価な美容液も、自分の細胞が作り出す“自然な潤い”に勝るものはない。基礎化粧品を使わずとも潤っている、素肌美人をスキンケアのゴールにしてほしい」と話す。
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■肌の細胞が持つ、本来の機能を発揮させることが大切
患者さんがクリニックに駆け込んできた時には、すでに肌トラブルの状態が悪化し、改善まで難渋することにジレンマを抱えていたという西嶌先生。限られた時間で行う診察で、本当は患者さんに伝えたいけど、伝えきれなかったことを著書『「無駄なケアをやめる」から始める 美肌スキンケアの新常識大全』(宝島社)にまとめている。
「私もこれまでたくさんのケアを試してきましたが、一番肌の調子が良かったのは育休中の育児に忙しく、人前に出る機会も減っていた時期。洗顔やスキンケアも最低限しかできていませんでした。働いている女性、時間がとれないママへ、スキンケアは頑張り過ぎないで良い。ズボラぐらいがちょうどいいと伝えたかったので私が実践してきた美容術を本にまとめました。この本が、健康で強く美しい肌を作る手助けになればと思っています」
本には「まず、クレンジングをやめてみよう」「毎日のシートパックで、敏感肌まっしぐら」「美顔ローラーで肌が悲鳴をあげている」などと、スキンケアをしっかり丁寧にしている人であれば驚くような見出しが並ぶ。
「私は、どんな高価な基礎化粧品よりも、自分の細胞が作り出す自然な潤いに勝るものはないと考えています。角質バリア機能、皮脂膜、皮膚の善玉菌が整っていれば、何も塗らなくても乾燥しないですし、美肌を保てます。肌の細胞が持つ、本来の機能を発揮させることが何よりも大切なんです」
■理想的なスキンケアは「外側が3割、内側と心が7割」
例えば、肌の悩みに応じてたくさんの種類がある“美容液”。効果の高い美容成分が入っていても、肌の角質バリアを破壊する界面活性剤や合成ポリマーも含まれているかもしれない。
「“美容液”というワードに誤魔化されないようにしましょう。成分をきちんと見る必要があります。40代以降のミドル世代になると、皮膚のターンオーバーは約40日間。美容液を塗った翌日から肌の調子がよくなることはあり得ません。あるとしたら、それは化学成分によって細胞が意図的に刺激されて、“良くなった”ように見えるだけ。皮膚自体の再生力が蘇ったわけではないということに目を向けなければなりません。スキンケアの効果が細胞レベルで反映されるまでには、最低1ヵ月はかかるんです」
西嶌先生によると、理想的なスキンケアは「外側が3割、内側と心が7割」。どうしても外側のケア、化粧水、美容液、乳液をはじめとした化粧品に目がいきがちだが、どれだけ高価な基礎化粧品を使っても、食生活の乱れ、睡眠不足、ストレスによって肌の状態は悪化していく。自宅でのケアを今一度見直し、身体(内側)と心を整えることが美肌にもつながるのだ。
「人は皆同じではないからこそ、正しい知識と自身の体質を知ってケアしてほしいと思っています。私は、他の職種から医師になりました。以前、医師は何でも知っている神様みたいな人だと思っていましたが、実際になってみると、悩みや悲しみ、迷いもある普通の人間なんだと分かりました。医師は、特別な存在ではなくひとつの専門職。すべての人が美と健康を実現し、笑顔で人生を過ごすには、医師だけでは実現不可能です。様々な分野の人々と連携しながら、患者さまのアンチエイジングをサポートしていきたいです」
PROFILE/西嶌順子(にしじま・じゅんこ)
形成外科専門医、助産師、保健師、看護師。「医療法人道心会 恵比寿形成外科・美容クリニック」院長。聖路加国際大学看護学部看護学科卒。 新生児特定集中治療室(NICU)、産婦人科などで新生児医療に従事したのち、北里大学医学部医学科に学士編入学。 形成外科医として、がん研有明病院、筑波大学附属病院、新東京病院に勤務したのち現職。 多くの女性が抱える特有の悩みについて、専門医の立場、そして自身の経験に基づく等身大の視点で情報を発信している。プライベートでは2児の母。